5月25日、大阪市議会では大阪維新の会と公明党の共同提案により、「パチンコ、パチスロ等をギャンブルに位置づけ、ギャンブル等依存症防止のための適切な対策を促進させることを求める意見書」を全会一致で可決した。
市議会後の記者会見では松井一郎市長は、「パチンコは夜店のスマートボールと同じ扱い」「(ぱちんこをギャンブルと)しっかりと位置付けて真正面からパチンコの依存症の方々のケアに取組むべき」と話している。
また翌日の26日、府知事の囲み会見で吉村大阪府知事も「IRは依存症対策に取組むということで、さまざまな対策を実際にやるわけです。ルールを作り、そのルールの中でお金のある人が楽しもうということです。これが筋だと思っています。まだ計画段階のIRについてさまざまな批判をいただくわけです。一方で、パチンコ・パチスロにはそのルールがない」としながら、「全国の自治体に(ぱちんこ店は)あるわけですから、国が認めないとスタートできないですから。依存症対策をしっかりととることが重要だと思います」と、ぱちんこ店に対する依存対策について言及している。
一般のメディアでも大々的に取り上げられたこのニュースを理解するにあたってのポイントを2つに絞って解説する。
大阪維新の会の無知の露呈
まずは松井大阪市長をはじめとした、大阪維新の会のパチンコ産業への無理解である。
そもそもパチンコホールを、大阪・新世界にあるスマートボール専門店ならまだしも、夜店のスマートボールと同列で語り「依存対策を行っていない」などという妄言を吐くことの愚かさに、こちらが吐き気を催す。
パチンコ業界がこの7年間、どれほどの人的金銭的なコストをかけ、政府が推進してきたギャンブル等依存症対策を講じてきたのか。依存問題対策こそが業界が生き残るための生命線であると、あらゆる業界団体のトップが口酸っぱく言い続け、全国津々浦々のホールが必死の想いで取り組んできたのか。
松井市長は、何を根拠に「パチンコ業界は依存症対策を行っていない」と言っているのか。
昨年12月に、内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局がまとめた「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」では、そのすべての項目において「パチンコは取組が推進されたと評価できる」と書かれているのだ。
5月27日に開催された大阪府遊技業協同組合総会において平川容志理事長は、憤りを感じていると述べながら、大阪市の政治的な圧力には屈しないと言った。これはパチンコ業界の総意であるといっても過言ではない。
パチンコ業界の依存対策に関する妄言以外にも、松井市長の無知が表出している会見のくだりもあるが、その点はあえて割愛する。読者諸氏も推して知るべし、だ。
大阪維新の会の浅はかな思惑
ではなぜ松井市長は、このタイミングで、このような妄言を巻き散らしたのか。
それは一言で「IRと選挙」のためである。
大阪府と大阪市はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を進めているが府民からの反発や反対運動が活発に行われるなか、「悪しきパチンコ」をスケープゴートで差し出し、批判の矛先をあいまいにさせようとする狙いがある。
もう一つは、今夏に実施される参議院議員選挙をにらみ、カジノ推進を前面に押し出すことで支持票が減ることを見越し、その分だけアンチパチンコ層の票を取り込もうとする思惑もあるのだろう。パチンコバッシングのニュースが全国的に報じられれば、日本維新の会の票の底上げにもなるという企みも透けて見える。
浅はかな思惑だ。元々そういうきらいはあったが、節操もない。