高橋正人「6・23警察庁通達を読み解く」

2015.07.16 / 連載

【水曜】高橋正人のパチンコ運用リアル養成講座

[第57回]6・23文書の解読

既にご存じだと思うが、約3週間前になる「6月23日付」にて、警察庁生活安全局保安課長から、一枚の文書が発せられた。一枚と言うか、厳密に言えば「二枚の文書」になる訳で、再度その内容を検証しておこうと思う。

発せられた「2通の通知文書」
通知内容は【デジパチに関して一般入賞口に全く玉が入らないぱちんこ遊技機について(通知】と言う文書になるが、これには2通の書面があり、「警察庁丁保発第142号」と「同143号」の文書になる。共に「平成27年6月23日」に出された書面で、発しているのは「警察庁生活安全局保安課長」です。『何が違うのか?』と言うと、『誰に宛てた文書なのか?』の違いで、内容はほぼ同じものです。
同文書の「142号」は、「警視庁生活安全部長・各道府県(方面)本部長」宛で、「同143号」は「ホール5団体(参考として日工組)」となっている。
つまり、先ず「警察庁⇒各都道府県本部長」に通知を出して、その後「警察庁⇒ホール」に同様の内容を通知した事となる。

ホール向け通知文書内容に若干の違い
(以下、抜粋)「現在ぱちんこ遊技機市場の大半を占めるデジパチについては、大当たり抽選が作動する中央始動口のみを入賞させるよう、両脇その他の一般入賞口に玉が入らない仕様に改造するくぎ曲げ行為が懸念される状況になります。」と前置きされている。
引き続き、「現在市場に出回っているデジパチに関して一般入賞口に全く玉が入らないぱちんこ遊技機について、同遊技機を営業の用に供している場合いは、風俗営業等の規制及び業務の適正化法に関する法律(昭和23年法律第122号)第20条第1項違反となることを各都道府県警察に通知いたしましたので、(中略)そのような遊技機を営業の用に供することがないよう、各営業者に対する指導をお願いいたします。」と述べている。そして最後に、「なお、同違反に至らない場合であっても、くぎ曲げ行為はなおのこと不正改造事犯であることについて、誤解なきようよろしくお願いいたします。」と締めている。

さて、このホール宛の文書と警察への通知文書と、どのあたりが違うのか?以下に検証してみる。

都道府県警宛通知文書内容との差
(以下、異なる部分を抜粋)「現在市場出回るデジパチは、一般入賞口に十分間で合計数十個の玉が入る性能として検定を受けている」と再確認した上で、「改造により遊技性能が変更されたデジパチのうち、少なくとも一般入賞口に全く玉が入らない仕様に改造された遊技機については・・・」と前置きされ、続き「同遊技機を設置して営業を行う行為については、風俗営業等の規制及び業務の適正化法に関する法律(昭和23年法律第122号)第20条第1項に違反すると解される」と言い、続き最後に、「各都道府県警察にあっては、同遊技機の取り扱いについては適切に対処されたい」と締めている。

最後の『適切に対処されたい』と言う言い回しが、どのような意味を持つものなのか?私には解りかねるが、警察庁主導ではなく「各都道府県警察」の対処方針が移行している様にも感じ取れる。当然ながら「風営法とは、地域ごとに条例が異なり、または解釈が異なる場合もある」訳で、全国一律の価値観では無い事はご承知の通りであり、条例等を含めた上で法的にも当然の事である。

【風営法・第20条第1項】とは何か
問題は「ホール宛」の文書には書かれていない詳細が、「警察本部長宛て」には書かれている点である。ホール側としては、その法の詳細内容なんていちいち覚えてもいないし、『分からない・知らないのが普通なのに』である。そしてその違反詳細はこう書かれている。「風営法規則第9条ぱちんこ遊技機の項下欄六に規定する【獲得することができる遊技球の数のうち、役物の作動によるものの割合が著しく大きくなることがある性能を有する遊技機】及び同項下欄十に規定する【遊技の結果が偶然により決定されるおそれが著しい遊技機】に該当すると書かれている。

つまり、【役物割合】と【偶然性】に触れている訳である。コレで非常に内容が分かり易くなり、私的には内容が腑に落ちる。出来る事ならば、この文も『ホール宛の通知に書いてあればいいのに』と思うが、なぜか書かれていなかった。

いつも言っているが、勘違いやら、個人の思い込みやら、勝手な妄想やら、そんな評論家気取りはどうでもいい。今の混沌とした現状では、全てはオフィシャル文書、またはオフィシャル発言しか意味をなさないのが現実であり正しい情報になる。無論、水面下で行われている(であろう)交渉事等も重要ではあるが、『それは決定事項ではない』事を心しておかなければ、近未来への対応もまた『間違った決定になる』こととなるであろう。今は非常に重要な分岐点にあるパチンコ業界である事は、重々承知していると思うが、個人の勝手な予想は多くの失敗を招く可能性もある訳で、「必然であるようなガセネタ・噂話」には要注意であることを、強く申し上げておきたいと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

高橋正人

パチンコ業界歴30年の大ベテラン。ホールや機械について、すべてを知り尽くしたコンサルタント。現在、有限会社トータル・ノウ・コネクションズ代表取締役社長、株式会社エル・イー・オー代表取締役社長。

パチンコ運用リアル養成講座, 水曜, 警察庁生活安全局保安課, 高橋正人