【水曜】第18回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点

2014.09.03 / 連載

木の床、ワックスの匂い

パチスロの規制で大騒ぎになってますが、それについてはまたいずれ。伝聞ではなく、ちゃんと当事者から話を聞いた上であれこれ書いてみたいですから。とはいえ、個人的には今回の規制がパチスロらしさを取り戻すきっかけになってくれるんじゃないかなと前向きに考えています。さて今回は、先日 北関東へと取材に行った時のことを書きたいと思います。

東北道を出て取材先の某ホールと向かう道すがら、まるで20年前にタイムスリップしたかのような外観をしたホールを発見しました。派手だけどなん となくチープな雰囲気がするネオンサイン、どこか宮殿をイメージしたような建物、外に並んだ新装開店の花輪、そしてそれらが全て薄汚れた感じに なっている。かつての街道沿いには、こんなホールが並んでいたもんです。でもいつからか、きっとホールの店員さんが作り笑顔で接客するようになっ てから、シンプルなデザインの建物に何の関連性があるのか分からない笑顔の外人さんがラッピングされた「これって何屋?」といったホールばかりになりました。ギラギラとしたネオンに代わって、お洒落なデジタルサイネージのみがパチンコ屋であることをアピールする感じでしょうか。

建築や店舗デザインにも流行というものがあり、今はそんな落ち着いたものが主流なんでしょう。でも根っからのパチバカにとっては、誘蛾灯に吸い込まれるような羽虫のように、やっぱりギラギラとした、それでいてパチンコのパの字が切れているようなネオンが大好きなんです。これはきっと店内もマニア的に期待できるのではと思い、取材後に立ち寄ることにしました。

一部のドアが壊れていたりして余計に期待が膨らみましたが、機種構成はいたって普通。ただ微妙に古い機械が多く、また整備中の台がやけに目立つくらいで、最新台もばっちり導入されていてちょっと肩透かし。でも外観同様、店内も機械を除けば20年前のまま。なにより木の床っていうのが、実に高ポイントです。昔は平気でツバを履いたりタバコを踏み潰したりしてました が、そんなカーペットにはない寛容さが実に素敵であります。もちろん今はそんなマナーが悪いことはしませんが、マナーなんていうのは時代によって 変わるもの。昔はバスの中でも喫煙できたように、ホールの木の床はタチが悪い客の悪癖を優しく受け入れてくれたんです。

昔に戻ることを全て良しとはしませんが、それぞれの場にはふわさしい雰囲気というもが少なからず必要だと思います。あえて最近はそんな場の雰囲 気を払拭しようとしているんだと思いますが、頑張り過ぎて乖離するのはどうなのかなと思うのです。とりあえず久しぶりに昔の雰囲気を楽しめただけでも、筆者 は大満足でありました。回らない台にせっせとつぎ込みましたが、それはワックスの匂いがほのかに香る店内の空気を楽しんだ代償ということで。

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パチンコ・パチスロライター 喜納臭蔵

学生時代にパチンコ・パチスロの 魅力に 取り付かれて、はや30年以 上。黎明期から始めたファン雑誌でのライター活動も20年を超え、このままずるず ると続けるしかないなと(やっと)覚悟を決める。ファン側の立ち位置にこだわるが故に副収入は一切ないが、なけなしの財布から年1回のマカオ旅行も継続 中。メールアドレス:kusazo@yahoo.co.jp

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