総括! コロナ禍採用戦線!

2021.04.14 / ホール

年度が変わり、4月。新入社員が入社してくる季節を迎えた。振り返ると、新型コロナウイルスに振り回された2020年は、企業活動のすべてにおいてこれまでの前例が通用しない1年となった。そんな中、ニューノーマルに対応しつつ2021卒の入社までこぎ着けた、各社採用チームの奮闘を探っていく。


新型コロナウイルスと共存していく生活が始まって、1年以上が経過している。この期間を通して、我々の働き方や暮らし方は大きな変化を迫られることとなった。

どうしても営業部門への影響の方に注意が向いてしまうが、それ以外の部門でも、社会の変化に対応しつつ業務を進めていることに違いはない。

そこで今回はホール企業の採用チームに焦点を当て、この1年間の取り組みはどうだったのか、コロナ禍において何が問題となり、それをどう解決していったのかを探っていく。 北海道と東北で「パチンコひまわり」37店舗を展開する合田観光商事と、46都道府県に401店舗を展開する株式会社ダイナムが、小誌編集部の取材に応じてくれた。

 

 

 

応募者は例年と同水準に 緻密な関係性構築がカギ

「コロナ禍が起きる前までは例年通り、集合型の合同説明会に参加し、採用候補者となる学生の母集団を作っていました。コロナの後は、企業説明会や選考のプロセスをオンライン化する必要に迫られました。オンラインの環境を整備するにあたっては、会社のバックアップも得られましたので、大きな混乱はなくてすみました。それが1つの良かった点だったかな、と思います」

そう語るのは、株式会社合田観光商事で採用の実務に携わる佐々木渉氏だ。例年、新入社員を採用するには、2年ほどの時間をかけてプロセスを進めていく。そのため、2021年度卒の採用は、中間地点で突如コロナ禍に見舞われたということになる。

応募者の数、という面では最初は少し苦しかったという。やはり、集合型の説明会に参加できない状況では、リーチできる学生の幅広さには欠けるのだろう。

「母集団の作り方がこれまでとは違った分、選考に入る前に面談の機会を設けて、我々の強みだったり課題を説明して、その上で応募していただくようにしました。また、選考のプロセス中や、内定後〜入社までの期間にも、学生さんとなるべく多く、丁寧にコンタクトを取るようにしました。そのおかげか、最終的には例年と同水準の数が選考のプロセスに入ってくれて、ひょっとしたら例年以上に良い学生さんと出会えたかな、という感触もあります。もちろん、結果が分かるのはこれからですが」

採用チームの緻密なフォローが奏功し、オンライン禍という試練の中でも十分な採用活動が行えたようだ。

 

ニーズへの対応・効率化 メリットの多いオンライン選考

採用の過程がオンライン化することには意外にもメリットが多いのだという。面接がオンラインになったことで、これまでは出会えなかったような学校や地域からの応募も増えた。地元が北海道で、いまは他県で大学に通っているものの、就職は戻ってしたいというUターン希望者や、縁はなくとも土地としての北海道に魅力を感じここで働きたいという人もいる。そのようなニーズにも幅広く対応できるようになった。

拘束時間という面でも、オンラインの方に軍配があがる。合同企業説明会であれば6、7時間かかっていたものが1時間で完結する。オンライン化にネガティブな印象はない、と佐々木氏は語る。

「面接に関しても、最初は対面で会うのとは違う難しい部分があるのではないかと思いました。ただ、実際にオンライン面接を重ねていくにつれて、見極め方というのが整理されてきました。

例えば、オンライン面接では胸から頭までの限られた範囲しか見えないのですけど、逆に言えば、表情が近くで見えるということでもあります。

こちらから質問などをした時に、例えばその人が不安に思っているのか、あるいは共感してくれているのか、そういった表情の変化に気付きやすいんです」

また、最終面接を担当する内堀克彦氏もオンライン面接で見るポイントについて以下のように語った。

「やってみると意外とスムーズでしたね。学生さんもご自宅からだったり、人によってはセミナールームを借りたりなど、色々なシチュエーションで参加してくれるのですが、写っている映像の背景にも工夫が見られたりします。それで学生さんの人物像がみえてくるということもありますね」

 

新卒採用は「攻め」 変化に挑戦する人材を求める

航空業界など、コロナ禍で大きなダメージを受けた企業の中には、キャッシュフローの調整弁として新卒採用の中止を決断したところもある。このような状況下の新卒採用について内堀氏は考えを語る。

「会社というのは守りと攻めがバランス良くないといけません。採用や教育開発はそういう意味では『攻め』です。企業活性化の源泉ですし、ここがペースダウンしてしまうと、会社の勢いが途絶えてしまいます」

コロナ禍の1年を経て、今年入社する新入社員には、合田観光商事の求める人物像に加えて、変化に対応し、行動していける人材であることを求める。新入社員がそういったステップを踏んでいけるように、教育活動も行っていくという。合田観光商事採用チームの仕事は、切れ目なくこれからも続いていく。

 

 

不透明な状況下でもいち早く採用方針を固める

「2020年の序盤は、コロナの状況も不透明だったので、様子を伺うという意味で、採用活動そのものを一時止めてしまう企業も多かった印象があります。ダイナムでは、この不安定な状況下でもダイナムを目指してくれる意欲の高い優秀な学生を狙うため採用活動を続ける、という判断が早い段階で行われたのが良かった点かなと思います」

コロナ禍の1年を振り返って、株式会社ダイナムで採用を担当する並木康行氏はこう語った。

ダイナムでは、現在企業にほぼ必須となっているビデオ会議ツールZoomをコロナ禍以前のタイミングで導入しており、利用できるアカウントの数や社内での使い方の落とし込みなどがすでに済んでいた。そういった事情もあり、オンラインへの移行はスムーズだったという。

 

「回数」と「データ」をオンライン面接では活用

オンラインの面接にはメリットもあればデメリットもある。実際に対面で会うことによって得られる、リアリティーのある情報の重要さは否定できない。ダイナムでは、オンラインの画面上で無理にきめ細かな情報を得ようとするのではなく、オンラインならでは特性を生かしたやり方で採用プロセスを進めている。キーワードは「回数」と「データ」だ。

オンライン面接は、応募者にとっても採用担当者にとっても、手軽にできるという大きなメリットがある。1回の面接で得られる情報は、画角に収まる映像と音声、という限られたものかもしれないが、「手軽さ」を生かし回数を重ねることで、応募者についての情報を多角的につかむことができるのだ。

「面談を定期的に組むことで、ある日は、学校から参加していたたり、別の日は私服だったりと、異なるシチュエーションで話ができます。回数を重ねることで見えるものが増えていくんです」

また、面接の見極めではデータを重視する。ダイナムではWeb上で行う性格診断や適性検査の結果と、入社後のパフォーマンスや早期退職率などが紐づけられた、会社独自の信ぴょう性の高いデータを保有しており、それを選考で活用しているという。

オンライン面接では、応募者の細かな反応が確認しにくいのに加えて、面接での質問に対して「カンニング」ができてしまうなどの難点もある。しかし、それを真正面から解決しようとしてコストをかけることはしない。むしろ、メディアの特性上できないことに深入りはせず、データを信頼する。非常にロジカルな姿勢だと言えるだろう。

「ただ、学生との『信頼関係』はデータではどうしようもありません。内定が決まった方が、さて実際に入社してくれるかどうかというのには、この信頼関係が影響してきます。学生の理解を得るためにも、回数を重ねて面談を行っていく、というのが重要になっていきます」

 

新卒採用のニューノーマルは「厳しさもやりがいも倍」

若干、買い手市場化したと言われているコロナ禍の就活状況だが、「採用の難易度は上がった」と語る並木氏。メディアのバッシングの影響もあり、パチンコ業界に誤解を抱いている学生も多く見られるという。

「今の時期こそ、真摯な姿勢で学生さんに説明していくことが大事だと考えています。パチンコ業界への悪いイメージというのは多くが誤解です。イメージだけで離れていく人ももちろんいますが、そうでない方には、説明会や面談の場で、社風であったり企業理念、コロナ禍での会社の取り組みなどを事実に基づいて伝えていきます。そういった採用側の真摯な姿勢が決め手となって、入社を決めてくれた学生もいました」

すでにパチンコ業界のことを知っている、例えばパチンコユーザーであるような応募者に対しては、現在のパチンコ業界の現状を隠さず伝えた上で、ダイナムの明確な未来戦略を説明する。

「コロナ禍の新卒採用は大変です。毎日状況が変化して、なかなか見通しは立ちません。でも、この不透明な状況の中で、入社を決めてくれた方が活躍してくれたら嬉しいですよね。それを考えると、現状は厳しさとやりがいが両方とも倍になっているような状況でしょうか」

不安定な状況を切り開くことのできる人材を求めて。採用活動の重要性が改めて感じられた。

 

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