林秀樹「Whyド底辺ピーポー!理想より現実見て!」

2016.02.06 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト第55回
コンサルティングの現場より(43) 「すべきこと」と「したいこと」、そして「できること」

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。今週から2月に入りましたが、相変わらず業績に手応えを感じない日々が続いています。入替をはじめ広告宣伝や販促の見直しなどでこれまでやってきたやり方を継続していくのか、もしくは変更してイメージを変えてみるのか、いろいろ考えて実施しているにもかかわらず。。。とにかく先が見えない混沌とした状況に気持ちも沈みがちです。個々の施策については立地や置かれた状況で「正しいこと」は変わるのでここでは述べませんが、今回はこういった「どうすればいいのか、訳が分からない状況に陥っている」ときに考えてほしいことを伝えします。

・should
・would
・could

こういった3つの言葉があります。これらを意訳すると、

・should → 義務(〇〇すべき~)
・would → 希望(〇〇でありたい~)
・could → 可能(〇〇ができる~)

となります。さてみなさんはこれら3つのうち、どの考え方に沿って日々仕事をしていますか? この質問をすると大多数はshouldと答えます。「お客様の欲求に応えるべき。自分の希望(would)や可能な範囲(could)を優先してもニーズには対応できない」という考え方であり、要は、

・お客様のニーズをくみ取る、それがマーケティングである。
・プロダクトアウトではなく、マーケットインが正しい。

というもっともらしい意見です。これらは正論・王道であり、その通りにできるならまず間違いなく業績も回復するでしょう。でもこれらの前提条件を忘れていませんか? 前提条件は「お客様の欲求・ニーズを把握したうえで」なのです。

そして大多数はこの「お客様の欲求・ニーズ」を把握しきれていません。把握できないからこそ様々な施策を行いその中で効果のあるなしを見る必要があるので、shouldを志向できるのは王道を実践できるだけの経営資源を持つ「強者」の戦略なのです。ド底辺ホールは足元を見つめなおして「我々はお客様のニーズなどわからないし、探ることもできない」から考えるべきなのです。

そうなるとwouldなのかcouldなのか、となります。結論から言うとcouldから思考をスタートさせるべきです。弱者であるド底辺ホールは仮にニーズを探し当てたとしても、それに対応できるだけの経営資源があるとは限りません。例えば貯玉システムが顧客ニーズだったとしましょう。現状で自社がそのシステムに対応していなければ導入には1000万レベルの資金が必要になります。できないことをいくら考えてもできないものはできないのです。だからこそ、「自分にできることは何なのか?」から考えるのです。

実は今回挙げた3つの言葉は「ブランドを決定づける3要素」と呼ばれています。

・should=社会の期待
・would= 経営者、社員の意識
・could=企業の強み、企業らしさ

ということで、社会の期待に応えることでブランド力を上げる、会社の意識を高めることでブランド力を上げる、会社の強みを伸ばすことで差別化を図りブランド力を上げる、とされています。ところがこのうち社会の期待に応えるにはそれなりの資本がいります。また、意識改革はshouldcouldを進めるうちに高まるものです。だからこそ、資本力のないド底辺ホールはcouldをまず考えるべきなのです。

「弱者の戦略は、強みを生かすこと」。shouldを優先させられるのは強豪だけです。「あるべき論=こうすべき~、こうしなければいけない~」など、さも顧客ニーズに応えることが業績向上につながるように考えがちですが、ド底辺ホールはそもそもニーズに対応しきれないことを肝に銘じてください。だからこそ、まずは「できること」を考えなければいけないのです。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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