MGM Resorts Bellagio,Circus Circus売却, 計50億ドル強~借入金削減, 日本ライセンスへ
2019.10.20 / カジノ【海外ニュース】
10月15日、MGM Resorts Internationalは、米国ラスベガスの施設であるBellagio, Circus Circus Las Vegasの売却に関する合意を発表した。
それぞれ同社のアセット・ライト戦略へのコミットメントに沿った動き。同社は株主から金融機関等からの借入金削減を強く要請されていた。
同社は、財務自由度向上を活用し、株主還元、および、成長領域である日本のIRライセンス取得、米国のスポーツベッティングに注力すると説明。
なお、今回の取引は、セールリースバックであり、取引完了後、バランスシート上に施設価値相応のリース資産・負債が計上される。ゆえに、バランスシート上の有利子負債が、大幅に減少することはない(通常、有利子負債には、リース負債を含める)。
二つの施設売却後、同社の所有施設は、完全所有であるMGM Grand(米国ラスベガス), MGM Springfield(米国マサチューセッツ州)、50%エクイティ所有であるCityCenter(米国ラスベガス)、68%経済持ち分であるMGM Growth Propertiesに帰属する施設群。
Bellagioの売却に関する合意:
・売却先は、Blackstone Real Estate Income Trustとの合弁会社
・セールリースバック
・売却対価:キャッシュ約42億ドル, 新合弁会社のエクイティ5%
・MGMが支払う年間レンタルフィー2.45億ドル
・取引完了:2019年4Q
<Bellagio施設概要>
・開業:1998年, 土地面積31ha, ホテル3,933室, 営業利益(2018年度)$405 million
Circus Circus Las Vegasの売却に関する合意:
・売却先は、Phil Ruffin氏(Treasure Islandのオーナー)
・セールリースバック
・売却対価:8.25億ドル(キャッシュ6.62億ドル, 2024年満期ノート1.62億ドル)
・取引完了:2019年4Q
<Circus Circus Las Vegas施設概要>
・開業:1968年, 土地面積41ha, ホテル3,764室, 営業利益(2018年度)$44 million
MGM Resorts 17年10月マンダレイベイ銃乱射事件が和解に~最大8億ドル, 保険がカバー
10月3日、MGM Resorts Internationalは、2017年10月1日のマンダレイベイ(米国ラスベガス)における銃乱射事件の被害者関係者で構成する原告との訴訟が和解に至ったと発表。
合計の和解金は、735百万ドルから800百万ドルの間となる見通し。和解プロセスは、2020年後半に完了する見通し。
和解金は、主に、MGM Resorts Internationalの保険がカバーする。MGM Resorts Internationaは、保険カバレッジ751百万ドルを有する。
MGM Resorts 19年度2Q 経常益1.6億ドル,YoY14%減~日本はオリックスと大阪ファースト
7月25日、MGM Resorts Internationalは、2019年度2Q業績を発表。
経常損益(営業利益から利払負担を控除)は、2Q(4-6月)は$156mn,YoY14%減, 2Q累計(4-6月)は$310mn,YoY17%減。
6月末のネット有利子負債は143億ドル。
増収要因は、新規施設群の貢献。新規施設とは、MGM Cotai(マカオ, 2018年2月13日開業), MGM Springfield(米国マサチューセッツ州, 2018年8月24日開業)、Empire City Casino(米国ニューヨーク州, 新規買収)。
なお、主力のラスベガスストリップは、ほぼ前年並み。
経常損益の減少要因は、新規施設群におけるコスト先行、初期損失の結果。
Jim Murren氏(Chairman & CEO)、今後の戦略について以下をコメント。
・MGM 2020におけるコストコントロールは予定通り。同計画は2020年に調整後EBITDAで36-39億ドルを狙う
・成長分野は、日本、スポーツベッティング、インタラクティブ
・日本については、オリックスとともに“Osaka First”戦略。大阪府市は、大都市で唯一、IR誘致を決定済み
MGM Resorts Internationalは、競争激化の結果、ROIC(投資回収率)が低い米国事業を中心するゆえ、損益分岐点が高く、負債依存度が高い。
マカオ事業は、ROICは高いが、2022年6月にカジノ・コンセッション満期を迎える。
2019年度2Q業績(4-6月):
・売上高$3,223mn,YoY13%増, 調整後EBITDAは$756mn,YoY9%増, 営業利益$371mn,YoY2%増, 株主帰属当期損益$43mn,YoY65%減
・経常損益(営業利益から利払負担を控除)は$156mn,YoY14%減(支払利息$216mn)
<地域別>
・Las Vegas Strip Resorts(米国)=売上高$1,466mn,YoY1%増, 調整後プロパティEBITDAは$418mn,YoY4%減
・Regional Operations(米国)=売上高$911mn,YoY29%増, 調整後プロパティEBITDAは$255mn,YoY34%増
・MGM China(マカオ, 56%所有)=売上高$706mn,YoY26%増, 調整後プロパティEBITDAは$171mn,YoY43%増
・Unconsolidated resorts(米国持分法対象, CityCenter-50%所有など)=調整後プロパティEBITDAは$28mn,YoY41%減
2019年度2Q累計業績(1-6月):
・売上高$6,400mn,YoY13%増, 調整後EBITDAは$1,496mn,YoY7%増, 営業利益$742mn,YoY3%増, 株主帰属当期利益$75mn,YoY78%減
・経常損益(営業利益から利払負担を控除)は$310mn,YoY17%減(支払利息$432mn)
<地域別>
・Las Vegas Strip Resorts(米国)=売上高$2,895mn,YoYフラット, 調整後プロパティEBITDAは$822mn,YoY7%減
・Regional Operations(米国)=売上高$1,715mn,YoY25%増, 調整後プロパティEBITDAは$462mn,YoY29%増
・MGM China(マカオ, 56%所有)=売上高$1,440mn,YoY24%増, 調整後プロパティEBITDAは$362mn,YoY33%減
・Unconsolidated resorts(米国持分法対象, CityCenter-50%所有など)=調整後プロパティEBITDAは$69mn,YoY14%減
2019年度2Q末(6月末)財務状況:
・ネット有利子負債$14,259mn(手元現金$1,161mn, 有利子負債$15,419mn)
MGM Resorts 2019年度2Qに1,000人雇用削減を実施へ~MGM 2020 Plan, 損益改善に
4月29日、MGM Resorts Internationalは、2019年度1Q業績発表において、現在進行四半期中(2Q)に1,000名強の雇用削減を実施することを明らかにした。
22日からの週に、254名の解雇が実行された。
同社が2019年1月に発表した”MGM 2020 Plan”に基づく施策の一環。
”MGM 2020 Plan”の主旨は、コスト削減、利益率の向上、米国事業の調整後EBITDA(年間)のUS$300mnの改善。
具体策は、1)組織改善と営業効率化、2)デジタルによる営業変革。
調整後EBITDA(年間)改善幅US$300mnのうち、2020年末までにUS$200mnを、2021年末までにUS$100mnを実現する計画。
”MGM 2020 Plan”は、2015年以降、実施されている”Profit Growth Plan”に追加する措置となる。
マカオ:政府,カジノ営業権満期に伴う再入札準備~21年実施予想も。日本営業に影響
5月11日、梁維特(Lionel Leong)・マカオ特別行政区経済財政庁長官は、記者団に対し、カジノ営業権(コンセッション)満期後の方針について言及。ポイントは、
・改めて、”更新(Renewal)”ではなく、”新規入札(New Public tender)”を実施する方針を強調
・政府は、現在、入札実施に向けた法的な準備を進めている(ゲーミング法および関連規制の改正など)
・入札、すなわち事業者選定では、マカオの観光レジャーセンター化への貢献、ノンゲーミング強化などに重点を置く
一方、5月に入り、マカオのゲーミング法専門家であるJorge Godinho氏(マカオ大学・法学部客員教授, リーガルコンサルタント)は、”新規入札”が2021年に実施されると予想。
背景には、4月19日に、崔世安(Fernando Chui Sai On)・マカオ特別行政区行政長官が、議会にて、再入札が現行コンセッション満期(2022年6月26日)前に実施されること、すなわち現行営業権の延長オプションを行使しない方針を明らかにしたことがある。
マカオのカジノ営業権の”新規入札”は、日本におけるIR区域整備計画の選定認定(国による都道府県等と事業者の決定)の時期と一致する可能性がある。その場合、マカオの現行カジノ営業権保有者は、その喪失リスクを抱えた中で、日本参入営業を展開せざるを得ない。
マカオでは、コンセッション保有者(または、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。
図表の通り、マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。
ゲーミング・コンセッションに関して、現行法、契約(政府-事業者間)が規定するポイントは以下の通り。
・現行コンセッション満期後、新規コンセッションは、フレッシュな入札プロセス(Public Tender)を通じて付与
(政府は、繰り返し、”更新”ではない点を強調)
・現行ゲーミング・コンセッションは、最大5年間の延長が可能
(2019年4月、政府は延長しない方針を表明)
・政府は、2017年より、現行ゲーミング・コンセッションを早期償還できる権利を持つ
(現在まで、政府は権利行使について言及なし)
・現行ゲーミング・コンセッション保有者は、それを喪失した場合、カジノ施設を、対価なしに、マカオ政府に移管する義務
(カジノ施設の喪失は、事業性の観点から、自動的に全施設の喪失を意味する)
2017年央、政府高官は、初めて、”新たな入札(New Tender)”という表現を用いた。その発言は、現コンセッション保有6事業者に激震を与えた。
それまで、政府関係者は、”更新(Renewal)”と表現し、6事業者はそこに満期後も現状維持のニュアンスを感じ取っていた。
政府が”新たな入札”と表現したことで、事業者再募集・選定、入れ替えのニュアンスを読み取ったわけだ。
図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション満期日
コンセッション満期日 | 事業者 | 証券取引所 | カジノ施設数 | 獲得順 |
---|---|---|---|---|
2022年6月26日 | SJM Holdings | 香港証券取引所 | 22 | 1 |
2022年6月26日 | Wynn Macau | 香港証券取引所 | 2 | 2 |
2022年6月26日 | Galaxy Entertainment | 香港証券取引所 | 6 | 3 |
2022年6月26日 | Sands China | 香港証券取引所 | 5 | 4(サブ) |
2022年6月26日 | MGM China | 香港証券取引所 | 2 | 5(サブ) |
2022年6月26日 | Melco Resorts & Entertainment | NASDAQ | 4 | 6(サブ) |
注1:カジノ施設数は2018年12月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得