【水曜】第105回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点

2016.05.04 / 連載

第105回 新台は20割という時代もありました

前回からの流れというわけではありませんが、ちょっと古い話でも。

もう20年位前になりますか、4号機時代の初期から中頃くらいの時期、ライター稼業をしつつ、時々、販社の仕事をお手伝しておりました。主にパチスロメインの販社で、機械の設置やオープン立会いがあって、ゴールデンウィーク前や年末前の入替繁忙期は原稿仕事のピークと重なっ て、ヘロヘロになった思い出があります。

当時の入替作業といえば、設置を済ませて「ハイサイナラ」ではなく、設定なんかも販社側がやるのが当たり前でした。店長に目標割数を聞いてから打ち変えをしていたんですが、パチスロの開店時はオール6が基本。新台入替から回収するなんていう現代の営業スタイルは考えられない時代ですね。目標割数は初日なら20割(7枚交換の14割分岐)と指定されることがほとんど。初日は18時オープンなので最高設定を入れるだけでは届くはずもなく、モーニングも全台に仕込んでいました。

これが実に大変でして。新台は最低でも列(10台)、もしくはボックス(20台)で導入するのが普通だったので、用意したモーニング機だけでは足りず、手打ちでBIGが成立するまでひたすら打ち込み。リーチ目が出たらREGではないことを確認しなければなりませんが、疲れもあってか目押しをミスってしまい、BIGがそろって最初からやり直しなんてことも……。

そしてなんとか18時にオープンし、目標割数に達したからと21時くらいに早仕舞いしても、同じ作業を夜通し行い、全台終える頃には空が白んでくるなんてこともしょっちゅうでした。それでまた翌日は12時オープンの立会いがあり、さらに翌々日もと、トータル3日間くらいはホールに詰めていたものです。

そこまでして出そうとしていた大きな理由は、やはりお客さんに「この新台は面白いんですよ」という印象を与えるため(もちろん、出る店というホールのイメージアップも兼ねています)。少々ダメな機械だとしても、出玉さえあればなんとか許容できることって多くないですか? 入替直後はそんな機械に対する成功体験を植えつける機会であり、これがあったからこそ平常営業に戻ってもしっかり動き、結果、長く使えたのではないのかなと。

機種数が少なく、入替頻度も圧倒的に低かった時代背景を差し引いても、やはりこの機械で良い思いをしたという体験はファンにとってはとても大きい。そしてそれは過去も現代も未来も同じことが言えます。そのチャンスを与える運用をすることが機械寿命を延ばすためには欠かせないと思います。いきなり抜いてしまったら、成功体験が得られるのはたまたま事故った一握りのファンだけ。そういう使い方を一度もしないで「クソ台だ」と評価をするのはお門違いですよ。

前回と同じような結論にはなりますが、新台即回収しか知らないような若い店長は、新台20割時代を知っている方に話を聞いてみてはいかがでしょうか。入替即通路という光景を見るのは業界人としても忍びないですし、改めて昔のような新台入替の熱気をファンとして感じてみたいものです。

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パチンコ・パチスロライター 喜納臭蔵(きなくさぞう)

学生時代にパチンコ・ パチスロの魅力に取りつかれて、はや30年以上。黎明期から始めたファン雑誌でのライター活動も20年を超え、このままずるずると続けるしかないなと(やっと)覚悟を決める。ファン側の立ち位置にこだわるが故に副収入は一切ないが、なけなしの財布から年1回のマカオ旅行も継続中。メールアドレス:kusazo@yahoo.co.jp

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