林秀樹「新規客と既存客、ド底辺ホールが求めるべきはどっち?」

2016.03.19 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト第61回
コンサルティングの現場より(49) まず守れ!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。

「CR真北斗無双」の納品が始まりました。久しぶりに大量設置にも耐えられそうな注目機種であり、OP1週間を経過して今のところその期待通りの結果が出ています。今回はそれなりにド底辺ホールにも(少ないながらも)納品されていたようで、「この注目機種の導入で新規顧客を確保する!」と意気込んでいた店長も多かったことでしょう。

しかし実際には、「CR真北斗無双」自体の稼働は良くても、なかなか客数が増えたとまでは言えない状況だと思います。このことについては過去の連載(2015.10.25 王道こそ、最高の戦略)で「新台入替に過度な期待を持ってもダメ」という話をしていました。結局は地道な取り組みを継続していくことでしかド底辺脱却はできないということです。そして、その「地道な努力」とは何なのか、というのが今回のテーマです。


業績を上げるというのは最終的には利益を増やすことが求められます。その利益を無理なく増やすためには売上を上げなければならず、売上を上げるためには稼働を伸ばしていくことが理想です。そしてこの「稼働」、伸ばすには大きく分けて2つの方法があります。

・今、自店に来ていない客層を、取り込む(=新規客を増やす)
・今、自店に来ている客層に、より長くいてもらう(=既存客の滞在時間、来店回数を伸ばす)

です。このうち新規客を増やすというのは、

「今来ているお客様は自店のファンであり、来ていないお客様をどう取り込むかが重要」
「他店から自店に来てもらうことで、客数の差は2倍縮まる」

という考えからの手法になりますが、これはなかなかうまくいきません。なぜなら今いないお客様は自店に何かしらの不満を持っているから来店しないのです。そういった人はいわゆる「心理的なコスト」が大きく働きます。今までと違うことをしてもらう。言い換えれば、「今まで来ていなかった自店に来てもらう」には相当なメリット(今の行動では得られない、もっと大きなメリット)を示す必要があります。しかし、ド底辺ホールにそんな“メリット”などまずないでしょう。だからこそ、ド底辺的には既存客に目を向けた施策が有効になります。

「既存顧客に目を向けるのは悪くはないが、パイが限られてくるので先細りになるのではないか」

そう考える方もいると思います。もちろんいつまでも既存顧客維持ばかりを考えるのではないです。あくまでもド底辺脱却のため、まずは足元を固める意味で既存客重視の戦略をしていくのです。

なぜド底辺ホールは既存客重視で進めるべきかというと、そもそもド底辺ホールには資金が足りず、いろいろな面でカネをかけられないからです。資金をあまりかけずに結果を得るためにはどうすればいいか、費用対効果をあげるにどうすればいいのか。こう考えた時に「1:5の法則」という考え方に注目します。これは、

・同じ売上を上げる場合、新規客獲得のコストは既存客維持のコストの5倍かかる

という法則です。例えば「売上1,000万円を上げるとして、既存客維持のコストが100万円なら新規客獲得のコストは500万円となり同じ売上でも残る金額が違ってくる」というようなことを意味しています。パチンコ店でいえばイベントです。新台入替を告知する場合でも、既存客重視なら店内販促だけで済むかもしれませんが、新規客獲得を考えれば外向けに折り込みチラシを撒くことになるでしょう。そうなると同じことを告知するのでもコストに大きな差が出ますね。

「新規客の獲得」というのは攻めの戦略です。いっぽう「既存客の維持」は守りの戦略です。紀元前の兵法家である「孫子」も次のように述べて、守りの重要性を説いています。

「攻めることができるのは余裕があるからです。余裕がない時はまず守りなさい。攻めてもいいのは、たとえその戦いで負けても致命傷にならないときだけです」(孫子の兵法 軍形編)

常に(いろいろな意味で)余裕のないド底辺は、まずは「守り」の戦略なり戦術を考えるべきです。なるべく効率よく、できるだけコストをかけない営業を志向してください。売上の拡大ではなくコストの縮小を図ることが、ド底辺に必要な考え方です。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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