林秀樹「ド底辺が陥るナァナァな関係の解消法」

2016.03.05 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト第59回
コンサルティングの現場より(47) 「タコツボ化」を解消せよ!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。3月に入り気温が高い日もあり春ももうそこまできているな、と感じます。しかしそんなとても気持ちのいい季節にもかかわらず、業績が上がる気配が感じられずモヤモヤした気分になっていませんか? そういったとき、「ド底辺だから……」とあきらめていたのではいつまでたっても這い上がることはできませんよね。しっかりと自分を奮い立たせて前を向きましょう。

さて、あるお店のお話です。

このお店はいろいろなことを独断で進めがちなことが問題となっていました。なぜそうなってしまうのか、これにはもちろんそれなりの理由があります。それは、一番近いグループ店舗が距離にして約300キロ離れていることで、このお店だけが少し離れた地域にあるからです。本社には事業部という部署もあり全店を統括していましたが、このお店に関してだけはなかなか訪問しづらく電話やメールでの連絡が主となっていました。

そうなると店舗は「放っておかれている」というような被害者意識が芽生えます。「本社はいいよな~」「この辺りは特殊な地域だから~」「たまに来てもわかるわけがない、自分たちにしかわからない~」と、他者の意見に聞く耳を貸さなくなり、遠くにあることを理由に物品の購入や入替、イベント実施などを独断(または事後報告)で進めることが多くなっていたのです。営業部長や事業部は扱いに大変困っていました。

あなたのお店のグループにもこういった店舗がありませんか? このような事例は俗に「タコツボ化(→外部との接触が少なく、狭いコミュニティーにいるさま)」と呼ばれます。タコツボ化に陥ると自分と似た価値観の者がいつも一緒にいてそれ以外の人たちと関わろうとしないので、どんどん視野が狭くなってしまいます。しまいには「自店の人間は仲間、自店でない人間は敵」として、自店所属以外の人間へ攻撃を始めることすらあります。

例えば、
・上司(営業部長など)と感情的な衝突をする
・多店舗の同僚を平気で「あいつ」という
・会社への不満、悪口を言い合う
・自分のほうから他店、上司へ連絡を取ろうとしない
といったようなことです。

タコツボは内部の人間には確かに気持ちの良い空間かもしれません。しかし、これは長期的には会社を崩壊させてしまいかねない憂慮すべき事態なのです。会社の論理よりもタコツボ内の論理を優先する傾向にあるからです。上記のような兆候があるなら直ちに改善を図る必要があります。

「タコツボ化」を解消させるには、一般的には人事異動が有効とされています。「違う部門、店舗を経験させることで視野を広げることができる」からですね。

ところがこれが、ド底辺ではかなり難しいのです。なぜならド底辺では常にギリギリの人数で回していることが多く、せっかくの人手を他店に取られてしまっては仕事にならないからです。また、現実的には確かにそのお店独自のノウハウや地域事情に精通した人材であり、そうそう異動させるのは得策とは言えない面もあります。

こういった人手が足りない会社に有効な手法があります。「クロスファンクション」といわれる手法です。全社横断のプロジェクトを立ち上げ、メンバー・所属部署はそのままにプロジェクトに参加します。これにより部門レベルよりも一段高い視点(会社視点)で考えられる人材を育成することが可能となります。全社横断のメンバーになるので自分の所属するタコツボの利害や論理を優先できなくなるからです。

この「全社横断プロジェクト」にはさまざまなものがあります。「これ」という絶対のものはありません。例えば私の支援先では、
・遊技機会議
・接客会議
・女性活用会議
・レクレーション会議
などが全社横断プロジェクトとして行われています。

幕末の政治家として有名な勝海舟は「薩摩も長州も会津も、みな同じ日本人だ」と言ったそうです(幕末のあの時代にこんなことを言えるのはすごいことだと思います)。自分の所属する組織がタコツボ化していないか、会社全体の成長のための仕事に取り組めているかどうかを常に考えてください。同じ会社の内部でいがみ合っていては真の敵=競合との勝負はできませんよ!

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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