新宿店を独自の4基準を設定して営業再開へ/カレイド

2021.05.16 / ホール

5月発行のPiDEA Vol.177において、巻頭レポート記事「緊急事態宣言-1%の休業-」を掲載した。そこでは、一回目の緊急事態宣言時とは打って変わって、対象となっているほとんどのパチンコホールが休業要請に応じていないという実情と、それにもかかわらず休業を選択したいくつかのホールが存在することを報じた。

その上で、休業を選択した数少ない大型ホールの1つである「カレイド新宿店」に、なぜ業界の大勢とは異なる「休業」という選択肢をとったのか、その真意を聞いた。

 

休業中のカレイド新宿店(5/2撮影)

詳しくはお手元のPiDEA Vol.177を参照して欲しいが、カレイド新宿店のオーナー笹川氏と店長北條氏の意見は要約すると以下の通りである。

国・都からの要請を「営業してもいい」と解釈することはできない。苦渋の決断だが、明確に法律で示された「休業要請」には従わざるを得ない。「グレーゾーンを制する」ことが重要な業界であるからこそ、明確に黒となっている大型店舗の営業を行うことはできない。

 

その後、緊急事態宣言の延長が発表される。政府の会見では大型パチンコホールには20時までの営業短縮を求める指針が示されたが、対策を決定して実行する小池東京都知事は大型パチンコホールに引き続き休業を要請。足並みが乱れる形となった。

そしてその中、カレイド新宿店は5月16日からの営業再開を発表する。その内容は、独自に設定した基準をクリアする場合にのみ、国とその他の緊急事態宣言かとなっている府県が取っている対応である「20時までの時短営業」を行い、クリアしない場合には休業を行うという、異例のものだった。

 

このような対応となった背景について、カレイド新宿に問い合わせたところ、以下のような回答をもらった。


Q1.なぜ休業から、条件つきではあるが営業という対応に切り替えたのか?

まず、4月25日からの「緊急事態宣言」は短期間に集中的な対策を取ることが目的であったため、政府の要請に従い休業を決断いたしました。5月12日以降は政府と都で見解が違うため、弊社におきましては、独自の判断といたしました。
また、デパート業界や他のエンターテインメント業界でも相当の困惑があったと思いますが、このような取り組みが少しでも広がり、「周りに流されない」「自らで考える」ことが主流になって欲しいとの願いも込めております。

Q2.営業の指標となる4項目はどのような基準で策定したのか?

1)、都内の感染状況を把握する上で、「新規陽性者数」と「検査の陽性率」の2項目
2)、都内の医療のひっ迫具合を把握する上で、「入院患者数」と「重症患者数」の2項目
以上4つ、皆さんなじみのあるモニタリング項目より抽出しました。
「明確な基準」を策定することで、出口の見えない状況においても従業員が先を見て仕事が出来るようにしたことが本質であります。

Q3.今回は一社の一店舗についての判断となったが、今後休業要請の対象を決める政府や都、そして業界としての対応を先導する役目を持つ組合に求めることはあるか?

多くの方が困惑しているのが「Q2」でもお答えしましたが「出口の見えない」状況ではないでしょうか。この状況を改善させることが「政府」や「都」の役目だと思います。「合理的な理由」と「明確な補償」が伴えば今後も適宜要請は受け入れていくつもりです。
また、組合に対しては毎回同じ文書がリリースされ、またかと思う反面、責任は取れないでしょうから期待は出来ません。今回のように独自に対応を考えていくしかないという認識であります。
例えば、「各種広告宣伝の禁止」も「人と人との接触を削減する意味においても」という名目ではありますが、営業していることで矛盾を感じます。弊社の判断として、パチンコ、パチスロユーザーが閲覧するであろう媒体には広告は打っていく予定です。

残念ながら日本国内では、感染症の拡大防止と経済活動を両立させる納得のいく対策は行われていない。そんな中、このように独自の基準を設けて、顧客の理解を得つつ、そして新型コロナ対策を取りつつ営業を続ける事業者は今後増えていくかもしれない。

しかし、「一社独自の基準で営業する」ことにどれだけ説得力や納得感があるのかについては疑問符もつく。「合理的な基準の設定」は本来、政府や都の仕事であり、それが機能していないのであれば業界内の組合など大きな組織が先んじて行うべきものであり、一律にその基準に従うことによって説得力も生まれてくるものだろう。

政治の混迷に対しては批判を行いつつ、そんな中で組合は各組合員の判断に任せるのではなく、リーダーシップを取って判断していくことが望まれる。

それが望めない場合は、それぞれのホール企業は自らの営業について主体的に考え、時には自らの基準を示した上で判断していくことが求められるのだろう。

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