林秀樹「新人を育てられないド底辺ホールの憂鬱」

2016.05.14 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(57) 新人は大事にしろ!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。さて今回はド底辺ホールで恒常的に問題となっていること、「人手不足」についてお伝えします。

連載第60回(2016.3.13「人材の定着は店長次第!」)では、役職者の離職についてお伝えしましたが、今回は連載第67回(2016.5.1「風土を変えろ!」)でお伝えしたお店のお話の続きです。概略は「新人に別の新人の教育を任せるというあり得ない事態に陥っており、根本的な問題点はこのお店の風土にあり」ということでした。この回ではお店側の視点で問題点を指摘しましたが、今回はスタッフ側の視点でこの問題を見ていきます。

新人は文字通り「新しい人」です。何も知らない、わからない中でいきなり仕事を任されても不安でいっぱいになることでしょう。
「うまくできるだろうか…。」
「もしもトラブルが出たら対応できるだろうか…。」
「周囲に迷惑をかけないだろうか…。」
などなど。もちろん任せる側も「できないこと」は織り込み済みで任せていますが、それでも人は期待に応えたいという欲求があります。もう少し詳しくいうと、
・役に立ちたい
・認められたい
・褒められたい    
という3つの「たい」を持っています。これは有名なマズローの欲求5段階説でいうところの安全欲求、所属欲求、承認欲求に対応しており(図参照)、これらはすべて人として求めるもの(欠乏欲求)です。
・仲間の一員として貢献したい(役に立ちたい=安全欲求)
・仲間として認めてもらいたい(認められたい=所属欲求)
・貢献して称賛されたい(褒められたい=承認欲求)

しかし、このように思ったとしても、もちろん新人に仕事が効率よくできるはずがありません。そこで「できなくて当然、任せたこっちも悪い~」とできないことを指摘せずにいると、「この程度の仕事でいいならこれでいい」と判断して、マズローでいう「所属欲求」の段階で成長がストップしてしまいます。そうなると「よりよい仕事をして高みを目指す」ということがなくなりレベルが低いまま成長はストップ、そしてそんなスタッフばかりになるとレベルが低い店舗となってしまいます。「ウチのスタッフはレベルが低い~」と嘆く店舗は、往々にしてこういったことが積み重なって出来上がっているのです。

また、「なんでできないんだ!」と叱責でもしようものなら、「できるはずがないのに任せて、それで怒られるのはおかしい」と考えて、「こんな理不尽なところにはいられない」とばかりに退職してしまうでしょう。この場合はもっと深刻な問題です。なぜなら必ず周囲にこの顛末を話すからです。「あの店は管理が適当、ダメな店だ~」というようなことを周囲に話されると、お店のイメージダウンとなってしまい知らず知らずのうちに顧客離れを起こしてしまう恐れがあります。

「新人時代に一番嫌だったことは?」という質問に対し、最も多かった答えが「教育不足なのにいきなり一人にされたこと」というアンケート結果もあります。新人を大切に育てる、それだけのことが定着率を上げ且つ店舗レベルも引き上げます。働く意思をもってきている人は誰しもが「貢献したい」という思いを持っているのですから、その思いに応えてください。


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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