林秀樹「ド底辺の臨機応変、実は右往左往な場合も…」

2016.06.04 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(60) 動くことで失うもの

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。いよいよ6月です。例年通りのGW後の稼働低下だけでなく入替ができなかったことでさらに低迷する稼働をみるだけだった5月後半も終わり、「さあ、これからだ!」という気持ちを持っている方も多いと思います。

さて今週はこの「稼働の落ち込み」に対する認識と、その対応策についてお伝えします。

今回の落ち込みはある程度事前に想定できていました。そして落ち込みを最小限に抑えるための施策を用意していたと思います。ただ、今回は少しばかりその落ち込み幅が想定よりも大きかったことも事実です。私の手元に届くお店のデータでも全国的に5/12以降、急激に落ち込みました。そうすると現場としては「これは拙い」と焦ります。あるお店ではもともとの施策以外に緊急の対策として放出イベントを組んだところもあり、その結果5/25以降、回復の兆しという手応えが得られました。

しかし実は、5/25以降に回復したのはその「緊急放出イベントを行った店」以外でも同様でした。全国的に同じように回復傾向になったのです。「25日」というワード、これは一般的な給料日と考えられますね。比較的長めだった今年のGWでそれなりにお金を使ってしまいパチンコに向ける支出が抑えられていましたが、やっと収入が入ったことで久しぶりにパチンコに行こうと思った人が増えたのでしょう。ただ、それだけのことです。

経営、営業には年間予算というものがあり、どこかで予算を割り込んだ場合はどこかでその埋め合わせが必要となります。今回、上記の緊急対策をとったお店は当然のごとく6月以降にその埋め合わせが必要となりました。「6月から再スタートだ!」と思う気持ちはあっても、通常計画プラスα(5月で不足した分)の利益増額が重くのしかかります。一方、稼働と売上に落ち込みはあってもそういった緊急対策をせずに必要な利益を適正に確保したお店は、6月からの再スタートでも予定通りの計画を立てることができます。この差はこの先に如実に出てくることでしょう。

業績には変動があるものであり、急激な変化の時は外部要因の影響が大きいとされています。外部要因は全体に対して等しく同じ効果(影響)を与えるものなので、急激な落ち込みも(逆に回復についても)等しく全体が同じ影響を受けてのことでした。今回の事例のようにその場その場で緊急の対策をすることは、「臨機応変」といえばいい聞こえはいいですが要は「右往左往」なのです。

落ち込んだ時の対策というのはSWOT分析でいう「脅威の回避」にあたり、強者の取るべき戦略といえます。業績が変化した原因が外部要因であることが明確な場合は、慌てず動じずにドンと構えてください。外部要因の場合は時期が来れば必ず状況が変わります。逆に敏感に動いてしまうとその後の営業に「取り戻す」という大きな制約が出てしまい、次の「機会」が来てもそれを生かせなくなってしまいますよ!

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972 年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エ ンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的 なホール経営を提唱する。

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