林秀樹「稼働低下シーズン、ド底辺ホール的には〝雌伏の時〟」

2016.10.22 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(80) 稼働が厳しいからこそ、シメろ!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。10月も半ばを過ぎました。体育の日の3連休も思ったほど稼働が伸びず、そしてこれからは一年の中で最も稼働が落ち込む季節ということもあり当分は何をしても結果が得にくいと考えられます。そしてそういったときにすべきことは「守り」、つまり利益の確保を優先すべきであり、稼働を伸ばすための「攻め」は来るべき機会の時期まで我慢すべきです。

しかし、そう頭では理解していたとしても、今の稼働状況を見るにつけ「これは拙い、何かしなければ」と思ってしまうことでしょう。そして「手を打つ」となってまず考えることは回転数のアップとなります。なぜなら同じような稼働低下対策の「新台入替」という仕掛けは、動いてからある程度先の話になってしまうので、「今、目の前」を何とかしたい場合は遊技機の使い方の見直しがすぐにできることとなるからです。しかしそんなことをしているととんでもないことになってしまいます。

ある支援先の話です。

8月までは(低いながらも)稼働はそこそこで利益もしっかりと残していたのですが、9月に入り稼働が落ち始めると急激に割数が高く推移しだして利益がうまく確保できない状況となってしまいました。担当者は確率や継続回数のせい、つまり「暴発のせい」と説明したのですが、データの確認をすると明らかにスタート回転数が上がっていたのです。

なぜ勝手にそのようなことをしたのか理由を問いただすと、
・稼働が落ちてきたので、対策としてアケた
・稼働が伸びれば玉利を下げても必要な台粗利を維持できると考えた
という答えです。

もちろん稼働を伸ばすには「仕掛け」が必要であり、仕掛けには必ずコストがかかります。そしてここでいう「コスト」は「回転数アップによる玉利の低下分」となります。

台粗利の計算式は「台粗利=玉粗利×アウト」です。この計算式から同じ台粗利を確保するには、
①アウトが下がったら玉粗利を上げればよい
②アウトが上がったら玉利を下げてもよい
といえます。つまりアウトが下がっている場合、必要な粗利を確保するには「玉利を上げなくてはいけない」はずです。

「稼働が下がってきたので、上げるために何かをしなくてはいけない」、この考え自体は間違っていませんが、考えの出発点が間違っています。今回の出発点は「稼働が下がってきたこと」なわけですから、上記①の考え方を進めなければいけないはずです。「アウトが下がってきたから、アケる」というのは強者の取る手法で、ド底辺はまず生き残るために「アウトが下がってきたら、シメる」を選択しなければいけないのです。ここを間違うと、結局思ったほど稼働も伸びずに利益も確保できずとなります。まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。

「卵が先か鶏が先か~」、つまり玉を出して客付きをよくするのが先か、利益確保をしてそれを財源にして出すのか。これはこの業界、永遠のテーマです。そしてこの問いに対して私は「絶対に利益が先である」と考えます。

これは「孫子の兵法」の、
・まず守りなさい。攻められるのは余りがある時だけです。攻めてもいいのは、もしもこの戦いで負けても致命傷にならない時だけです。
という考え方からです。

これから先、しばらくは季節的にド底辺の現場はとても苦しい時期です。だからこそまずは利益の確保を優先してください。「下がったから、アケる」ではなく「下がったから、シメる」です。そしてこの時期を乗り越えた後、年末などの「機会、チャンスの時期」に投資(出玉、回転数、入替など)を行いましょう。ド底辺の攻めは「今ではない」ですよ!

(雌伏の時=実力を養いながら活躍の機会をじっと待つこと)

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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