誘致レース(727)静岡県=牧之原市 IR誘致断念の経緯と方針@市議会~県内候補ゼロ

2019.08.17 / カジノ
2019-08-17

【国内ニュース】

IR整備法は、区域認定数の上限を「3ヵ所」と法定。政府は、区域認定プロセスの2サイクル実施を検討へ。

2021年前後、政府は、第1サイクルの区域認定(自治体からの区域整備計画の申請受付、選定)を実施する見通し。

今後、都道府県等(都道府県、政令指定市)は、政府が策定する基本方針を見極め、事業者選定および区域整備計画策定のプロセスに入る。

IR整備法は、地方に配慮する観点から、区域認定数見直し時期を「最初の区域認定から7年経過後」とした。

静岡県

・静岡県内において、過去にIR誘致の動きがあった市町村は、静岡市、牧之原市、熱海市
・直近では、牧之原市のみ活動を継続
・国へのIR区域整備計画の認定申請主体は、静岡県。牧之原市は、立地市町村

牧之原市 IR誘致断念の経緯と方針@市議会~県内候補ゼロ

・8月16日、牧之原市の杉本基久雄・市長は市議会全員協議会にてIR誘致断念の状況と今後の方針を説明
<誘致断念の経緯>
・県との協議難航
1)IR調査の実施条件
~市は、県に対してIR調査への協力を求めてきた。県は、調査協力前に、市の地元合意証明を求めるスタンスを崩さず。県は、市民合意証明を得た時点で、IRの誘致検討を本格化(県への適合性、他市町の誘致意向、事業者の投資意向)する方針。市は、県の将来のIR誘致方針が決定しない中、地元合意証明作業の負担が重すぎると判断
2)県が想定するスケジュール
~市は、IR調査費を9月補正予算での計上を検討。その際、県にスケジュールを確認したところ、県は市が考える倍以上の期間を回答。市は、国へのIR区域整備計画の申請(市の想定は2023年秋)に間に合わないと判断
<今後の方針>
・現状、すなわち県が前向きでない状況下、IR誘致作業は実施しない
・将来(最初の区域認定から7年経過後を経て、区域認定数見直された場合、)も同様
・(IR候補地と考えた)大寄地区に、IR以外の企業誘致に取り組む

牧之原市 民間、事業者、市の動き 2018年後半~2019年3月

・2018年後半:牧之原市統合型リゾート事業者選定委員会(地元民間有志-青年会議所、商工会議所など)は、”昭徳リナルド株式会社”をIR事業者として選定
~”昭徳リナルドは、Get Nice Holdings(香港上場)の関連会社。Get Niceは、エンターテインメント ・金融サービス会社。マカオではホテル、スパ、モールなど運営

・地元民間有志、牧之原市IR誘致促進委員会を設立

・2018年11月:牧之原市IR誘致促進委員会は、市に対して、IR誘致を提案。昭徳リナルドの試算「年間来場者2,015万人, 年間カジノ施設売上高6,171億円」を含む

・2019年1月:市長がIR誘致検討を正式に表明

・2019年3月:市長が市議会・議員全員協議会にて、IR誘致検討方針を説明
~参加者より牧之原市IR誘致促進委員会は「大阪市が公表した予測と比較して過大」の反応(大阪市の基本構想案は、年間来場1,500万人, 売上高4,800億円)
~客観的なIR調査の必要性が指摘された

・2019年4月:牧之原市は、静岡県にIR調査への協力を要請
~統一地方選(前半)で静岡市長選が投開票。静岡市のIR誘致取り組みの可能性が消滅

 

静岡県=牧之原市 IR誘致断念。県と調整難航。県内候補ゼロ~SBS

・8月15日、静岡放送・静岡新聞は、牧之原市がIR誘致断念を決定したと報じた
・同日、杉本基久雄・市長および市幹部会議で決定。理由は、静岡県との協議の難航
・市は、県に対してIR基礎調査(国への申請作業への取り組みの判断材料)への協力を求めてきた。県側は、調査協力前に、地元合意の証明を求めるスタンスを崩さず。市は、県のIR誘致方針が明確でない中、地元合意証明作業の負担が重すぎると判断
・市によれば、県は市に対して国へのIR区域整備計画の申請に間に合わない時間軸を提示

牧之原市 地元同意の形成・証明作業に停滞感~静岡県まだ静観

・6月26日から8月7日に計10会場で、杉本基久雄・市長は「市民トーク」を開催
・テーマは、広く市政説明、地域の行政課題であり、IRへの取り組みも含まれる
・第1回の萩間会場のエリアは、IR候補地である大寄地区を含む。全1.5時間中、IRの扱いは10分のみ
・杉本市長は、萩間地区の理解をIR誘致の前提条件とする。地縁者の理解は確認済み
・一方、申請主体となる静岡県は、現在は静観。調査などアクションの条件として、市に対して地元同意の提示を求めるスタンス
・杉本市長は、何らかの手段で、萩間地区、あるいは、牧之原市の住民の理解・同意を、静岡県に対して証明・提示する必要がある(ただし、住民投票は否定)

牧之原市長「地縁者手続き完了」@市議会~県にIR提案へ

・6月17日、牧之原市の杉本基久雄・市長は、市議会6月定例会でIRについて以下を答弁
「地区協議会で説明し、その後、異議がないことを確認した。理解いただいたと思っている。必要な手続きは済ませた」
・牧之原市は、3月に、候補エリアの地区協議会で、各区役員15人ほどにIR誘致の考えを説明
・市は、適正な時期に静岡県に提案する考え
– まずは、県の申請の意思を確認。その後、市民、市議会と議論を重ね、適正な時期に県に提案
– (立地市町村としての同意について、)住民投票の実施は考えていない
・候補地の概要
– 大寄地区の国道473号バイパス沿いの約163ha
– 現在は遊休地で、企業誘致推進地区として地縁団体「大寄地区」が所有。1980年代にゴルフ場が計画されたが頓挫
・静岡県が国に認定・申請する際、牧之原市では行政同意が必要。牧之原市は、条例で市議会議決すべき事項にすることも可能

牧之原市 杉本市長 市民団体のIR質問状への回答「前向き検討。適正時期に県へ提案」

・5月10日、牧之原市、杉本基久雄・市長は、IR誘致に関する市民グループからの公開質問状への回答を公開
・市民グループは「牧之原みんなのくらしを学ぶ会」(中川松枝・代表)で、IR誘致には反対のスタンス
・牧之原市のIRへのスタンスは以下の通り
「(地元の)青年会議所、中小企業家同友会、商工会議所青年部など若い人々の提案であり、前向きに検討する」
「(今後について、)まずは、県の申請の意思を確認。その後、市民、市議会と議論を重ね、適正な時期に県に提案」
「(立地市町村としての同意について、)住民投票の実施は考えていない」
・静岡県が国に認定・申請する際、牧之原市では行政同意が必要。牧之原市は、条例で市議会議決すべき事項にすることも可能

静岡市長選の結果、市内への誘致は立ち消えに 牧之原市が唯一の候補立地市町村に

・4月7日、統一地方選(前半)で静岡市長選が投開票された
・静岡市長選:有権者数584,837, 投票率48.76%
当選=田辺信宏(無, 現, 57歳, 当選:2回, 推薦:自民, 元静岡県議会議員)138,454(49.6%)
   天野進吾(無, 新, 77歳, 旧静岡市長)107,407(38.5%)
   林克(無, 新, 63歳, 推薦:共産, 静岡県地方自治研究所事務局長)33,322(11.9%)
・天野進吾氏は、日本平IR誘致構想の中心者
・今回選挙結果を受けて、静岡市のIR誘致の可能性はほぼなくなった
・静岡県内のIR誘致の候補となる立地市町村は、牧之原市のみに

静岡市:市長選 天野候補(日本平IR構想の中心者)選挙戦前にIR姿勢トーンダウン

・3月20日、静岡市長選(24日告示、4月7日投開票)の立候補予定者3氏による公開討論会が開催された
・立候補予定者は、田辺信宏氏(57, 現職)、天野進吾氏(77, 静岡県議・自民党, 元旧静岡市長)、林克氏(63, 前労働団体議長)
・天野進吾氏は、日本平IR誘致構想の中心者。討論会で以下を発言
「清水港に新たな客船の計画がある。ゲンティン香港(クルーズ運営)が企画する新しい清水の時代へ勇気をもって歩もう」
「(持論の日本平IR誘致について、)30年後の市民が決めること」
・発言は、天野進吾氏が、市長選を前にIRへの姿勢をトーンダウンさせる可能性を示唆
・なお、2019年2月、川勝平太・静岡県知事は、日本平IR構想について以下を発言
「(日本平が、)IR立地の地域性にかない、適正であるか、十分に検証する必要」
「現在のところ、静岡市の主体的な取り組みはない。市の覚悟が問われる」
「静岡市が主体的に取り組む場合、県は市と一体で検討へ」

牧之原市 杉本市長 市議会 議員全員協議会 3,4月に市内合意形成, 県に事務要請

・3月8日、牧之原市は、市議会の議員全員協議会を開催。杉本基久雄・市長がIRの状況を説明
<杉本市長の説明>
・候補地の地権者の同意を獲得済み
・3月3日、大寄地区総会で説明し、地区長から誘致推進で同意を得た
・4月末までに複数回、市内や近隣市町で説明会や対話集会の場を設定
・3月中に静岡県に誘致意向を伝達する方向。県に夏までの誘致決定を要請
・候補地の概要
– 大寄地区の国道473号バイパス沿いの約163ha
– 現在は遊休地で、企業誘致推進地区として地縁団体「大寄地区」が所有。1980年代にゴルフ場が計画されたが頓挫
<議員、傍聴者とのコミュニケーション>
「市委員会の試算は、大阪市が公表した予測と比較しても過大」
– 市IR誘致促進委員会の試算は、年間来場2,000万人, 売上高6,000億円。大阪市の基本構想案は、年間来場1,500万人, 売上高4,800億円)
– 市長は、第三者による経済効果の精査が必要と対応
「市全体に及ぼす影響が大きく、誘致の当否について議決が必要」
「地区長の同意を地元の承認ととらえるのは違う。一段と慎重に進めるべき」

静岡市:日本平IR構想 県議会質疑~市長選如何で前進の可能性~市長選立候補の県議, 知事答弁引き出す

・2月26日、静岡県議会の一般質問でIRに関する答弁があった
・質問者は、天野進吾・県議(自民党)。日本平IR誘致構想の中心県議。静岡市長選に立候補予定
・川勝平太・知事は以下を答弁
「(日本平が、)IR立地の地域性にかない、適正であるか、十分に検証する必要」
「現在のところ、静岡市の主体的な取り組みはない。市の覚悟が問われる」
「静岡市が主体的に取り組む場合、県は市と一体で検討へ」
・天野進吾氏が、静岡市長選で当選すれば、日本平IR構想が前進へ

静岡市:静岡市長選(3月24日告示、4月7日投開票)3候補 日本平IR誘致の中心県議が立候補へ

・2月25日、静岡市長選(3月24日告示、4月7日投開票)の構図が決まった
・以下の3候補が立候補表明
-田辺信宏氏(無所属, 現職, 57)=自民党推薦。三選を目指す
-天野進吾氏(無所属, 静岡県議・自民党, 77)=元・静岡市長(合併前)
-林克氏(無所属・共産党市民団体が推薦, 63)=野党の推薦等を依頼
・天野氏は、現市政に批判的なグループの中心。また、県議会国際観光産業振興議員連盟の会長であり、日本平へのIR誘致グループの中心
「日本平の眺望を生かしたIRは静岡復活の切り札」であり、県や市に働き掛けを継続

牧之原市:杉本市長 IR誘致表明~県内初。事務主体の県と今後調整

・1月31日、静岡県牧之原市の杉本基久雄・市長は、定例会見にて、IR誘致を表明。県内初の表明となった
・候補地は、東名高速道・相良牧之原インターチェンジから駿河湾に向う国道473号バイパス沿い。敷地面積は数十ha
・牧之原市へのIR区域整備計画の策定および政府への認定申請の事務は、静岡県となる
・牧之原市は、2-3月にかけて、候補地住民に対する説明会を開催。市議会の賛同を得て、3月中に県に正式に事務作業を要請
・市としては、2019年度予算案において、IR関連費用を計上しない方針
・杉本基久雄・市長の発言は以下の通り
「IR提案の具体化に向けた検討・取り組みを前向きに進めていきたい」
「今後の人口減社会に向けたにぎわい創出の絶好の機会と考えている」
「(牧之原市は、)IR誘致に対する高い潜在能力を持つ」
「御前崎港、静岡空港、東名高速と社会基盤が揃う。地価が安い、自然環境が豊か、富士山が見えるなども強み」
「新幹線新駅の整備のきっかけにもなる」
「カジノは施設全体の3%以下。治安、風紀上の対策は必要とは思うが、それを理由に誘致を拒むものではない」
・牧之原市では、青年会議所や商工会など有志によるIR誘致促進委員会が、2018年11月に市にIR誘致要望書を提出

静岡市:静岡県 川勝平太・知事 静岡市・日本平IR構想「検討すべき時期。だし、地元要求が前提」

・1月4日、中日新聞は、静岡市清水区の日本平へのIR誘致の動きをレポート。ポイントは、
-静岡県は、第二弾での開業を見据える
-県幹部は、Genting Group(マレーシア)と連携して、IR誘致に手を挙げる可能性を認めた
-Genting担当者は「IRのコメントは控える。清水港のインフラや静岡の観光風景は大変な可能性とチャンスを秘めている」
・同日、川勝平太・知事は年頭会見にて、上記報道に対してコメント
「(観光への効果を考慮し、)検討すべき時期に入った」
「ただし、カジノを不安視する声もあることから、地元の要求がないと進められない」

静岡市:静岡県 川勝平太・知事 日本平IR構想に理解「地元望むなら十分に考えるに値」

・2017年3月3日、県議会2月定例会の一般質問最終日にて、川勝平太・知事がIR誘致について言及
・自民党議員による一般質問に答弁
・川勝平太・知事 答弁~静岡市清水区の日本平IR構想に対して
「地元が望むなら十分に考えるに値する」
「日本平は、本件や国の文化を象徴するエリアになることが地域性に最もかなう」

静岡県 川勝平太・知事 2016年12月IR推進法の成立時 熱海市は許容。日本平は明確に否定

・2016年12月、静岡県の川勝平太・知事は、IR推進法の成立を受けて以下を発言
・県内の誘致に前向きではないものの、熱海市は許容のスタンス。静岡市・日本平は明確に否定
・県内の誘致について
「静岡県にカジノは似合わない」
・熱海市について
「あえて適地を探せば、海の向こうである熱海市の初島。その可能性までは否定しない」
「熱海市がどう動くか注目したい。住民の意向を踏まえ、考える余地はある」
「収益金の一部が初島の公共のために生かされるのであれば、案外話が弾むかもしれない」
・静岡市の日本平について
「日本平は、景観を維持すべき風致地区。向いていないのではないか」
「日本平は明確に反対だ」

静岡県内IR誘致の動き~熱海市は市長が誘致否定。静岡市・日本平は県議連が推進役

・静岡県内には、静岡市・日本平、牧之原市、熱海市にIR誘致の構想がある
・静岡県の日本平
-県議会国際観光産業振興議員連盟(会長:天野進吾・県議)が推進役
-「日本平の眺望を生かしたIRは静岡復活の切り札」であり、県や市に働き掛けていく方針
・牧之原市
-2019年1月31日、静岡県牧之原市の杉本基久雄・市長は、定例会見にて、IR誘致を表明。県内初の表明
-候補地は、東名高速道・相良牧之原インターチェンジから駿河湾に向う国道473号バイパス沿い。敷地面積は数十ha
・熱海市
-2016年12月26日に斎藤栄・市長が「在任中はカジノ誘致に手を挙げるつもりはない」と明言
-「熱海・カジノ誘致協議会(現熱海・IR誘致協議会)」への補助金は、2002年度から継続してきたが、2017年度から打ち切る方針を決定
(補助金は、旅費・や調査などを目的とし、年間30-50万円であった)
 

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