【注目エリアレポート】D'STATIONが牽引する下町感あふれる副都心【東京・錦糸町】(後編)

2021.08.18 / ホール

4月29日のオープン以降、全国有数の高稼働を続けるSuper D'STATION錦糸町店。同店に牽引されるように周辺のみとや錦糸町店、ヒノマル錦糸町店なども客足が伸びている。稼働が低くて閉店した旧店舗を居抜きで買取り、グループNo1の繁盛店にしたSuper D'STATION錦糸町店の経営・集客戦略を中心に地域の動向をレポートする。

後編

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商圏最大規模店でのグランドオープンに長蛇の列

4月29日にグランドオープンした「SuperD’STATION錦糸町店」。オープン日はコロナ禍で、かつ3回目の緊急事態宣言中ということもあり、告知などの広告宣伝は控えていたが、口コミなどで広まり当日は予想を上回る大行列ができて話題となった。

1階と2階はパチンコ(計639台)、3階はパチスロ(361台)で計1000台の多層階店舗。フロア間の行き来はメイン入口左手のエスカレーターを利用すればスムーズで、帰宅動線上の1階下りエレベーター前に「セルフカウンター」を設けたスタイリッシュなつくりになっている。

また、多層階構造を生かして1階と3階の遊技フロアは「加熱式タバコOK」のフロア分煙を採用している。

錦糸町駅から2つの道路を渡った先にある多層階店舗「Super D’STATION錦糸町店」。駅からの集客だけでなく背後には多くの居住層がいる。

 

〝設置台数の最大化〟ではなく1階をあえて「玉積み」に

多層階店舗のセオリーはメインフロアの〝パフォーマンス最大化〟だが、有人カウンターを2階に設けて1階の設置台数を稼ぐ工夫はしつつ、1階は〝設置台数の最大化〟ではなく、ワンフロア「パチンコ玉積み」で魅せることを選択している。

同社は本来、積極的に「各台計数」を採用する法人で、商圏も各台計数が当たり前になっている。場所的に地代や人件費などの坪効率を考えれば全台各台計数でも不思議はないが、玉積みのインパクトでパフォーマンスの最大化を表現した点は、ちょうどユーザーの軸足がパチスロからパチンコへと潮目が変わるタイミングだったこともあり、成功要因の大きなポイントになっていると思われる。

1階の4円パチンコフロアでは島間のスペースを確保し、あえて玉積みを実施。積み上げられたドル箱の出玉感が店全体に活気を生み出している。

 

利用率が高い駐輪場と競合と差別化する提携駐車場

店舗に隣接する建物も一部を借りて、1階部分を「臨時駐輪場」として利用している。営業中は一部一般利用も含まれると思われるが(スタッフ常駐で抑止)、店舗側面駐輪場含め朝の立ち上がりから利用率は非常に高い。

駅への露出は、1000台という台数規模と駅から〝視認し難い場所〟であることを考えれば駐輪場は標準装備とも言えるが、「駅から遠い」ということは、「振り向けば居住地」であることでもあり、背後の居住層向けに駐輪場を大幅増設した点も成功要因の1つといえる。

提携駐車場は、店舗建物のタワー駐車場含め406台(店舗が発信する表記は分かりやすく「400台完備」で統一している)。駐車場利用者は店内スタンプカードで推測できるが、視察時の利用率は稼働に対して5%未満と決して高くはない状況だった。ただし、ここは駅前競合店がフォローしていない層になるので、中長期的には〝伸びしろ〟という見方もできるだろう。

店舗備え付けの駐輪場に加え、隣のビルも借りて台数を確保した。

 

総括/グランドオープンと競争で
商圏全体の魅力度がアップした錦糸町

「SuperD’STATION錦糸町店」は、錦糸町駅前商圏では駅から最も離れており、駅から店舗に向かうには大きな交差点を2度横断する必要がある。そのため駅からの継続的な誘因はハードルが高く、ややもすると〝特定日に特化した歪んだ営業〟などになりかねないことから、オープン前は駅から遠い点をネガティブに挙げる業界関係者は多かった。

ところが現在の稼働状況(週末昼ピーク76.9%)を踏まえれば、「同店に限っては駅から遠いことはネガティブではなかった」といって差し支えなく、とどのつまり旧店舗の不振理由は「別のところにあった」のだろう。

もちろん、SuperD’STATION錦糸町店の駅への露出が高いレベルにあることに違いはなく(それは駅構内の看板や改札付近の掲示板などからもうかがえる)、駅利用客の来店も相当数あると思われるが、駅方面からの取り込みが「主」であれば失速していても不思議はなく、駐輪場の利用状況からも集客の「主」は駅ではなく「背面」と考えるのが自然だろう。

昨今、グランドオープンがあっても3カ月も経過すれば商圏客数はほぼほぼ元に戻り、商圏顧客の奪い合いに終始するケースが多い。

しかし、錦糸町駅前商圏は膨らんだままキープしている状況で、SuperD’STATION錦糸町店のグランドオープンがきっかけで商圏が活性化し、競争により商圏全体の魅力度がアップして定着傾向にある良いグランドオープンの事例である。

各店の台数規模ではSuperD’STATION錦糸町店が圧倒し、客数でもそうなっているが、法人ごとの台数で言えば、みとやが1166台、D’STATIONが1000台、ヒノマルが783台とまだまだ挽回の余地が残されている。ぜひ、折り合いを付けることなく、切磋琢磨して商圏活性化を続けてもらいたい。

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