重労働や低賃金を理由に辞める人は少ない。多くの人は働く意義が見つからない(林秀樹)

2019.12.27 / 連載

【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(245) 辞めさせないために考えること

 

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。年末営業に入りましたね。例年、秋から12月の半ばまでは厳しい稼働が続きますがこれからは稼働もよくなっていく時期となります。

そうした中、稼働が良くなると人手不足が問題となっているお店も多くあります。そこで今回はスタッフの定着を考える上での「モチベーションを高めるスタッフ教育」について簡単にまとめてみました。

 

人財不足は資金不足と並ぶ大きな悩みごとであり、「いかに既存のスタッフを成長させるか」がポイントなのはもちろん、「いかに辞めさせないか」も重要な管理点となります。人がなぜ会社を辞めるか、その理由を間違えていてはスタッフの定着は図れないです。

 

「安い給料でこんなつらい仕事なんてしていられない」

これはよく耳にするフレーズであり、ごく自然な理屈に聞こえますが、人が仕事に向ける気持ちはそんなに単純なものではないです。多くのパチンコ店では人手不足ということもありいつも少ない人数で仕事をすることになるので、「辞めようとするのは仕事量が給与に見合わないと思われているからなので、給与を引き上げれば続けるはず。」という図式で考える会社もあります。しかしそれでは足りない要素があります。

 

業務の効率化について調査をした人物に心理学者のエルトン・メイヨーがいます。メイヨーは「従業員の気持ちにアプローチすることで仕事の効率が上がる」ということを発見した人物として知られています。

アメリカのGE社での実験では、職場の生産性に大きな影響を与えるのは環境や報酬ではなく「人間的、社会的なもの」であるということに気付き、これを立証しました。

 

当初この実験は以下の仮説を立証するために行われました。

・人の生産性や意欲は賃金、労働条件によって変化する

・賃金、労働条件が低いと生産性や意欲は減退し、高いと増進する

ところが、実験結果は仮説とは真逆のものでした。従業員の生産性や意欲は賃金や労働条件に影響されるのではなく、むしろ人間関係や個人の労働観に大きく影響されていたのです。これをお店の現場に当てはめると、重労働や低賃金を理由に辞める人は少なく、多くは「働く意義」が見つからなくなるために職を辞すると考えられます。

 

メイヨーは働く人のモチベーションが職場を監督する人間の言動次第で大きく変わることも明らかにしました。職場で次のようなメリットを感じることができたら、働く人の意欲は大きく高まります。

・従業員自身が職場の環境や生産目標の設定に参加できる

・従業員同士がコミュニケーションを取りながら和気あいあいと作業できる

・監督する人が不満や愚痴などの話を聞いてくれる

この条件に当てはまるような改善を考えるとするならば、

・スタッフの採用に主任や班長の意見を取り入れる

・定期的にスタッフの懇親会を開く

・店長がこまめにスタッフと話をする機会を作り、個人的な悩みや愚痴なども聞き取る

などとなるでしょう。これら3つの対応が定着することで離職は減少し、今までと同じ人員でも人手不足の影響を感じる程度が軽減します。

 

行動には必ず理論的な根拠を求めて、論理的に進めることが必要です。「モチベーション管理も、論理的に」です。

 

 

 

 

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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