陽性者が発生したホールの声と対応〜安田屋〜

2020.08.21 / ホール

特集
〝不要不急〟にかき消された
レジャー産業の声

「ウィズコロナ」「新しい生活様式」といったスローガンの陰で、「集まった人々に楽しみを売る」レジャー産業は危機的な状況に置かれている。今後はターゲットにされる業種の真価が問われる期間になっていくだろう。現場の視点から、多角的に迫っていく。


陽性者が発生したホールの声と対応
〜安田屋〜


今決まっていることと、 自分が正しいと思うことを、やる

「従業員からPCR陽性反応」報告を受けたとき、従業員・遊技客と現場で接する店長は はたして何を考え、店長としてどのような仕事を果たしたのか。

 

店長、梅津佳法氏

 

2月28日、新型コロナウイルス感染拡大の報を受けて、安田屋では緊急対策本部を設置。3.11を契機に制度化していたものをコロナ感染対策用に改編を行い、マスクや消毒用アルコールなどの物資の備蓄に加え、情報の共有化も進めた。

しかし、新型コロナウイルスは目に見えない脅威であり、「どうしても」や「万が一」ということが実際にありうる。その後、7月5日に、大山1・2号店の従業員にPCR検査の陽性反応が出た。その難局に、現場はどう取り組んだのか。同店の店長を務める梅津佳法氏はこう語る。

 

お店・従業員・家族の不安をどうケアしていくか

「ガイドライン、ソーシャルディスタンス……、これまで対策をしてきて、自分たちの中では万全なんじゃないかと思っていました。そうしていた矢先に従業員が体調不良になって、陽性と聞いた時には、本心としては、『ここまでやってもダメなのか』ともどかしさを感じました。これからはコロナと共生していかなければならない社会『ウィズコロナ』なんだということを改めて実感しました」

店長を含め、店舗のすべての従業員は自宅待機となった。しかし店長には、会社と現場の店舗をつなぐ重要な仕事がある。

「お店の不安、従業員の不安、従業員の家族の不安をどう払拭するか、ですね。従業員にはダブルワークをしている方もいます。ではその相手先に今回の事態をどう伝えるか。自分も含めて、それぞれのプライベートがあります。それを知っていて、各自の事情に合ったきめ細かいケアをしなければならないと感じました」

自分の店舗に戻った1日目。これまで自宅待機だった従業員が、会社の対応に安心している様子を肌で感じ取った。「大変だったね」と労いあう雰囲気が流れているのを見て、梅津店長自身もほっと胸をなで下ろしたという。

 

 

決まりごとのない中で自分が第一人者になる

保健所とのやりとりも梅津店長が行った。実際に店内で働いていた従業員のうち、誰が濃厚接触者に当たるのか、遊技客との濃厚接触はあったのか、営業を再開しても良いのか、という問いに保健所ははっきりと回答してくれるわけではない。

「お店の客入に与える影響や風評というのはずっと頭にありました。どうにかしたいけれど、店長という立場ではどうにもできないこともあります。なので、まずは保健所と真摯にやりとりをしました。これまで会社として行ってきた対策を正確にお話しし、保健所単体では判断ができないところを詰めていきました。

従業員に感染者が出るという事態になったのは業界でも早い部類だったと思います。次の指針になるような対応をしなければいけないと思って、手探りの中なんですけど、その手探りがすこしでもスムーズにいくようなやりとりと情報共有。……かなり難しかったですね」

 

安田屋本社緊急対策本部主導の取り組みは各部屋の入り口に掲示され、厳守されている。

 

決まりごとのない中で、自分が第一人者にならなければならない仕事。もし、今後同じ立場になるかもしれない他の店長に、一言伝えるとすれば何か?という質問には、こう答えてくれた。

「今決まっていることと、自分が正しいと思っていることを自信を持ってやっていれば、そこまで不安になることはないと思います」

そう力強く述べたあと、梅津店長は「緊急対策本部といった、会社のバックアップもあった結果、うまく舵を取れたと思います」と付け加える。すると、同席していた安田屋営業本部長の柴田一憲氏が口を開いた。

「梅津店長は自宅待機で不安になっているスタッフのケアをよくやってくれました。全スタッフに直接連絡しながら、熱心に。これは、店長じゃないとできない仕事ですよね。本部の、顔の見えない人間がスタッフに電話をかけて根掘り葉掘り聞くと、尋問しているみたいでしょう。普段から接していて、たまには飲みに連れていって、そんな店長の言葉だから刺さるんです。いくら対策本部を立ち上げても、現場の店長がいなければ、それは空論なんです」

現場と本部がそれぞれにリスペクトし合い、お互いを補い合う関係を築いている。それが安田屋の危機管理の本質なのかもしれない。

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