林秀樹「ド底辺ホールの未来を切り拓く利益〝額〟」

2016.11.05 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(82) “率”と“額”の違いを認識しろ!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。

11月に入りました。11月は一年のうちで最も稼働の落ち込みが見られる厳しい月というのが毎年の流れです。「10月は話題機種の納品があっても厳しい結果だったのに、話題機種の少ない11月はどこまで落ち込むのだろうか」と不安な方も多いと思います。しかし、だからといって闇雲に動いても足元の結果に変化は見られないでしょう。大きな流れには逆らえない、ということです。

そうなるとこのまま何もせずにじっとしているべきなのか、というとそうではありません。明確に「すべきこと」はあります。それは「次なる機会への準備」です。「次の機会」とはもちろん年末年始であり、この時期に仕掛けをするのが戦略の上では定石となります。ただ、「仕掛け」にはコストがかかります。だからこそ、この11月は次なる機会のへの準備として、適正な原資の確保が求められる期間といえます。

「稼働が厳しいということは売上が見込めないのに、利益ばかりを追っては拙いのではないか」

こう考える方もいるでしょう。ここで次のようなことを考えてください。
(問)
A.台売上5,000円 台粗利2,000円
B.台売上20,000円 台粗利2,000円
さてAとB、どちらの方が遊技客の負担が大きいでしょうか?

Aの利益率が40%でBの利益率が10%ということは当然、Aの方が負担「割合」は大きいことになります。しかしよく考えてみてください。どちらも2,000円の負けです。実は、負担は「同じ」なのです。「売上が低下する時期だから利益“率”を下げないと」というのではなく、「売上が落ちる時期でも利益“額”はこれまで通り」と考えても問題はないのです。もちろん利益“率”は上昇しますが、“率”ではなく“額”で考えるべきなのです。

次に「負担“感”」について考えてみましょう。「負担感=負担を感じること」はどちらが高いか、といわれると、結論から言うとBです。なぜなら、Aは5,000円の投資で遊び、Bは20,000円の投資で遊んだことになるので、遊技中の心境は「5,000円で遊べた」と「20,000円も使った」という違いとなるからです。このように、パチンコにおいての負担感は、「より少ない遊技金額の方が負担感が低い」のです。実際に4円パチンコと1円パチンコの利益率の違いと稼働の違い、またMAXタイプと甘デジの利益率と稼働を比較すれば理解しやすいと思います。

「同じ利益を確保するならより売上が高いほう利益率が下がる。だから売上の上がる機種を入れよう」、業界全体がこのように考えてこぞってMAX機種を増やしていった結果、遊技人口は右肩下がりで減り続けている現実があります。個々が最適と考えた行動(部分最適)が結果的に全体の利益を減少させてしまう(全体最適にならない)ことを経済学では「合成の誤謬」といいますが、まさにその通りのことが起こっています。

「売上が下がる時期だから利益確保が難しい」ではなく、「売上が下がる時期だからこそ、負担感の減少につながる」と考えて、しっかりと適正な利益額を確保してください。それが未来につながります。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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