【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(58) ルールの前に必要なこと
皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。5月も半ばを過ぎました。ド底辺の現場では新卒採用などなかなかないのが実情ですが、それでも人の移動の季節には新人が多く入店するものです。この4月から新しくアルバイトとして入ってきたスタッフの成長はどのようなものでしょうか。
「なかなか育ってないね~。」
そんな声も聞こえてきそうです。一般的に強豪と言われているお店のスタッフはキビキビとした動きで接客態度もさわやかであることが多く、逆にド底辺の現場ではどことなくだるそうに動くスタッフが多く、接客態度もよいとは言えないものです。お店の業績がいいからスタッフもキビキビしているのか、スタッフの姿勢が良いから強豪になったのか、どちらなのかと聞かれればそれは後者(スタッフの姿勢が良いから、強豪になっていった)といえます。(2016.2.14連載第56回「店を見るな、ヒトを見ろ!」に詳細が記載されています) 今回はスタッフ教育ですべきことについてお伝えします。
あるド底辺ホールでのお話です。このお店の店長は上記のこと(スタッフの質が店舗業績の鍵)がとても重要だという認識のもと、スタッフのレベルを上げるためにさまざまな施策を行っていました。具体的には、
・詳細なマニュアルの作成
・詳細な身だしなみチェックリストの作成、徹底
・挨拶の徹底
などなど。「目指せ、業界最大手レベル!」とばかりに、スタッフ教育のために一生懸命です。しかし「笛吹けど踊らず~」とはまさにこのこと。なかなかスタッフのレベルが店長の思い描く水準には届きませんでした。先週の連載(2016.5.15連載第69回「新人は大事にしろ!」)でもお伝えしましたように、新人は誰もが「この職場に貢献しよう」と思って働きに来ています。その思いに応えるべくサポートをしているのに効果が表れないのはどうしてだったのでしょうか。
人はルールに従うのではなく風土や習慣に従うものであり、押し付けられた価値観ではなく醸成された価値観に従います。さらにその従う価値観(醸成された価値観)は、環境によって善にも悪にもなり得るので、「人は環境によって善にも悪にもなる」といえます。
今回の店舗ではそもそもド底辺であったために「悪の環境」が蔓延していました。もちろん店長の考えに賛同するスタッフがいなかったわけではありませんが、そういった声は少数派です。人は風土や習慣に依存するので多数派を占める抵抗勢力の風土と習慣に流されていき、新しいルールを導入してもなかなか定着しなかったのです。店長がまずすべきだったことはルールの整備ではなく、考え方や意識をお客様に向けさせることでした。
風土や習慣は一朝一夕では変わりませんし、出来上がりません。どのようなお店を目指しているのかを日々語り続けて少しずつ変化するものです。必死になってルールを作ってもお店は変わらないのです。ルールづくりはそれこそ1日でも出来上がりますが、 良い風土は積み重ねていってはじめてできるものです。今、自分のお店のスタッフレベルが低いと嘆いている時間があるなら、そして押し付けるルールを作っている時間があるなら、風土を変えるべくスタッフに語り掛ける時間を多くとりましょう。
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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。