【水曜】第107回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点

2016.05.17 / 連載

第107回 くぎ曲げ書類送検で思い出す、23年前のアレ〟

ゴールデンウィークの真っ只中、京都の某ホールが「くぎ曲げ」で書類送検されました。

真っ先に思い出したのは、23年前に起きた某機種の一件です。当時のデジパチは約20%で保留玉内での連続大当りが期待できる連チャン機が主流の時代でした。公に認められたものではなく、どの機種も隠し機能としてホールに設置された時だけ発動する、いわばトリックといえる機能。機種によってその方式はさまざまで、プログラマーの匠の技ともいえるものでした。

某機種は数ある連チャン機のなかでも特に強力な連チャン性で、トップクラスの人気を誇っていたのを覚えています。機能を発動させるために必要だった条件は「アタッカー内Vゾーンへの特定個数の連続入賞」。検査時にはVゾーンへ入りにくく、ホール設置時になるとVゾーンへ流れるように調整するという形で運用されていました。

このVゾーンへ流れるような調整が極端なくぎ曲げとしてメーカー関係者が逮捕される事件がありました。その第一報を筆者は旧知の業者からの電話で知ったのですが、本当に「パチンコが終わってしまうんじゃないか?」というくらいに驚いたものです。だってその頃のパチンコ人気は、公には認められていない連チャン機が支えているといっても過言ではありませんでしたからね。

そしてちょうどその頃、行政は脱税防止を目的にCR化を推し進めます。CR機には「確率変動」が認められることになりました。この影響で連チャン機の開発は事実上ストップし、一気にCR機時代へと突入します。連チャン機に対する態度の急変は、まったく進まないCR化を促すためだったという見方もあるくらいです。某機種はそのスケープゴートになったともいわれています。しかしこのくぎ曲げ事案で業界の流れが確実に大きく変わりました。それが1993年でした。

その時に比べれば、今回のくぎ曲げは思ったより影響は少ないように感じます。親しい店長に聞いても「しばらくは現状維持で静観」という声が多いです。でも昨年の一般入賞口検査から始まった性能が異なる可能性がある遊技機云々といった一連の問題がなかなか改善されないなか、これは行政側からの最終通告という可能性もあるのかなと。さらに広告宣伝規制といった行政からの指導も、特にこの入替自粛期間中はグレーだから大丈夫とでもいわんばかりのホールが目に付きます。その結果さらに事態が悪化する可能性があるとしたら、行政が今回の件でどういうメッセージを発しているのかをしっかり受け止める必要があるのではないでしょうか。

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パチンコ・パチスロライター 喜納臭蔵(きなくさぞう)

学生時代にパチンコ・パチスロの魅力に取りつかれて、はや30年以上。黎明期から始めたファン雑誌でのライター活動も20年を超え、このままずるずると続けるしかないなと(やっと)覚悟を決める。ファン側の立ち位置にこだわるが故に副収入は一切ないが、なけなしの財布から年1回のマカオ旅行も継続中。メールアドレス:kusazo@yahoo.co.jp

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