売上が低下しても利益額は下げてはいけない理由(林秀樹)

2020.03.27 / 連載

【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(258) 利益があるから満足していただくことができる

 

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。いよいよ3月が終わり、次週から新年度がスタートします。

ほとんどの会社で3月は決算月となりますが今年の結果はどのような見通しでしょうか。支援先の数字や業界データを見ていると多くのお店で売上の低下が見られます。この傾向は高ベース機の増加や高射幸性遊技機の撤去が進んだ秋以降で顕著に表れており、その時の判断で今、明暗が分かれているように感じます。


過去の売上低下の原因はそのほとんどが「稼働の低下」によるものでした。しかし、今回の売上の低下は前述のとおり設置機種スペックの変化による玉単価(コイン単価)の低下が主な理由です。このことから今回の売上低下傾向は過去のそれとは少し意味合いが違っています。

お店(会社)を維持するためには利益が必要であり、この「利益」を考えるときの指標に「利益率」というものがあります。

いつの時代も業界的には「お客様に楽しく遊んでもらう」ことを考えてきたはずです。そして「楽しく遊んでもらうためには、お客様の負担を軽減していく必要がある」と考えました。「お客様の負担を軽減するためには利益率を下げたほうが良いはずだ」ということで、利益率を下げるために売上の上がる(売上の期待できる)機種を積極的に導入してきたのです。しかしその結果稼働がどんどん下がり、「売上を上げ(てお客様の負担を下げ)よう」という思惑とは反対に、売上は右肩下がりを続けてきました。

売上が下がると同じ利益を確保するには利益率を上げなくてはならなくなります。利益率を上げるということは割数を下げるということなので、基本的には「シメ」をすることになります。

「現状の利益率でも稼働が厳しいのだから、これ以上のシメはしてはならない」

このように考えて利益率を維持して(または逆に下げて)営業したお店がありました。そうすると、利益という「入り」が減るのだから投資という「出」を抑えることになるのは必然です。この手法は短期的、目の前では効果が現れます。「入り」が減ってもそれ以上に「出」を抑えることで差し引きの収支は改善できるからです。

しかし、この手法は入替や広告宣伝、設備更新などの設備投資を縮小することになり、こうなるとお客様に「満足」を提供することが難しくなっていくので、徐々にお客様が離れてく結果を生んでしまいます。

売上が低下しても利益額は下げてはいけないです。利益は「将来の投資の原資」です。お店が100を提供することでお客様は100の利益を渡してくれるのであって、50しか提供できなければ50の利益しかいただけません。長い目で見て、設備投資を縮小してはいけないのです。

利益があるからこそお客様の欲求に応えることができ、利益があるからこそお客様に満足感を提供できます。「出すために、取る」「お客様の求める機械の導入のために、取る」。利益を確保してこそすべての歯車がかみ合います。

 


アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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