「パチンコ業界のイメージ向上へ」大正大の学生と共同プロジェクト実施/日工組

2021.12.27 / 組合・行政

パチンコメーカー35社で構成される日本遊技機工業組合(略称:日工組、榎本善紀理事長)は、6月から「パチンコのイメージ向上」を目的に大正大学表現学部の中島和哉准教授のゼミと連携。学生たちと業界のイメージ向上を考えるプロジェクトを実施した。

広告代理店などに就職を希望する同大学の3年生7名が参加。学生の大半はパチンコ未経験者で、今回の取り組みのために独自にアンケート調査を実施したり、パチンコホールに足を運び遊技を体験したほか、2021年8月13日・14日にYouTubeで生配信された日工組主催のファンイベント『みんなのパチンコフェスONLINE2021』の収録現場を見学して業界の知見を深めた。

日工組は学生との共同プロジェクトを通して「若年層が抱く業界のイメージや問題点、さらに新規ユーザー獲得のための若者に刺さる効果的な施策を具体的に知ることができました。今回得た知見は、遊技人口の減少が問題視されている遊技業界にとって、課題解決の一助となる可能性があります。組合では引き続き、さまざまな取り組みを通じて業界を盛り上げていく所存です」と発表した。


12月10日、学生たちはプロジェクトの集大成として、アンケート調査の結果をもとに大正大学内で「パチンコイメージ向上」の施策を2チームに分かれて発表した。

 

【A班】

A班は友人紹介制度のあるアプリの開発を提案。パチンコ・パチスロユーザーの約8割が、遊技のきっかけが家族や親戚、友人などからの誘いという点に着目する。友人紹介制度で成功したUber EatsやTik Tokなどのアプリを事例にその効果を述べた。

「ギャンブル」「遊び方がわからない」「手軽に遊べなさそう」などの業界のネガティブイメージをあるを払拭するため、街中に無料でパチンコが体験できるボックスの設置を推奨。

「一度でも体験してもらえれば、ゲームに馴染みのある若年層であれば、パチンコの遊技性を理解してくれると思った」とA班は企画の趣旨を説明する。

また、日本独自の文化として、外国人をターゲットにしたインバウンド需要を提案する。海外で開催している「ANIME EXPO」への出展や、店舗での外国人対応スタッフの常設、旅行会社との提携など、広い視野でプロジェクトを締めくくった。


【B班】

B班は実店舗調査で感じた初心者に対するスタッフの対応の不十分さや、アンケート調査から見えた業界の現状を踏まえて、パチンコ体験イベントの拡充を提案。

その背景には、「パチンコに行かない理由」を20代を中心にアンケート調査した結果、「そもそも興味がない」が73.3%、「やり方が分からない」が22.4%と、若年層への接触機会が少ないことを指摘した。

20代パチンコ経験者への調査でパチンコを始めるきっかけがすべて家族や友人からの誘いだった。一人でパチンコホールに来店して始めた人がいないということを明らかにする。そこで接触機会増加のため、特設会場の設置や既存店舗内での専用エリアの常設などの重要性を述べる。

体験イベントの集客方法として、クオカードなどのデジタルギフトキャンペーンや、パチンコのゲーム性を疑似体験できるくじ引きなどを企画。ほかにもパチンコホールで学割制度の導入や、家族や友達と囲んで遊べるアーケードゲームのような横置きの機種開発も提案した。


 

プロジェクトに参加した学生7名から業界に対する本音をインタビュー

Q1.プロジェクト実施以前のパチンコ業界の印象はどうだったか

A.「一度も行ったことがなく、汚い、タバコ臭い、お金がいっぱいかかるという印象。テレビやホールの前を通った時の印象が悪かった。大学でパチンコ業界との共同プロジェクトをするとは夢にも思っていなかった。実際にホールに行ってみて思ったよりキレイで、お金だけじゃない楽しみ方があるという部分を知れて良かった」

 

Q2.パチンコについて、どのような印象を持ったか

A.「初心者には難しい遊びだと感じました。プロジェクト開始にあたり、メンバー全員でパチンコホールに遊びに行きましたが、メンバーの7人中一人だけが経験者でした。一人で他のメンバーを教えたのですが、お金の入れ方もわからない、メーカーによって個体差がある、台ごとにゲーム性が違うなど、マンツーマンで指導しないと教えられないと感じた」

「ゲームに触れてきた世代は、パチンコを楽しいと感じると思う。ギミックやCGなどすごいと感じた。パチンコに液晶があるとは思わなかった。液晶の迫力も非日常的で驚いた。旧式のパチンコもそれはそれで楽しそうだと思った」

「お金がもったいない。ゲームセンター感覚でできるのであればやりたい。音と光が苦手で居心地が悪い。親や彼女に怒られたなど、周囲の印象が悪い」

 

Q3.普段の生活環境下で、パチンコに関することを目にすることはあるかどうか

A.「ほぼない。SNSなどでも業界のニュースを目にすることがない。今回のプロジェクトを通じて、 YouTubeにアップされていた好きなアニメの台の実践動画を見ると、演出などが面白くて遊びたくなった。もっとノンユーザー向けに訴求すれば良いと感じた」

 

Q4.業界が今後広報戦略をする上で、若年層にとって効果的な手法や媒体は何か

A.「みんパチでやったような、お笑い芸人がパチンコネタをしているのを見て面白いと感じた。パチンコをネタにして、良さを伝えるようなものはありだと思う」

「TikTokなどでパチンコを検索しても上がってこない。パチンコは映像や歌に魅力があるので、もったいないと感じた。TikTokは映像や音で魅力を伝えるSNSなので、動画や音楽で魅力を発信できるパチンコは相性が良いと思う。また、利用者が若いので、業界が訴求したい層に伝わる気がする。 Instagramなどもパチンコの情報を見たことがないのでもったいない。Instagramのストーリーで出てきたら、見ると思うし、興味がわく」

「Twitterでの宣伝は、パチンコ業界と相性が悪いと感じる。画や映像で見せないと面白さが伝わら ない業界で、文字を主体に伝えるSNS媒体は良さが伝わらない」

「大好きなYouTuberがパチンコの魅力を配信していれば見る。興味ない分野でも、好きな YouTuberを通じて興味を持つことはあると思う」

 

Q5.大学生のお金事情と、パチンコにかかる費用感はいくらか

A.「1万円あれば、ご飯食べたり、服を買ったり、ディズニーランドに行きたい。5万円あれば貯金したい。学生にとって3万円は、月のアルバイト代の半分ぐらいのイメージ。一日3万円は使えない」

※メンバーの中で、一番もらっている学生で10万未満。

 

Q6.産学連携を通じて感じた業界の課題について感想は

A.「パチンコは遊技と言ってもやっぱり本質はギャンブルだと感じた。また、システムが複雑で、新規で始めるにはハードルが高い。そこをもう少しわかりやすく説明してほしい」

「業界からの発信不足の面を感じる。業界の閉鎖感を感じる。店内に入らないと何もわからないので、若者は参入しづらいのでは。呼び出しランプなどの使い方が未だに分からない。使い方を教えてくれる人がいないのも問題」

「ドラマや映画の悪い印象が強すぎる。本当は悪い業界ではないので、そこを改善しないといけない。業界人は暖かい方が多いが、客層が悪すぎる。若者限定や女性限定などのホールがあっても良いのではないか。パチンコを体験すれば、良さは伝わると思うのでもったいない。親にタバコとパチンコはするなと教育を受けた。親世代へのイメージ向上も必要かと思う」


中島和哉(なかじまかずや)
表現学部 表現文化学科 准教授/(株)ドリルクリエイティブディレクター

クリエイティブ・ディレクター・プランナーとして、様々な企業・団体の広告コミュニケーションの企画開発・実施に携わる。これまで培ってきた知見やスキルを活かして、ありとあらゆる課題への向き合い方、解決策の導き方を研究・指導している。

■略歴

東京大学法学部卒業後、ADKを経て、電通&ADKの合同出資のクリエーティブエージェンシー、ドリルに所属。これまでにカンヌライオンズ銀賞、アドフェストグランプリなど、国内外の100以上の広告賞を受賞。カンヌライオンズ、アドフェストなどの審査員も歴任する。2018年から大正大学表現学部准教授に就任。

日工組, 大正大学