スタッフが辞めていく理由のほとんどはお金じゃない!(林秀樹)

2020.02.07 / 連載

【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(251) 現場のモチベーションを上げる

 

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。区切りの250回を越え251回目です。今後も中小ホールの営業のヒントとなるような記事を提供させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

2月度に入りました。相変わらず低調な稼働が続いています。特に今週は話題機種の導入週となりましたがやはりというか盛り上がりに欠ける印象があります。機種の魅力での盛り上がりが難しい現在では、現場でお客様と接するスタッフの力量が業績に大きく影響するでしょう。

ということで、今回は現場のスタッフのモチベーションを高めることについてお伝えします。

 

人財不足は中小ホールにとって資金不足と並ぶ大きな悩みごとです。例えば地方郊外店では人手不足が深刻です。そういった店舗では「いかに既存のスタッフを成長させるか」がポイントなのはもちろん、「いかに辞めさせないか」も重要な管理点となります。人がなぜ会社を辞めるか、その理由を間違えていてはスタッフの定着は図れないです。

 

「こんな給料でこんなつらい仕事なんてしていられない」

これはよく耳にするフレーズでありごく自然な理屈に聞こえますが、人が仕事に向ける気持ちはそんなに単純なものではないです。中小ホールの現場では人手不足ということもありいつも少ない人数で仕事をすることになるので、「辞めようとするのは仕事量が給与に見合わないからだ。仕事量に見合う給与に引き上げれば続けるはず」という図式で考える会社もあります。しかしそれでは足りない要素があるのです。

 

業務の効率化について調査をした人物にオーストラリア生まれの心理学者エルトン・メイヨーがいます。メイヨーは「従業員の気持ちにアプローチすることで仕事の効率が上がる」ということを発見した人物として知られています。

アメリカのウェスタン・エレクトリック社で実験を行った彼は、職場の生産性に大きな影響を与えるのは環境や報酬ではなく「人間的、社会的なもの」であるということに気付き、立証しました。

当初この実験は以下の仮説を立証するために行われました。

・人の生産性や意欲は賃金、労働条件によって変化する

・賃金、労働条件が低いと生産性や意欲は減退し、高いと増進する

ところが、実験結果は仮説とは真逆のものでした。従業員の生産性や意欲は賃金や労働条件に影響されるのではなく、むしろ人間関係や個人の労働観に大きく影響されていたのです。中小ホールの現場に当てはめると、重労働や低賃金を理由に辞める人は実は少なく、多くは「働く意義」が見つからなくなるために職を辞するのです。

 

メイヨーは働く人のモチベーションが職場を監督する人間の言動次第で大きく変わることも明らかにしました。職場で次のようなメリットを感じることができたら、働く人の意欲は大きく高まるのです。

・従業員自身が職場の環境や生産目標の設定に参加できる

・従業員同士がコミュニケーションを取りながら和気あいあいと作業できる

・監督する人が不満や愚痴などの話を聞いてくれる

この条件に当てはまるような改善を考えるとするならば、

・スタッフの採用に主任や班長の意見を取り入れる

・定期的にスタッフの懇親会を開く

・店長がこまめにスタッフと話をする機会を作り、個人的な悩みや愚痴なども聞き取る

などとなると思います。これら3つの対応が定着することで離職は減少し、今までと同じ人員でも人手不足の影響を感じる程度が軽減します。

 

またスタッフ教育のためにマニュアルを用意しているお店も多いと思います。ところがマニュアルを整備してもなかなか思ったような効果が上がらないと感じているお店も多いはずです。

実は、マニュアルを整備しても効果が見られないのは、染みついている「風土」に原因があります。長く低稼働が続くと「どうせ自分たちは~」という意識が蔓延し、新しく入ったスタッフも先輩たちの考えに染まっていきます。

お店にはそれぞれ形成してきた風土が存在します。人は職場のマニュアルやルールに従うのではなく風土に従う生き物であり、上から押しつけられた価値観ではなく、同じ立場の人間たちによって醸成された価値観を重視する性質があります。だからこそ、マニュアルの整備に力を入れるのではなく「良い風土の醸成」に力を入れていかなくてはならないのです。

 

行動には必ず理論的な根拠を求めて、論理的に進めることが必要です。「モチベーション管理も、論理的に」考えてほしいと思います。

 

 

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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