敵情視察が大失敗に終わるのには理由がある(林秀樹)

2019.12.13 / 連載

【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(243) 何事も段取り八分で動く

 

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。12月も半ばとなりました。例年この週末を過ぎた第3週、気温も下がってくるこのあたりから客数、稼働が戻ってくる傾向があります。しかし現状は魅力的な新台が少なく、かといって既存設置機種だけでは維持が精いっぱいであり、遊技機頼みの営業ではなかなか業績を上げるための方策にも限界があります。業界はすでに厳しい冬の真っただ中、といった様相です。

そこで、というわけでもありませんが、最近は特に販促(店内装飾)に改めて目を向けるお店が増えてきたと感じます。しかし自店の発想だけでは変化が出せないものです。そのため他店視察を行ってヒントを得ようと考えることになるのですが、視察に行って思うような着想を得るにはしっかりとした準備と振り返りが必要です。

 

あるお店では「店内装飾の変更について」が議題となり、新しい発想を得るために他店視察をすることになりました。そこで私が、同一県内の販促関係で参考になるお店をいくつかピックアップして、後日視察に行ってもらうことになりました。

視察後の会議で報告会となったのですが、出てきた意見は以下のようなものです。

・稼働が良い
・きれい
・設備が良い
・立派
・豪華
・よく回している
・出ている

などなど、販促、装飾とは関係のない意見ばかりで視察は失敗に終わりました。

 

この視察の失敗は、「明確なテーマの共有がなかったこと」です。視察店舗を決めたら後は順に回って「見るだけ」ではこのようになってしまいます。

このようにならないためには、例えば以下のようにテーマを決め、それを口頭ではなく紙(もしくはメール等)でしっかりと伝えておかなければなりません。また事後に必ず報告書の提出を求めることも必要です。

例)

① 景品コーナーで参考になった点
② 店内装飾、販促物で参考になった点
③ 駐車場(エントランス等)の演出で参考になった点
④ 入口から店内の導線で気づいたこと
⑤ 接客動作、配置、人数等で気づいたこと
⑥ 遊技機配置について気づいたこと
⑦ その他

 

ところで店舗視察と近い意味を持つものに

・ストアコンパリゾン

というものがあります。これは主に小売業において「競合する店舗と自店の違い」を把握するためにその店舗の特徴や動向を調べることを指し、競合店を実際に見て違いを把握して、自店の業績アップを図ることを目的とするものです。ストアコンパリゾンの場合は基本的に「良い部分だけを見て」自店に役立てることになります。

これに対して他店視察は「ダメな部分」も感じることで反面教師的な役立て方をする場合もあるのでその意味で厳密にいえば違います。それでも「自店の業績アップのために」行うのですから同じような視点を持つことが必要です。単に見に行くだけでは何も得られないです。

 

「百聞は一見に如かず」と言います。他人の話を聞いたり業界誌の店舗紹介ページを読んだりするよりも実際に目で見た方が身につきやすいと思います。だからこそ、その機会を無駄にしないために準備と事後のまとめに時間を費やしてください。

 

 

 

 

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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