【日曜】藤崎敏郎「浅薄な思い込みが無知をつくる」

2014.11.02 / 連載

藤崎敏郎の人材育成セミナー第17回

「『知っている』『分かっている』と人の話しを切り捨てるな!」

研修や講演で話をすると、「知っている」「分かっている」という人がいます。人は、この「知っている」「分かっている」という自分の思い込みで、どれだけたくさんのことに気づく機会をなくしてきたのでしょうか。

ほとんどの人は、「知っている」「分かっている」という基準で、人の話を聞くか聞かないかを判断する習慣を持っています。たくさんの情報があふれている現代人の特性かもしれません。しかし、「知っている」「分かっている」と、言う人ほど知っていなくて、分かっていないものです。この習慣をなくして、素直に話を聞いて行動してみると、新たに見える世界があるものです。今、どうして学ぶ機会があるのか考えてみると、それは、必要とされているだと、ハッと気づことができるかもしれません。

有名な話があります。中村天風はガリアッパ師に「満杯になった頭の中のコップの水を捨てるように」と言われたそうです。満杯だと入らないからです。中村天風とは、昭和の政治家、経営者に大きな影響を与えた人です。彼は若いころに大病を患いました。余命いくばくもないとの診断を受けました。日本中の名医に診てもらってもよくなりません。海外の名医に診てもらいましたが、それでもよくなりません。船旅で偶然にインドのヨガの指導者のガリアッパ師に出会い、一緒にインドに向かうことになりました。結果的にインドでの精神的、肉体的な修行のおかげで奇跡的な回復を果たしました。その修行の過程でのことです。ガリアッパ師の元に就いて、早速修行が始まるものと思いきや、待てども待てども、指導してくれる気配がありません。思い余って、天風はガリアッパ師に「どうして指導をしてくださらないのですか」と詰め寄ります。ガリアッパ師の答えは、「おまえの頭の中は、いろんなことがいっぱい詰まっている。水で一杯に満たされたコップに、どうしてそれ以上に水をそそぐことができようか」というものでした。師の言葉にハッとした天風は、頭の中の余計なものを捨て、その後、師の指導を得ることができました。

何かを学ぼうとするとき、まっさらな頭や心で、先生の声に耳を傾けると、どんどん吸収できます。なかなか頭に入って来ないという場合は、頭の中のたくさんの知識や固まった観念などを捨ててみることです。すると、空っぽの頭の中に受け入れる余地ができてきます。それはまた、素直になる、謙虚になるということなのです。

今回の格言は、

「学ぶときには、『知っている』『分かっている』を捨てよう!」

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株式会社パートナーズリンク社長 藤崎敏郎

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元セブン&アイグループの本社スタッフ。その後パチンコチェーン店に入社。機械担当部長、営業部長として勤務する。その後、人事コンサルタントとし て独立。社員研修と人事コンサルティングで日本各地を飛び回っている。これまでに教えた受講者は10万人以上。業界誌にも複数連載し、ナンバー1人事コン サルタントと言われている。取得資格:キャリアコンサルタント、販売士1級、社労士、米国NLPマスタープラクショナルコース終了、トレーナーコーチ、メ ンタルヘルスマネジメント2級

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