本音を調査! 「夏のボーナス、ぶっちゃけどうだった!?」

2021.08.16 / その他情報

2021年の上半期も新型コロナウイルスの猛威は収まらなかった。「パチンコホールは危険な場所ではない」という業界全体としてのアピールや、現場での懸命なコロナ対策により、「稼働低下・営業中止」といったコロナ禍の直接の影響は一旦の下げ止まりとなっている現状も指摘されている。しかし、だからといって現場レベルでの不安感・閉塞感は拭いされるものではない。

「もともと衰退の傾向にあった業界ですが、コロナによってそれが加速している印象です」とある業界関係者は語る。「10年後、15年後にはここまで下がってきているだろうとコロナ前に予測していたフェーズが、コロナによってまさに今、先取りしてやってきたという状況なのではないでしょうか」

 

そんな中、2021年7月、多くの企業で夏のボーナスが支給される時期がやってきた。これまでの業績や今後の見通しがダイレクトに「金額」として反映されるのが夏のボーナスだ。そこには、業界各社やそこで働く社員の「本音」が反映されているのではないか?

そこでPiDEA編集部は、「コロナ禍2年目の夏」業界のリアルな状況を知るべく、ホール関係者に向けて「夏のボーナス、ぶっちゃけどうだった!?」アンケートを実施した。すると、業界を取り巻く状況の厳しさと、業界人がこの状況をどう捉えているのか、建前をはぎ取った本当の姿が見えてきた。

 

 

公式LINEアカウントアンケート結果より

夏のボーナスが昨年と比べてどのように変化したのかをダイレクトに尋ねた結果がこちらだ。昨年夏の時点で業界はすでに新型コロナによって大きなダメージを受けていたが、半数以上の業界人がさらにボーナスが減少したと答えている。ボーナスが「ゼロ」だったと答えた人も13.1%いた。

 

公式LINEアカウントアンケート結果より

 

さらにそのボーナスの金額について、どのように感じたかを複数回答可という形式で選択して答えてもらったのが上記のデータである。ポジティブな回答「前向きに捉えている」とした回答を「前向きには捉えられない」が大きく上回り、さらに全回答者のうち15.9%が「辞職の選択肢がちらついた」にチェックを入れたのだ。

「ボーナスが減少した」と回答した中で見ると、「辞職の選択肢がちらついた」のは22.6%。さらに職位で見ると、「辞職の選択肢がちらついた」とした回答者のなんと62.7%が副店長以上の役職者であった。

 

 

 

パチンコ業界でキャリアを重ね、業界や会社のために一生懸命働いてきた人々が続々と会社を離れる、そうした動きがこの夏をきっかけにさらに加速していくのではないか、という示唆が得られた。しかしそれは、本人にとってももったいないことだし、業界にとっても貴重な人材の損失ではないのか?

業界の人材問題に詳しく、人材開発・育成・キャリアコンサルティングの専門家でもあるパック・エックスの嶌田堅一氏に話を伺った。


 

パチンコ業界に対する不安というのを特にひしひしと感じているのが30代から40代で、不安がこの世代を直撃する主な理由としては二点挙げられます。

まず一つは、「キャリアアップが見えない」問題。ポストに空きがない、出店などの予定がなく新たなポストが生まれないというもの。給与があがらないという不安もありますが、どちらかというと年齢と実務経験ギャップに対する焦りです。

もう一つがだいたい結婚をして子供ができてくるのがその年代だということですね。お金が必要になり、キャリアのことを真剣に考えないといけなくなりますし、また家族ができるとなると、この業界にはつきものですが、特に大手だと異動の問題があります。

 

ー夏のボーナスがきっかけになって、会社を離れる決断をする人は増えるでしょうか?

もちろん、それがきっかけになる人はいると思います。しかし、会社を離れてさあ転職活動と考えても、なかなか思うようには動きづらい現状です。

コロナ禍以前の求職者に有利な採用市場感では企業側が人材の囲い込みに必死で、例えば、勤務地に融通を利かせることは常套手段だったわけですが、今だと「会社が求めている場所にどこであっても赴任します!」というような、そういう気概を見せるくらいじゃないと採用してもらえません。

 

ただ、そういった現状は改めて説明せずとも、みなさん肌で感じていらっしゃるのではないかと思います。なので、現状にある程度不満を持っていても、これまで具体的な動きを起こそうとまでは思わなかった人も多かった。ポスト不足の問題や、会社の成長性に疑問があっても、とりあえずはここで頑張ろうと考えていた方が大多数だったのではないでしょうか。

ですが、今回コロナ禍があって、夏のボーナスだったり、会社によっては降格人事や人員整理があったりと、少しずつ不安が目に見える形となって現れてきている。世の中的にいたしかたないといえばそうなのですが、果たしてこのままでいいのか? そういった問いを改めて突きつけられたのがこの夏だと言えるのではないでしょうか。

 

ー進むも地獄、戻るも地獄ということでしょうか?

本来ならそうならないように、働く人それぞれがキャリアを繋げていけるような業界となっていくのが理想ですよね。上に行くほどポストが少なくなるのは仕方がないにしても、それぞれのスキルに適した仕事を用意できる環境を整えていく必要があるのだと思います。

しかし現実は厳しく、人材の損失が生まれることもあります。とるべき手法によっては業界への人材流入に影響を及ぼす可能性も否定できません。10年、20年、業界一筋で働いてきて、その人にしかないスキルや強みがあって、本人にも「業界でこんなことがやりたい」という想いがあるのに、「生活圏で家族を養う仕事を見つけなければ……」と他業界に目を向けざるを得ない。

 

ーなるほど。では、逆に言えば、本人に業界で生かせるスキルがあって、それを生かしてくれる企業に業界内で巡り合った事例というのはあったりするのでしょうか?

もちろんあります。例えば、人材開発に携わっていたAさんのケースですね。接客能力や品質を標準化するなどの部門にいたのですが、会社の業績が悪化する中で縮小を余儀なくされていた。

言ってしまえば、一度は会社から「いらない」と言われてしまった業務がこの方の他にないスキルだったわけです。当然本人としては自信を持ってアピールし続けるのが難しい、ともすれば折れそうになってしまうような状況だったわけですが、転職活動を続けるうちに、これから成長・拡大していきたいと考える会社とマッチングして、そのスキルが非常に評価されました。

 

大それたことを言える立場ではございませんが、僕個人の想いを言いますと、シンプルに、自分の仕事に誇りや自信を持って欲しいと思っています。実際、この情勢下で、自分の望む条件で転職するというのは簡単なことではありませんし、結果論でしかないんですが、でも、やってみないとわからないことってあるんです。

キャリアコンサルタントの現場で働いていると、「もっと自信を持って欲しい」と思うような方に意外と多く出会います。例えばBさんの場合、ご本人は「前職は小さな会社で教育制度などはなく、我流で学んだことがほとんどなので他社で通用するか自信がない」というのですが、詳しく話を伺ってみるとパチスロコーナーを任されていて利益を2倍近く変えていました。何をしたのか聞くと「ターゲット属性を絞り、機種選定に反映し、ユーザーの反応を見ながら分配、PDCAを回していた」と言うんです。「では、それを希望企業に対してどうアピールしていきましょうか」という段階になって初めて「あ、それは自分の武器になるんですか?」と気づくんです。

 

ー「自分がこれまで何をしてきたのか、自分に何ができるのか」を見つめ直すことが重要だということでしょうか?

その通りです。

キャリア形成を考えるなかで、例えば、高い給料が欲しい、やりがいを得たい、家族との時間を増やしたい、安定した生活を送りたいなど、その時々または将来的に何を大事するかで求める環境は変わってきます。一度決めたらずっと同じという人は稀で、年齢や生活環境の変化によっても変わってくるものです。

そして、実現させる過程において転職(要は仕事や働き方を変える)という選択が必要な場合もありますが、これまでの経験を棚卸する作業とPRできる形にしておくことが大切になってきます。

 

もし転職となった時も、自分の強みを理解している方が転職先を見つけやすいですし、転職先の組織に自分の居場所を見つけられます。転職後の働き方や満足度も変わってくるわけです。


夏のボーナスの実態を調査する中で、多くの業界人が自分の会社やキャリアに「これでいいのか?」という不安を感じながらも、なかなか具体的なアクションを踏み出せるような状況ではないことがわかった。これから先どうするかはまさしく個人の選択次第、ケースバイケースである。

今いる場所で頑張るのか、新たな場所へ移るのか? どのような選択をするにせよ、その前に自分の強み・スキルを客観的な視点から見つめなおすのが重要である。この夏のボーナスにただ一喜一憂するのではなく、前向きにその「見つめ直し」のきっかけにするのもよいのではないだろうか。

 

取材協力

株式会社パック・エックス
キャリアコンサルティンググループ兼人材開発グループ 統括マネージャー 
嶌田堅一

大学卒業後、㈱パック・エックスに入社。人材紹介事業を10年以上経験、国家資格キャリアコンサルタントを取得。パチンコ業界のキャリア課題と真摯に向き合い、これまで2000人以上を支援。

自身のキャリアに疑問や不安を感じ、専門コンサルタントの力を借りて「見つめ直し」をしたいと感じたら? 株式会社パック・エックスまで。

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