林秀樹「稼働減につれて高年齢層が増えるド底辺ホールの謎」

2016.02.20 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト第57回
コンサルティングの現場より(45) 「高年齢層向けのお店を志向する」とは

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。

2月は年金支給月でもあり、15日以降はほんの少しだけ稼働、売上が回復したように感じます。以前は年金支給に期待をしつつも実際にはそれほど影響もなく、「年金が出ようがあまり関係がない~」などといわれていました。しかしここ最近は違いますね。明らかに年金が支給されると全体的に稼働が回復します。これは低貸し玉部門に限らず全体的にみられる傾向であり、それだけ遊技客に占める年配者の割合が増えていることを示していると思います。ということは、これからはパチンコ客層の高年齢化を現実的な問題として対応、対策を考えなければいけない時代です。

さて冒頭のような「日本の人口ピラミッドからの将来像」を話すということではなくとも、「高年齢層をターゲットに~」という意見は結構なお店で出てくるものです。特に低稼働店舗で。理由は簡単、一般的なド底辺ホールは商圏内において設備、立地、機種構成、規模などすべての面で劣っているので、どうしても「スタイリッシュなことを好む(と思われる)若年層を取り込むことができない」と考えているからです。ただ「高年齢層をターゲットにする」、この方向性自体は誤りではないとしても、実際に実行している(できている)お店は果たしてどれだけあるのか?というと疑問が残ります。導入する機種は年齢層に関係なくどのお店も同じであり、その点で「高年齢層向けのお店」にすることはできず、販促物や装飾、音楽などを少々落ち着きのあるものにするといったことで「高年齢層向けにしている」と(自分の中で勝手に)思っているのが大半でしょう。

「ステレオタイプ」という言葉があります。「紋切型、常套的な形式、型にはまった画一的なイメージのこと(広辞苑より)」で、正しいか間違っているかではなく、マスコミなどで作り上げられたイメージを自分の意見にするという意味です。「高年齢層はアットホームな雰囲気を好む」という意見がありますが、これこそがステレオタイプな見方ではないでしょうか。例えば大型で派手な繁盛店には、若年層ももちろんいますが高年齢層もしっかりと集客できています。高年齢層がアットホームな雰囲気を好むのであればそういったお店には集まらないはずなのに、です。

「しかし、落ち着きのある店内にしていった結果、ちゃんと高年齢層を集客できている。間違っているとは思えない」

こういう意見もあるでしょう。でもそれは単に若年層を排除するようなお店にしてしまっただけではないでしょうか。先ほども述べましたが「繁盛店」は高年齢層も若年層も満遍なく集客できています。それが、稼働が下がるにつれて徐々に高年齢層の割合が増えていくはずです。上記のように思った方、落ち着きのある店内にして稼働は上がりましたか?おそらく答えは「NO」でしょう。これはつまり、「若年層が来たくないお店にした結果、比較的お店を変えようとしない高年齢層が残った」だけのことだといえます。

この連載の第43回(2015.11.15)にて、次のようなことを述べました。

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よく考えてみれば、パチンコ業界というものは商品構成(機種構成)での差別化がまずできない業界です。高稼働の店舗もド底辺の店舗も、ほとんど同じ商品構成(機種構成)なのです。それでも、今この厳しい状況でも高稼働を維持している店舗や稼働を上げているホールも存在します。同じ商品構成(機種構成)でいったいどこにこの差が生まれる要因があるのか。それは「面白さを演出するプロデュース力の違い」なのです。

「最近のパチンコは面白くない」、よく聞く言葉です。これは遊技機そのものの面白さを指している場合もありますが、大きくは「パチンコという遊び」自体を指していると捉えられます。だから「パチンコという遊び、遊んでいるそのひとときを面白くさせよう」、そのように考えて改善をしてきたホールが高稼働を維持、または稼働を伸ばしているホール=強豪店なのです。

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 「パチンコを楽しみたい」という気持ちは年齢層に関係なく同じです。そして「パチンコを“快適に”遊びたい」という気持ちももちろん同じです。「パチンコの面白さ」を訴求することが、結果的には高年齢層の獲得につながります。「高年齢層をターゲットに~」ではなく、「パチンコ客をターゲットに!」です。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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