【コロナ特集】パチンコ店はなぜ対象外!? 「セーフティネット5号保証」とは?

2020.04.15 / 新型コロナ

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、政府は7つの都府県に緊急事態宣言を発令した。都府県知事らは具体的な業種を挙げ、感染拡大防止に向けた休業要請を行った。パチンコ店もその例に漏れず、対象地域のパチンコ店は臨時休業を余儀なくされた。

そのような状況下、業界内で盛んに取り沙汰される言葉が「セーフティネット5号保証」である。「セーフティネット5号保証」とは何なのか。なぜ業界はそれを必要としているのか。本サイトではそれについてわかりやすく特集していく。


「セーフティネット」とは?

「セーフティネット」とは、経済産業省の管轄下である中小企業庁が、経営が悪化した中小企業に対して実施する経営(金融)サポートのことである。「経営の悪化」の理由はあらかじめ8種類に定められており、「5号」というのは、その「5番目の理由」である、「全国的に業況が悪化している業種」を対象にしている。ちなみに「1号」は「連鎖倒産」だったり、「4号」は「自然災害」だったり。今回の新型コロナウイルス感染症に関しては、「4号」および「5号」の発動が決まっている。勘違いがないようあえて釘を刺すが、この話は無償で貰える補助金の話ではない。あくまで融資(借入)の話である。

「セーフティネット5号保証」の対象業種は、経済産業省があらかじめ決めており、4半期(3カ月)ごとに見直しや随時の追加が行われている。令和2年度の第1四半期(4月~6月)時点では、587業種が指定されている。

 

経済産業省が指定しているセーフティネット保証5号の対象587業種

 

ここに指定されている業種が、「最近3カ月間の売上高などが前年同期比で5%以上減少」しているか、「原価が20%以上も上昇しているのに販売価格に転嫁できない」場合は、会社が在る市町村に認定申請書を提出し、その市町村の「認定」を受けるようにする。
この「認定」を受ければ、全国にある「信用保証協会」の保証の元で、任意の金融機関に多額の融資を無担保で申し込むことができるようになる。

「セーフティネット保証」は、中小企業を対象に実行されるものである。
ではどこまでが「中小企業」の範囲に含まれるのか。中小企業庁では、「中小企業」の定義を、パチンコ店のようなサービス業の場合は、「資本金5000万円以下、または常時使用する従業員100人以下」と定めている。大手チェーン企業を除く多くのパチンコ店は、この「中小企業」に十分該当するだろう。

そして、ここがこの解説で一番大事なポイントなのだが、この「セーフティネット5号保証」の対象587業種の中に「遊技業(ぱちんこ店)」は含まれていない。


「遊技業」を保証対象業種として認めて欲しい

「遊技業」が、「セーフティネット5号保証」の対象業種に含まれていない理由について、風営法管轄下の業種は指定しない、パチンコはギャンブル(と同等)だから指定しない、反社会的勢力に資金が流れる恐れがあるから指定しないなど、さまざまな憶測が語られるが、実際のところ具体的な理由を指定する側の経済産業省は明らかにしていない。

パチンコホールは20万人以上の雇用を抱え、年間900億円以上を納税しているにも関わらず、自社の存亡に関わる危機的な状況において国の救済制度の恩恵を受けられないという矛盾にも歯噛みするところではあるが、今回、パチンコ業界関係者らが「セーフティネット5号保証」の対象業種に「遊技業」を追加してもらうため声を荒げているのは、同じ風営法管轄業種であり、今までは保証対象外業種であった「マージャンクラブ(麻雀店)」が、保証対象業種に追加されたのが大きな理由だ。

「麻雀店」は、新型コロナウイルスの感染拡大初期に、厚生労働省が「感染危険度が高い場所」と名指しで指定した。その時点までただの一人の感染者も出ていないのにである。この指定による壊滅的な打撃を受けた麻雀業界は、自民党の「頭脳スポーツとしての健全で安全な麻雀を推進する議員連盟(通称:スポーツ麻雀議連)」に積極的に働きかけ、「名指し」の代償として、保証対象業種への追加を勝ち取った。

今回の緊急事態宣言に伴う各知事の休業要請では、やはりパチンコ店も名指しで要請されおり、多くのパチンコ店は、何の補償も担保されない状況の中で「臨時休業」を決断した。多くの知事たちが、休業要請を出した多くの業種の「営業補償」は、財政事情をかんがみれば困難であることを表明しているなか、パチンコ業界は営業補償をしてほしいと望んでいるわけではない。その前段階に当たる「セーフティネット5号保証」という、現行で他の業種が得ている権利と同等の権利が欲しいと主張しているだけだ。

この問題についてはPiDEA165号でもより詳しくレポートする予定であるが、まずは業界関係者の正確な理解を促したい。

新型コロナウイルス, セーフティネット5号保証, 中小企業庁