3人の部下が相対的な競争をした場合こうなる

2019.01.19 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(197) 健全な競争環境をつくる

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。年始営業もひと段落して、ここからは例年厳しい稼働となる時期です。入替をしても思うように稼働が伸びず現状維持が精一杯であり、しばらくは我慢の時期だと思います。

こういった我慢の時期には攻めの戦略=お客様への訴求よりも、守りの戦略=自店内部の強化を図る方が賢明です。そしてその守りの戦略のひとつに「ヒトという経営資源の強化」も含まれます。

「ヒトという経営資源の強化」としては、店長としてまずは直属の部下の育成、教育を考えることでしょう。しかしその教育の進め方によっては効果が出ないことがあることに注意です。

あるお店での話です。このお店には店長の下に副店長という役職がおらず、主任3人体制で営業していました。店長としては「3人を競わせてレベルアップを促す」という考えだったようです。比較的若い3人なのでやる気も見え、一生懸命に動いていました。

ところがこの3人、ライバルとなる他の主任に対する批判が目立つようになりました。自分の行動を強調し「いかに他の2人よりも頑張っているか」をアピールするばかりなのです。これではヒトのレベルアップというよりは足の引っ張り合いで逆にレベルダウンにつながってしまいます。

「絶対比較」と「相対比較」いう言葉があります。「絶対比較」とは基準となるものをベースに比較をし、「相対比較」というのは基準があるのではなく全体の中で順位付けをすることです。たとえば100点満点の試験で合格、不合格のラインが、「60点以上を合格とする」とした場合は、60点という基準を超えたら何人でも合格なので絶対の基準による比較(絶対比較)となり、「上位20%を合格とする」とした場合はたとえ40点であっても相対的に上位20%なら合格なので相対比較となります。

今回の3人の主任、まさに相対比較に精を出してしまっています。本来「競争」というのは、お互いが自分自身のレベルをアップしていくことで全体のレベルが上がっていくことを志向しているはずですが、ここでもしも対象者が相対比較に目を向けてしまうと、どうしても自分のレベルアップよりも他人の足を引っ張ることで相対的に上回るほうに力を入れてしまいがちになります。なぜならそのほうが“楽”だからです(自分の能力を伸ばすよりも他者を下げる方がはるかに楽で、早いからです)。

「明確な判断基準があるのか、ないのか」は非常に重要です。有力チェーン店などでは昇進昇格には明確な基準ややるべきことがはっきりしています。逆に中小ホールでは昇進昇格が情実(能力ではなく心情で判断すること)であったり対象者同士での相対的な比較であったりということが多く見られます(「A君とB君なら、A君の方が~」といった評価)。

「競争」は相対比較で行うものではないです。「これをできるように~」、「意見をまとめる力を~」、「分析をしてみろ~」など明確な課題を示し、「できるのか、できないのか」で判断することで部下のレベルアップが図られます。ヒトの成長、お店の強化が図れるかは、その評価者の教育の進め方にかかっています。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
同社ホームページはこちらをクリック

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト, アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社, ヒト, 林秀樹, 経営資源