新型コロナウイルスの感染者数が再び増加し始めており、一部のパチンコホールにおいても従業員の感染事例が取りざたされるように。長い休業要請が明けて、ようやく通常営業に戻ったが、ふたたび厳しい現実が業界を覆っている。
徹底した感染予防という業務負担ものしかかる中でも新規則機への移行は段階的に進めなくてはならない。稼働がなかなか上げづらい状況の中で、安易な機種選定や付き合いの入替をする余裕はないはずだ。どんな機種を優先的に入れ替えるべきか。その条件を探った。(※本企画は6月中旬発行のPiDEA166号に掲載した内容を一部改変したものです)
旧規則機に対する経過措置延長に関する規則の附則が改正・施行され、5月20日付けの官報に掲載された。これにより、5月20日以降に認定もしくは検定が切れる旧規則機はその日から一年間は法的に継続設置することが可能になった。これまでホールを支えてきた一部の旧規則機の設置期間が伸びたことで少し安堵しているホール関係者も多いことだろう。しかし、新規則機への入替は毎月15%を目処に段階的に進めていかなくてはならず、決して入替がなくなったわけではない。
小誌が実施したアンケートの結果(図1)を見てもらえばわかる通り、ホール関係者に機種予算を聞いてみたところ、全体の7割が「削減する」と回答している。つまり、付き合いで購入するとか、試しで導入してみるというような機種選定の余裕がなくなったということ。新型コロナウイルス問題によるコスト増や稼働低下に直面しているホールにとって、新台入替は集客に結びつくといっても、コスト的に安易になんでもかんでも導入できるような状況ではなく、今まで以上にシビアな選択が求められる。
そこで、今後の機種選定において、優先すべき条件とは何なのかを探るべく、辛口な意見がSNSで注目を集め、多くのホールに対して経営アドバイザリー業務を請け負っている株式会社Azmの菅原和俊氏に投資すべき機種について聞いてみた。
「非常にありきたりな話から入ってしまいますが、一番重視しなくてはいけないのは『最初に座ってもらえそうな機械』ということですね。どんなにスペックがよくても、座ってもらうことができなければ意味がありません。やはり、多くのお客さまが注目し、遊技意欲を持つコンテンツ力がある機種を導入の第一条件にすべきでしょう。最初に座ってもらうって非常に重要なことなんです」と語る菅原氏。最初に座ってもらえそうな機械の重要性は「新台導入初週の一人あたりの平均遊技時間」(図2)の結果を見れば分かる。「牙狼」や「慶次」「北斗」「海」など、いわゆる「鉄板コンテンツ」と言われる機械は客の平均遊技時間が1時間30分を超えている。
「初動で1時間30分以上遊技された機種はその後も比較的稼働を維持しやすい傾向があります」と菅原氏はデータを補足する。
また、自店の客層にあったコンテンツを探ることも必要だと、菅原氏は続けて語る。
「いわゆる鉄板コンテンツと呼ばれる機械も細かくデータを見てみると、コンテンツごとに好まれる年代に違いがあります。ハイミドル全体の年代別遊技比率と各機種を比較すると、例えば『北斗』は30代や40代の人が多め。『慶次』は40代〜50代の人が多いというデータが出ています(※『ハイミドル新台導入初週の遊技客年代別比率』(図3)を参照)。また、『牙狼』の場合はハイミドルの年代別平均遊技比率と同じような割合で遊技されており、全年代が満遍なく遊技すると言い換えられます」
このほかにも「『ルパン』は50代や60代が比較的多いというデータもあり、自店客層の世代割合を見極めて機種を選定していくことも重要になるでしょう」と氏は語る。
続けて「『海』や『慶次』『北斗』など鉄板コンテンツはいろいろありますが、全年代が満遍なく遊技している『牙狼』シリーズの今後の動向は特に注目しています」とのことである。
また、コンテンツと切り離してはいけないのがスペック面であると菅原氏は強調する。TYやMYに加えて、特に特賞中出玉率を示す「T/」(ティースラッシュ)は気にしておくべきだという。
ホールの看板機種である「北斗無双」のT/は378%。「慶次漆黒」は382%となっている。新規則機でも一定の人気を博した「必殺仕置人」も375%となっており、この数値が350%を超えていることも重要な指針となるようだ。適合率などの諸問題もあるが、ある程度の出玉増加スピードに関しての指標を確認することも重要となる。
P機は技術上の解釈基準変更が行われ「時短の作動回数の上限値(100回)の撤廃」「時短の作動契機の追加」「リミッター回数の上限値が条件付きで2つ設定可能」が認められた。従来の時短(a時短)に加えて、低確率中の規定回数の図柄変動で作動する時短(b時短)と、低確率中の特定図柄表示後に作動する時短(c時短)が搭載できるようになった。これを受けて、遊技機メーカー各社はb時短に分類されるいわゆる「遊タイム」を搭載した機種を中心に、abc時短をうまく組み込み、新しいゲーム性を生み出せるようになった。
コロナによる工場休業や部材不足による販売延期もあり、まだお披露目されている機種は少ないが、今後は各社よりabc時短搭載機種がリリースされることになるだろう。この新解釈基準機に関してはパチンコユーザーにどのような影響をもたらすのか。
「ユーザーに浸透していくまで、ホール側の努力と時間がかかると思いますが、普通に受け入れられていくと思います。まだ搭載された機種も少なく即断はできませんが、これからいろいろなタイプが出てきて、ハイミドルやミドル、ライトミドルなど、スペックごとに遊タイム発動回転数や発動時短回数などの黄金比が生まれてくるんじゃないかと思っています。逆にabc時短を搭載しない代わりに、通常特賞に出玉を振った機械が、MY性能で注目を集めることもあり得ます。いずれにせよ、スペックの多様性はパチンコにとって良い方向に進むことは間違いないと思います」
パチスロの天井のような救済機能と捉えられている「遊タイム」だが、救済がある分、出玉性能が低くなるように感じるかもしれない。しかし「ヘソ賞球3個以下の機種が登場したり、ベース30以下の機種が主流になってきているため、遊タイム搭載機がこれまでの機械と比べ、出玉性能において大きく見劣りするということはなさそうです」とのこと。つまりベースが低くなったということで、abc時短搭載機が過去機種に比べMY性能の劣る機械と認識される訳でもない。遊タイムが付いていてもメリハリのある出玉性能を持った機械が今後登場してくると氏は予想している。
また、新解釈基準機が増えることで「ユーザーの年代比率が変化する」と菅原氏はいう。
「遊タイムを搭載し、パチンコの醍醐味である攻略要素が追加されたことで、若い人たちもパチンコに流れてくる可能性があります。これまで4円パチンコの50代から60代の年代比率は42%と高かったのですが、この比率も変化するかもしれません。出玉性能も影響しているのですが、昨年末に『バジ絆』が撤去されてから4円パチンコの2020年1・2月は、前年同月比を上回る業績であったというデータもあります。今後パチンコに遊タイムなどが付き、遊技性の幅が広がると、パチスロを遊技していた若者がさらに移行してくると予想しています」
パチンコに若者が流れてくることを考えるとパチンコの機種選定において、コンテンツ選択の重要度はさらに増すだろう。厳しい予算の中でやり繰りするためにも自店に合ったコンテンツを見極めたいところだ。
出玉性能面でも旧規則機に追いつけないパチスロは今後ユーザー離れが進む可能性もあると菅原氏はいう。一方のパチンコは新解釈基準により、救済機能となる遊タイムをはじめこれまでにないゲーム性を搭載したP機が今後多数出てくる。パチスロの天井狙いのように、遊タイムのゲーム数を狙う若者も増えてくるだろう。これにより若年層のパチスロユーザーのパチンコ流入も想定される。これらを考えると入れ替える機械によって業績に差が出るのはパチスロよりもパチンコだといっても過言ではないのではないか。
最後に「削減前提の厳しい入替予算でやり繰りするホールのことを考えると、遊技機メーカー各社には自社鉄板コンテンツの新機種は、なるべく安価で出せるような工夫をしてもらいたい」と氏は締めくくった。
新規則機への入替に頭を悩ませているホール関係者は多いと思うが「鉄板コンテンツによる機械での集客」「abc時短搭載機による話題性」「高T/が要因となるMY性能」など、諸条件を念頭に選んでいけば、堅調稼働が期待できる機種選定の答えは自ずと見えてくるはずだ。