林秀樹「ド底辺ホールの人材難はこうして防げ!」

2016.03.12 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト第60回
コンサルティングの現場より(48) 人材の定着は店長次第!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。「春は別れと出会いの季節」と言われます。時期的に卒業と入学があるのでそのように言われるのでしょう。さて、ド底辺の現場ではそういった季節柄とは無関係に頻繁にスタッフの入れ替わりがあります。一般スタッフならまだしも、役職者やそのポジションに近い人まで頻繁に入れ替わってしまうのがド底辺ホールの悩みです。今回は、なぜ、ド底辺ホールでは役職者の離職が多くなってしまうのかについて考えてみます。

ド底辺の現場でよく聞く声、それは、「人手が足りない」です。予算が少ないので人件費に多くを割くわけにはいかず、ホールが回るギリギリでスタッフの人数を設定します。そのうえで、足りない分を役職者の頑張りで補うといったかたちになり、どうしても役職者への負担が重くなります。こうしたことが引き金になり、給料に対する責任や仕事量の釣り合いが取れないことで辞めていく―。ほとんどの方は「役職者の離職が多いのは仕事量と給料のバランスに問題がある」と考えているのではないかと思います。

私の知るド底辺ホールではよく、「こんな給料じゃやっていられないですよ!」という嘆きの言葉を聞きます。そしてまた、「主任も班長も本当によくやってくれています。会社ももう少しこの辺りを見てやってほしいです」という労りの言葉もよく出てきます。

それではお聞きします。もしも今と同じ仕事量のまま給料がアップしたら、この状況は改善されると思いますか? 恐らくそんなことはないでしょう。一瞬やる気が出て改善されるように見えても、すぐに同じように不満が溜まって結局は辞めていくことになります。実は仕事に対する不満はお金では解決しないのです。このような間違った認識でいるからド底辺ホールでは役職者の定着率が悪い。ド底辺の現場で本当に必要なことは、「仕事に対するモチベーションを高めること」なのです。


1924年から1932年にかけて、アメリカ・シカゴのウェスタン・エレクトリック社という電話関連機器を製造する工場で「ホーソン実験」というものが行われました。この実験自体では、

・人は賃金、労働条件によって生産性、意欲が変化する
・賃金、労働条件が低いと生産性や意欲は減退し、高いと増進する

という仮説を実証するために行われたものでした。しかし結果は、

・ヒトは賃金、労働条件によって生産性、意欲は左右されない
・生産性や意欲は人間関係や個人の労働観に左右される

という、仮設とは真逆のことを実証する結果となったのです。また、劣悪な労働条件であってもその中のリーダー的存在の力量によって、むしろ労働生産性が上がることも確認できました。このことから、「賃金や労働条件が改善されても、働く意欲に変化は起こせない。もっと別のこと(対人関係や個人の労働観)が必要である」という結論が導き出されました。

人が仕事を辞めてしまうのは、突き詰めて考えれば「ここで働く意義が見えなくなったから」と言えます。決して給料などの労働条件が悪いからではないのです。むしろホーソン実験のように強力なリーダーシップを持つリーダーがいれば、少々の悪条件ならば逆に「よし、やってやろうじゃないか!」と気持ちを奮い立たせることもあります。

結局はスタッフにしろ役職者にしろ、辞めていくのはリーダー=店長の管理、手腕に問題があるということになります。「人材がなかなか定着しない」と嘆く前に、まずは店長自身の言動を見直すべきです。部下のやる気を引き出す、仕事に対するモチベーションを引き上げることに注力すれば役職者の離職は必ず減らせますよ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
同社ホームページはこちらをクリック

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エ ンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト, アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社, スタッフ, モチベーション, リーダー, 人材, 労働条件, 対人関係, 店長, 林秀樹, 管理, 賃金