林秀樹「ド底辺が仕掛けるタイミングはいつ」

2016.06.25 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(63) 投資効率を考える

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。先日支援先の店長からお盆の仕掛けについてこんな相談がありました。

店長「お盆の仕掛けとして設備の向上を考えています。具体的にはイスの新調なのですが、時期はいつごろにしたほうがいいと思いますか?」
林「といいますと?」
店長「お盆の前に行うか、後にすべきか、です。」
林「まず、店長の考えはどちらですか?」
店長「私は、仕掛けはできるだけ後出しのほうがいいと思っています。お盆明けの落ち込み対策の意味もありお盆後にしたいと思っています。」
林「なるほど。その考えは正しいです。しかし・・・」

店長は「お盆明けの落ち込みが気になるのでお盆後にしたい」との考えでした。この考えにもそれなりに説得力がありますが、「投資効率」という観点で考えると、「もっといいタイミングはないか」と考えたいところです。

この連載で過去何度か、SWOT分析という考え方を紹介しています。簡単に解説すると、
・S…自社の強み(Strengths)
・W…弱み(Weaknesses)
・O…機会(Opportunities)
・T…脅威(Threats)
を列挙して、各々を重ね合わせて方向性を導き出すという考え方です。

例えば写真2のクロスSWOTを見ていただいて、「強みを機会に投入するのが事業チャンス(左上)、弱みと脅威が重なる方向性は選択してはならない(右下)」となります。

戦略の基本は「機会(チャンス)に仕掛ける」です。その意味で今回の施策(イス新調)をいつすべきか? と聞かれたらそれは「最も反応のよさそうなチャンスのあるとき」です。つまり「お盆前」ですね。

もちろんお盆後の落ち込みに対する不安もあるかもしれません。しかしせっかくの投資はマイナスの補てんではなくプラス部分を伸ばすために行うべきです。お盆前に伸ばす方向で施策を打ち結果的にお盆後に落ちたとしてもこれまでより高いレベルに落ち着くことになり、そしてその数字が今後のベースになります。落ち込んだ時の底上げを主眼とするのは維持が目的となり、伸ばすことはできません。

このSWOT分析、いろいろな場面で判断基準に使えます。例えば入替という戦術。入替は稼働が低迷したり利益確保ができていなかったりする機種を差し替えるため行います。この視点で考えれば入替は「弱みを補う戦術」といえますね。上記のとおり一般的には強みを伸ばすことを優先したほうが効率が良いので、その意味で考えると入替の優先順位は低くなるはずです。(もっと、強みを伸ばすことに投資をしたほうが良いはず) 入替を戦術の柱にしてもなかなか業績アップにつながっていないのはこういったことからも至極当然のことといえるでしょう。

現在は仕掛けをしてもなかなか効果が得られなくなっています。だからこそ、できるだけ効率を考えて、弱みではなく強みを、底上げではなく伸ばすこと(良くないときではなく良いとき)を意識して施策を打つようにしてください。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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