業界歴48年、休業に苦悩する巣鴨の老舗ホールの決断

2020.04.21 / 新型コロナ

4月3日、都知事会見での外出自粛要請を受け、都内では4日・5日の週末に多くのホールが休業を行なった。さらに7日には政府からの7都府県を対象にした緊急事態宣言発令を受け、対象地域での休業を決定するホールが相次ぐことに。また11日からは東京都によるホール休業要請も出され、現在都内のホールは約7割が休業中だ。

4月に営業できたのは実質7日間だけとなっているが、この事態を現場の責任者はどう考えているのだろうか? お年寄りの原宿として知られる巣鴨で、休業をという決断を下した老舗ホール店長に話を聞いた。


西間木祐寿

株式会社三ツ星商事営業部統括部長。地場の老舗として、多くの常連客に愛される巣鴨会館(東京・豊島区)の総責任者。手打ち時代の21歳で業界入りし、23歳から店舗責任者に。48年の業界歴でこれほどの事態は初めてと語る。


今は足並みを揃える時だと考えます

4月最初の週末、都知事からの外出自粛要請のタイミングではほとんどのホールが休業したんですよ。これは行政や組合がどうこうではなく、業界としてしっかり対応していこうということで皆が一致したんじゃないかと思います。

ただその後の緊急事態宣言、そして休業要請では足並みが揃いませんでした。地区組合で話し合ってもどうするのか結論は出ず、都遊協から10日に文書が出ましたが、そこでもはっきりとした方向性は示されませんでした。
休業要請を重く受け止めなければならないと書いてあるのに、その後には苦渋の決断としながらも営業継続も仕方ないとしている。

当然、厳しいところは営業しますよね。
豊島組合でも大手さんを除いたら、休んでいるのはウチくらいじゃないですか。休業という決定をしたのは社長で、同じビルでサウナもやっているんですけど、同じタイミングで休もうという話になりました。
幸い自社物件ということもあり固定費の負担が少ないのは確かですが、それでも苦しいのはどこも同じですし、ここは足並みを揃えるべきだと思います。

ホールは感染リスクが少ないといわれますけど、それでもどんな対策をしたところでリスクがゼロというわけではありません。またお客様はもちろん、従業員の健康も考えれば、休業は最善の策ではないでしょうか。
もし営業を続けているホールがクラスター化したとなったら、業界全体がかつてない危機になるとも思いますから。

ここまで厳しい状況は過去になかった

東日本大震災の時も落ち込みましたけど、48年間ホールにいてここまで悪いのは経験したことがありません。ましてやゴールデンウィークに営業できないなんて、考えたこともなかったです。

また常連さんが営業を継続している近隣ホールで遊ばれてるのを見たときは、少々悲しい気持ちにもなりました。休業して数日は我慢されていたみたいですが、やはり開いている店があったら行きたくなるのは仕方ないですよね。

営業しているホールも止むに止まれぬ事情があるのは理解できますが、現在の国難といえる状況でそれははたして正しいのかどうか。
社長が決断しなかったらウチも開けてたかもしれないですし、そこは本当に難しい判断です。

いつでも再開できる準備は怠らない

休業中には社員が交代で出勤して循環を動かしたりと、いつでも再開できるよう準備をしています。20日に予定していた新台入替も納品と設置を済ませていますから。

また国からの雇用調整助成金、また都からの休業協力金も申請して、可能な限り休業中の負担を減らすようにしています。アルバイトスタッフについても辞めてもらうことはなく、最低でも4月分の給料は保証しています。
ただ数名ですが、派遣のスタッフについては派遣会社に対応してもらわなくてはなりません。同じ働く仲間なのでこちらとしてもなんとかしたい気持ちはありますが、他業種同様に派遣で働く人はより厳しさを感じてしまうのではないかと心配しています。

今後の営業は計画を練り直す必要がある

最低でも1カ月分の売上がなくなったわけですから、年間計画を練り直さなければなりません。できるだけお客様に負担をかけないためには、まず機械代の削減からになるのかな。ただかなり進んだとはいえ、新規則機への全面的な入替もありますし、今回の影響で新機種の納期も飛びまくってますから、改めて年間計画を立てるのもなかなか難しくなりそうですね。

休業しているホールはどこもそうだと思いますが、現時点では緊急事態宣言の期限であるゴールデンウィーク明けからの再開を目指しています。ただそこでコロナの影響が収まっているのかどうか。
仮に自粛要請が延長されたとしたら、さすがに営業再開も考えなければなりませんし、これはいち早く休業を決定した大手さんもそうだと思いますよ。本当はゴールデンウィークの前には再開したいんですが、そこは社長と相談してということになりますね。

本来なら個々のホールに判断させるのではなく、組合なり行政なりがしっかりとした方向性を示して欲しいですし、そうでなければやっぱり足並みは揃わない。
この業界の悪いところが今回も露呈した形といえるかもしれませんが、さすがに今回ばかりはそうもいってられなかったと思います。

他店で打っていた常連さんに「開けないんですか」といわれた時は、ちょっと寂しかったというのが本音になりますか。

 

新型コロナウイルス, 緊急事態宣言, 休業要請