設定付パチンコから学ぶ「マーケットイン」

2018.09.08 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(178) 売りたいモノ、買いたいモノ

皆さんこんにちは、アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。設定付きのパチンコ遊技機が登場して3週間が経過しました。現時点では4機種が市場で稼働していますが、そのどれもが、
・設定①~⑤(もしくは最高設定以外)は確率、出玉率に大差はない
・設定⑥(または最高設定)だけが突出して別格の仕様
となっています。

遊技機の管理をこれまでのスタートなどの数値ではなく設定で行うことを意図しているのだと思いますが、実際に設定を日々変更しているお店はどのくらいあるでしょうか。平均の設置台数が3台程度でほとんどのお店はバラエティでの設置であることを考えると、やはりスタート管理が主で設定はあまり変更しないものと思われ、「設定付き」という新しい機能が役に立っている、受け売れられているとは言い難いのが現状です。

さて冒頭でなぜこのような話をしたかというと、今回の新基準機に業界関係者は少なからぬ「何かが変わるかも」という期待を持っていたからです。しかしここまでの結果はというと、
・稼働推移はここ最近の新機種と同じような下降傾向
・設定付きではあっても活用がされず
ということで、業界関係者の期待とは裏腹に現場もお客様もそれほど「変化」はしていません。

確かにここまでの4機種は、そのどれもが既存発売機種のバージョン機ばかりであり、純粋な「新台」ではなかったことで新鮮味がなかったことも盛り上がりの欠けている要因の一つです。しかし、そもそも今回の「設定付きパチンコ」という製品は、果たしてお客様(市場)の要求、欲求からのものだったか、と考えるべきです。もちろん答えは「否」です。

マーケティングの考え方に「プロダクトアウト」と「マーケットイン」というものがあります。
※プロダクトアウト・・・「製品押し出し」の意で、販売側が売りたいモノを売る考え方
※マーケットイン・・・「市場取り込み」の意で、顧客が欲しいモノを売る考え方
市場の需給関係が「需要>供給」の場合はプロダクトアウト的考え方でどんどん売れますが、「需要<供給」ではいくら押し出し的に売っても、そもそもの需要が少ないので買ってもらえません。今回の設定付きパチンコには市場ニーズがなかったのです。

このこと(プロダクトアウトではなくマーケットインで考える)は、すべての営業努力の面で活用してほしいことです。
「このサービスは、果たしてお客様が求めていることなのか」
「この設備は、果たしてお客様が求めていることなのか」
「この取り組みは、果たしてお客様が求めていることなのか」
などなど、すべての面で考えるべきことです。一生懸命努力しても、その方向性がずれていたら絶対に目指す結果は得られないです。

「売りたいモノではなく、買いたいモノ」を提供する、「したいことをするのではなく、してほしいことをする」で、すべての営業努力をしてください。


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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