林秀樹「お客様に〝試供品〟を提供するド底辺ホール」

2016.11.12 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(83) 品質を疎かにするな!

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。相変わらず新台が出てもわくわくするようなインパクトもなく、新台入替ももはやひとつの「作業」のようなもの、特別なことではなく毎日が淡々と過ぎていくようです。そうなるとお店の遊技機担当者の気持ちも張りがなくなってしまうようで、遊技機のメンテナンスもついつい流れ作業、もしくはほとんど何もしないというような傾向があります。

また日々のメンテナンスだけでなく新台導入時にさえ、しっかりとお客様を迎えるような形に整備されていないことも多いです。例えば新たにコピー機を導入したとしたら、納品後すぐに顧客が使えるようにメンテナンスとセットアップをしっかりと行うはずです。また一般の小売店だったとしても、商品を仕入れて店頭に並べるときには顧客が選びやすく見栄え良く、と考えるはずです。

ところがパチンコ店ではどうか、というと前述のように遊技機のメンテナンスをしっかりとしないで顧客に提供するようなことが往々にして見受けられます。そしてこの傾向、特にド底辺ホールに多く見られます。大手や強豪店と違い中古機がメインになるので、どうしても「大切にしよう」という意識が薄いことも原因でしょう。

以前、新台のメンテナンスは特に何もしないで、入替初日終了後のデータを見てからメンテナンスをするというお店がありました。これでは「お客様に試供品を提供している」ようなものです。しかし店長にはそういった意識がありません。店長は「今の機種は確率で出る、出ないが決まるので細かいメンテナンスはあまり意味がない」と考えていました。「遊技機の使い方よりも販促や広告宣伝の方が重要」だというのです。ある面ではそういったこともあり得るかもしれません。確かに今の機種は昔に比べて役物が大きくなり盤面の構成もシンプルになっています。またメーカーの製造も昔よりも精度が高くなったので極端におかしな盤面構成ということもなくなりました。しかし、それでも細かい部分でズレがあったりしますし、何より「最高の品質のモノをお客様に提供しなければならない」という「商品に対する意識」が欠けています。

遊技機のメンテナンスがいいからといって稼働は上がらないでしょう。しかし遊技機のメンテナンスが悪いことで稼働を落とすことはあります。そしてこれは「内部要因による変化」なので徐々にゆっくりと影響を及ぼし、気が付いた時には取り返しのつかない事態を招きます。

遊技機のメンテナンスというものは、単にホールコンピュータのスタート回転数やベース、出玉といった数値の適正化といったことだけではなく、玉の動き方や跳ね方といった体感的な「遊び」としての盤面構成にする整備も含まれます。むしろ「お客様へ最高の品質の遊びを提供」と考えた場合は、後者のようなことをしっかりと整備することがメンテナンスといえます。

大手や強豪店はしっかりと遊技機のメンテナンスをしています。適当な遊技機メンテナンスでは勝負のスタートラインにすら立てていないことに気づいてください。機種構成や販管費、広告宣伝費などの資金面、また設備面などでは大手や強豪店に及ばないかもしれませんが、遊技機メンテナンスは担当者の「マンパワー」です。企業の経営資源の中で最も重要な「ヒト」については大手や強豪店に追いつける部分ですから、簡単に考えて疎かにしてはダメですよ!

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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