陽性者が発生したホールの声と対応〜ダイナム〜

2020.08.14 / ホール

特集
〝不要不急〟にかき消された
レジャー産業の声

「ウィズコロナ」「新しい生活様式」といったスローガンの陰で、「集まった人々に楽しみを売る」レジャー産業は危機的な状況に置かれている。今後はターゲットにされる業種の真価が問われる期間になっていくだろう。現場の視点から、多角的に迫っていく。


陽性者が発生したホールの声と対応
〜ダイナム〜


「いつかくるだろう」というのは早い段階から想定していた

2020年7月11日、株式会社ダイナムは自社コーポレートサイトで「松阪店営業自粛のお知らせ」を発表。その後もきめ細かな情報発信を続けた。

「自店舗従業員の新型コロナウイルス感染」という、これからの時代もはや目をそらすことはできない事態へのスマートな対応に、思わず感心した業界人も多かったのではないだろうか。

2020年7月11日、株式会社ダイナムの自社コーポレートサイトに「松阪店営業自粛のお知らせ」というリリースが出された。そこでは、「当該店舗の従業員が濃厚接触者であると確認されたこと」「松阪店の営業を自粛すること」といった情報が公開され、さらに追って7月12日には先述の濃厚接触者がPCR検査の結果陽性だったことを発表。同時に「濃厚接触者にはPCR検査を実施」「残りの従業員には抗体検査を実施し、陰性を確認している」「店舗内すべての遊技台・施設・設備の消毒」「お客さまとの濃厚接触はなし」「松阪店すべての従業員を自宅待機とする」といった情報を端的に、過不足なく並べている。

その後も当該店舗の営業再開に至るまで、きめ細かく迅速な情報公開が行われた。他店舗で同様の事態が生じた際も、対応はスムーズだった。

 

情報収集し、事実確認。体制は1月末には整っていた

「感染の疑いのある体調不良者の情報を拾い上げ、判断を下す仕組みは、1月末の時点で整備していました」とリスク管理部部長であり、社内の新型コロナウイルス感染に関する情報を一元的に管理する〝情報コントローラー〟を務める阿部到氏は語る。

「ダイナムを起点として感染を広げることはさせない、というのを大きな方針として取り組みました。いつかくるだろうというのは、早い段階から想定していたといっていいかもしれません」

言うはやすいが実践には困難を伴う仕事である。特に事実確認に一番神経を使う、と阿部氏。

「あるお店から、従業員が濃厚接触者になった、と報告がありました。一緒に遊んだ友人が陽性になったと。本人も発熱していて、これは間違いないだろうと思って発表しようとしたら、その直前に、『陽性というのはその友人の勘違いだった』ということが分かったんです。危うく誤報でお店を閉めるところでした」

ダイナムでは社内ネットワークのもっとも目立つ位置に新型コロナウイルス対策の情報を掲示、逐次更新している。

 

単純に「安全です」ではもはやカバーできない 

 

ダイナムは店舗での新型コロナウイルス感染者の発生に対し、事細かに情報を公表していくという姿勢で対応した。しかし、情報を公開していくことに不安はなかったのだろうか。

情報管理部の島田健次郎氏は「この時期、テレビはどこをつけてもコロナの情報ばかりでした。国民全体の新型コロナウイルスに対するナレッジ(知識)、リテラシーというものが高くなっていたんです」と語る。

となると、単純に『安全です』では説得力がない。社会の理解度や成熟に応じて、情報を発信しなければならない。どういった範囲にPCR検査や抗体検査を行って、何日自宅待機してもらったのか。そこまで説明して初めて、ユーザーにとっては安全だと理解できるのである。

「行政機関に、記者会見の質疑の場で『感染者発生場所』として社名を公開されてしまうこともありました。そのときは憶測中心の報道がされないよう、一般メディアの方にこちらからアプローチをかけて、正しい情報が提供されるようにしました。それが従業員を守ることにもつながります」

情報提供により一般客と従業員両方を守る。ダイナムの方針は一貫して変わらない。

 

取材に答えてくれたのはリスク管理部部長の阿部到氏(左)と情報管理部部長の島田健次郎氏(右)

 


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