【連載】日本進出を狙う海外カジノ~その3~

2014.07.28 / カジノ

【第3回】ラスベガス・サンズ

米ネバダ州ラスベガスに本拠を置くラスベガス・サンズは、今、世界で最も稼いでいるカジノ運営企業だ。実績や財務状況などを考慮すると日本でカジノの開発・運営を行う可能性が最も高い企業と目されている。ラスベガスでは、以前紹介したシーザーズやMGMに比べて施設数は少ないものの、いち早くアジアに軸足を移したことで大きな成功をおさめ、今では総収入の80%以上をマカオ、シンガポールの統合型リゾート(IR)から得ている。

ラスベガス・サンズはアジア展開による急成長に加えて、カジノのビジネスモデルに変革をもたらした企業としても有名だ。同社の会長シェルドン・アデルソンは、新聞の販売員から身を起こし、石鹸の行商、不動産、出版、金融などのビジネスを経験。その後、ラスベガスでコンピューター関連の展示会「COMDEX」が成功し、1989年に「サンズ・カジノ」を買収してカジノ業界に進出した。翌年には、世界最大のコンベンション施設のひとつ「サンズ・エキスポ・アンド・コンベンションセンター」を開業し、ショッピングモールや会議・展示会施設、アリーナなど、ギャンブル以外の機能を付加した「統合型リゾート」という新たなビジネスモデルの礎を構築した。その後、1999年に「ヴェネチアン」、2005年には「パラッツォ」を開業し、従来のカジノ客や家族向けのリゾートだけではなくビジネス客もターゲットとする高級宿泊施設を提供、ラスベガスを世界有数の国際会議・展示会の開催地へと変貌させた。

次にアジアに目を向けた同社は、この統合型リゾートのビジネスモデルをマカオやシンガポールへも移植した。マカオでは、巨大な統合型リゾートを建設する充分な土地が無かったため、マカオ半島南部のタイパ、コロアン両島の間を埋め立て「コタイストリップ」と呼ばれるIR集積地の造成に着手。2007年、同地に「ヴェネチアンマカオ」を開業したのを皮切りに、相次いで巨大なIRを建設しマカオ経済の成長に大きな役割を果たしている。一方、シンガポールでは2010年に日本でもおなじみとなった「マリーナベイ・サンズ」をオープン。シンガポールのランドマークとして多くの観光客、ビジネス客を集めている。5月末には安倍晋三首相がマリーナベイ・サンズを視察し、「IRは成長戦略の柱になる」と述べIRを推進する意欲を示したことが報道された。 シンガポールのIR開発に際しては、政府による開発運営権の最終選考を前出のMGMと争い、最終的にはMICE運営の実績を買われたサンズがライセンスを獲得している。

今後、日本では国会でのIRの法整備の行方と同時に、ラスベガス・サンズの動向にも大きな注目が集まることだろう。今年2月には、アデルソンがメディアのインタビューに対し日本事務所を開設し人材の採用も始めると発表。また、東京や大阪で約1兆円の投資を行うことを明らかにし、日本進出への意欲を改めて示したことが報じられている。

■主な運営施設

 [米国]ザ・ヴェネチアン/パラッツォ/サンズ・エキスポ・アンド・コンベンションセンター/サンズ・ベツレヘム

 [マカオ]サンズ・マカオ/ザ・ヴェネチアンマカオ/サンズ・コタイセントラルなど4軒

 [シンガポール]マリーナベイ・サンズ

■売上規模(2013年)/137億7000万米ドル(約1兆4015億円)

■営業利益(2013年)/34億0824万米ドル(約3468億円)

■従業員数/約48,500人

 

※写真は「サンズマカオ」開業10周年記念式典でのサンズ社幹部とマカオ政府関係者

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