年末年始を「利益確保の機会」と捉えるのは近視眼的

2018.12.15 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(192) 年末年始営業

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。先週末には今年最後の年金支給もあり、いよいよここから稼働が回復してくる時期に入ります。

年末年始期間は「年に3回の特別な期間」です。そこで今回は「年末年始期間の営業の方向性」についてお伝えします。

年末年始、過去には絶対に利益の確保が求められる時期でした。考え方としては、
・年末年始は帰省客など普段とは違うお客様が多く来店されるため
・稼働が高いので空き台を用意するため
などの理由です。また近年は、テーマパーク等と同じ考え方での、
・閑散期と繁忙期とで価格差を付ける営業
という理由付けも挙げられています。どの考え方にしろ「年末年始は利益を通常よりも多く確保する(利益率を上げる)」ことを志向しています。

これらの考え方はすべて「客数が増える」ことを前提としています。しかも通常の週末(休日)よりも多くなるという前提です。

しかし遊技機の魅力が低下した現在では、あまりにも利益重視の営業を志向するのは、その後の稼働維持に黄色信号が灯ります。なぜなら過去ほど客数は増えず、満席に近い営業にはならない時代であり、その後の手当てで新台入替をしても戻りにくいからです。

ただ、年末年始はやはり利益を求めるべき時期です。だからこそ、その利益確保をこれまでとは違う手法、考え方で進めることが必要な時代になっています。
その手法、考え方とは、
・稼働が伸びる分、利益が増える
と捉えるのです。具体的には「いつもと同じ利益率(or玉粗利)としたメンテナンス」での営業です。

例えば通常の週末営業で「アウト8,000発 玉単価1.50円、利益率20%」の場合の各数値は、
・台売上 8,000発×1.50円=12,000円
・台粗利 12,000円×20%=2,400円
・玉粗利 2,400円÷8,000発=0.30円(1.50円×20%)
となり、年末年始は稼働が1.2倍になるとすると各種数値は、
・台売上 8,000発×1.2倍×1.50円=14,400円
・台粗利 14,400円×20%=2,880円
・玉粗利 2,880円÷9,600発=0.30円(1.50円×20%)
となり利益率、玉粗利が変わらずとも利益が増えることがわかります。

年末年始に高利益営業をするのはここ最近特に顕著な「平常の営業で取り切れないから」という理由が多いです。この場合、年末年始という“機会”を「利益確保の機会」と捉えているのですが、逆に年末年始という“機会”を「稼働向上の機会」と捉える営業にすることによって、年末年始を「特別期間」として短い期間を見るのではなくもっと先を見た「線でつなげる営業」にすることができます。

平常営業、特に平日の稼働がかなり厳しくなっている現状だからこそ、この先を見た営業を志向することが必要です。今年の年末年始は「この先の稼働のため」の営業を志向してほしいと思います。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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