「リミッター」「コンプリート機能」「遊タイム発動制限緩和」……新解釈基準機が市場にもたらす変化とは?

2022.05.04 / コラム

※本記事は、当Webサイトで機種評価を投稿している現役大手ホール機械選定者のSH@CK氏による臨時コラムです。


4月22日より新たな技術上の規格解釈基準に則った遊技機の持ち込みが開始された。今回の新解釈基準での変化は、
①パチンコ「b時短(遊タイム)発動制限緩和」
②PS共通「コンプリート機能」
の2つとなる。厳密にいえば6.5号機の緩和も当てはまるのだろうが、今回は割愛。①と②について私見も交えて解説していく。


遊タイムの発動制限緩和は「今すぐ影響をもたらすことはない」

①のb時短、いわゆる遊タイムについて。今までは「通常確率分母数値の2.5倍以上」だった遊タイムの発動回転数が「通常確率分母数値の1.5倍以上」へと緩和された。しかし、現市場でのc時短同様に今すぐ影響をもたらすことはないと思われる。これはb・c時短ともに表記上の当選確率(通常時確率)に比べてb時短による天井当選やc時短による小当り経由による当選を全て合算した当選確率が大きく乖離する仕様だ。当然ながら出玉性能が実当選確率に準じたものとなるので、b・c時短を活用すればする程に乖離が大きくなるのでニーズは上がりにくいだろう。b・c時短の緩和については、スマートパチンコにて活きてくる可能性が高い機能となる。

全国導入を目前に控えたスマートパチンコでは「通常確率1/350」が実現されるなどの噂が飛び交っているが、総量向上などの出玉量に関する話は今の所聞こえてこない。b・c時短でゲーム性が豊かになれば、パチスロAT系の確率表示同様に「ならし確率319」としてリリースされることになるだろう。

現在、スマートパチンコは2023年1月でのリリース予定と聞いているが、数年にわたって延びに延びてきた。半導体や木材など材料が世界的に不足している中ではリリースに向けてはまだ状況を見定める方が無難だろう。

 


出玉のリミッターは、特に少台数新台の運用に大きくマイナス影響アリ

そして、②の「コンプリート機能」については、業界始まって以来の「プログラム的な完全打ち止め機能」のことを指している。本機能だけで管理遊技機の体を成してしまうのではと感じるほどだ。厳密にいえば、スマート遊技機の管理は役比にも及ぶものらしいので管理する分野が若干違うのだが、出玉のリミッターという点では何よりも強い射幸性を抑止する機能といえるだろう。

5号機時代、パチスロでは2万枚というワードが高射幸性の代名詞となった。これは業界人のみならず、一般ユーザーレベルまで広く周知されている。今回のコンプリート機能についても、その基準が「2万枚×20円=40万円」で設定されていて、パチンコでは9万5000発、パチスロでは1万9000枚で遊技台が停止するものとなっている。この数値に関しては、さまざまな意見があるようだが、「規制」であることは間違いない。

そもそもこのコンプリート機能を付加することになったのは、「総量計算の見直し」により圧倒的な出玉性能を有したパチンコ機(※2021年4月よりリリースされ始めた機械を指す)が起因となっていると思われる。ようやく市場から「ミリオンゴッド凱旋」「サラリーマン番長」などの高射幸性機が撤去されたにも関わらず、二の矢の如くパチンコで10万発を超える出玉性能を有するような機種が続々と市場に設置されたのだからタイミングが悪いにもほどがある。

ましてやパチスロは純増制限があったため2万枚を出すには早くても7時間以上が必要だったのに対して、今のパチンコなら2時間程度で同じ景品額に到達する場合もあるのだから射幸性は比較にならず、本件機能が付加されるのは当たり前のことといえば当り前である。


出玉上限に遊技阻害要因があるのは間違いない……

そんなコンプリート機能について、「そもそも到達率が低いのだから影響は少ない」という意見をよく耳にするが、個人的な見解とは少し異なっている。ことパチンコに関しては到達の可能性が性能的に十二分にあるという点に加え、到達に満たないまでも先(上限)が見えている機種は個人差はあれど心理的ハードルが絶対に存在するということ。

打ち始める際に「残り何発あれば支障なく打てるか?」と頭の中で計算をするということは、9万5000発に近づくほどユーザーのブレーキが強く掛かり始めていくということだ。過去に自分が獲得したことのある出玉数を残り玉数が割った時点で損を意識し始めるのが普通の心理だろうし、特別な理由がなければその台を打つ理由がなくなってしまう。

影響が大きくなりそうなのは新台の稼働だ。多台数設置なら何台か打ち止めに近づいていても他の台を探せる選択肢があるが、少台数だった場合は選択肢はなく機会ロスとなる。仮に1台の導入であった場合、ピークを待たずして台が止まることや打ち難い状況になった時には新台入替という企画が倒れてしまう。正直、真っ先に日工組メーカーが「2台以上で新台を購入させるために付加した機能」と邪推してしまったほどだ。

実際問題、新台を定期的に購入できる店舗がおおよそ5000軒といわれている現市場では、新台入替を「少台数で~」と考える店舗は多い。少台数での活用が難しいということは、大手と中小のさらなる二極化を進めてしまう懸念すらある。当然、この規制により他の緩和を引き出す将来性もあるので、一概にはいえないが、とてつもなく大きな規制であることは間違いない。正直、先を読むのは難しいが、今回の規制に対する向き合い方を熟考することはリスクマネージメントとして必要なことだ。

一方、パチスロについてはすでに6.5号機といわれるものの緩和を得た上でのものなので、十分にお釣りがある状況と断言する。ただ、すでに多くのリリースが決まっている状況で注意すべきは「すべての台が良くなるわけではない」ということ。6.0号機から6.3号機のスマスロ有利区間無制限を除いて、6.1、6.2、6.4と何段階にも渡り緩和が進められてきたが、稼働は上昇傾向にはなっていないのが現実である。

現パチスロ市場を牽引している機種でいえば、
・「パチスロ バイオハザード7 」「バジ絆2」「リアルボーナス機」はすべて6.0号機
・「番長ZERO」もほぼ1500G完結である6.1号機
・作り込めている「沖ドキDUO」「アラジン」の2機種程度が6.2号機
となっており、結局のところ開発力がなければ決して好転することはないのだ。

6.5号機のウリの1つでもある差枚分放出については、どのメーカー機でもユーザーの引きが強ければ出玉の大放出は起こし得る。ただ、主観にはなるが、差枚を含めた大量出玉を放出するノウハウを有しているのは特定の3メーカーくらいしかいないのではないかと長い歴史から感じてしまう。

 

そもそもコンプリート機能の件でいえば、新規則機で1万9000枚を一日で放出した事実を見たことがあるかというレベルだ。過去に「チバリヨ」や「怪しげなリノタイプ」で近い枚数が放出されたなどの噂を耳にしたことがある程度で現時点での影響は殆どないといえる。ただし、6.5号機の性能が向上したことによりリミッターの発動の可能性が見えてくるかもしれないが、そもそも今まで出ることのなかった規模の出玉が出るのならば魅力にしかならないだろう。

そして、この新規則では見たことのない規模の出玉という点では、完全確率の割には不自然に出ていなかったというのがポイントとなり、パチンコは規制の対象となるラインを実際に超えてしまったことがリミッター付加へとつながったのだろうが、パチスロにリミッターを付加する必要がどこにもないという点である。今回のパチスロリミッターはあまりにも不自然であり、今までの出玉規模も不自然とくれば色々妄想が広がる。この6.5号機によりこれからのパチスロ市場の発展は十分に期待できるだろう。

SH@CK, 新解釈基準, 遊タイム, コンプリート機能