バラエティーコーナーのパラドックスについて解説します(林秀樹)

2019.07.26 / 連載

【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(223) バラエティーコーナーについて考える

 

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。ここ最近支援先データや商圏視察での機種構成と稼働を見ていて気になることがあります。それは、

・バラエティーコーナーがあまり良くない

という事です。


もちろんバラエティーコーナーという事は少台数ずつの設置であり、そもそも機種的な魅力や人気の低い機種が多く設置されているコーナーという事はあります。

しかし一時期は(これまでは)、

・いろいろな機種で遊びたい

というニーズに応える営業として一定の稼働が見込めたコーナーです。これはバラエティーとなるコーナーに機種が多くなり過ぎたことに要因があると思います。

 

人は「選択肢が多すぎると選べなくなる」という考え方があります。

「選択の自由に圧倒されて、人々はマヒ状態に陥っている。選択肢が多すぎると、人は意思決定を嫌がる。期待値が上がるので、選択が間違っていたと自分を責める傾向が強くなる。二種類のジーンズしか無ければ、そう期待しない。だが何百種類もあれば完璧を期待してしまう」

 

ペンシルバニア州スワースモア大学のバリーシュワルツ教授の言葉です。普通なら選択肢の幅は広い方がいいと思えますが、選択肢が多すぎると逆に買う気がそがれるものだというのです。

確かに日常の買い物の場面において買いたい商品は決めていたとして、実際にお店に行くとすさまじい種類に圧倒され、結局買わずに帰ることも多々あります。

もちろん銘柄や商品名を事前に決めてある「指名買い」ならこういったことは少ないですが(それでも実際にお店に行くといろいろ目移りして決められないこともあります)、例えば「エアコンを買おうかな」とお店に行っても、「機種ごとの良さ、違いが分からない」となって選べなくなることが多々あると思います。これをバリーシュワルツ教授は「選択の自由のパラドックス」と呼びました。

※パラドックス:正しそうに見える前提と妥当に見える推論がありながら、受け入れ難い結論が得られる事を指す言葉。

 

さらに、

・選択肢というものは、全てはひたすら増加する

と述べています。

・情報が増えれば増えるほどポータルサイトや検索エンジン、ビッグデータが現れてさらに多くの情報を貯める

・新しい料理が出ればさらに新しい料理を創り出す

・新しいテクノロジーはそれを取り巻く流通、製造、システムなどすべてに革命を及ぼす

等が挙げられており、これを「分裂の法則」としました。

この分裂の法則が起こると皮肉なことにどんどん選択肢間の差異が薄くなり、結局どれを取ってみても同じものに感じてしまう状況になるというのです。そうなると個々の商品に差別化も新鮮さも感じなくなり、そしてどれも選ばなく(選べなく)なると言います。

 

さてパチンコ店においてです。冒頭でも述べた通りここ最近、お店のデータや商圏視察においてバラエティーコーナーの稼働が以前よりも低下傾向にあるように感じます。バラエティーコーナーが多くなり過ぎたこと、またバラエティーという位置づけでなくても2台ずつ並んでいるコーナーなどが増えて、結局お店の総台数に対する機種数が(過去に比べて)多すぎることなどが、まさにこの「選択のパラドックス」を生んでしまっているのではないかと感じます。

そして、逆に目立つの一部の人気機種に稼働が集中している傾向です。

 

弱者の取るべき戦略も「一点集中」がセオリーとされていることもありますので、バラエティーコーナーの位置づけ、活用(台数)について再考すべき時が来たのかもしれないと思います。

 

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

林秀樹, 【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト, アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社
氏名(公開されます)4年以上

ホールの使い方で変わると思う。行き場を失った台を置いてぶっこ抜いてたら稼働が付くわけない。

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ナスビ4年以上

脱バラエティー賛成!
だけど、増税による外税設備、分煙設備、高射幸機撤去…
予算が足りないから
小台数でしか機械を買えません!

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クレティ4年以上

確かに、近隣店舗みても以前程、お客離れが目立ちますね。
ただ今の世の中、機歴重視なので、バラエティに穴埋めしている法人さんが目立ちます。
買いたくて買っている機械では、ないので、稼働低下の要因ですなあ。

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