【金曜】林秀樹「ド底辺ホール復活プロジェクト」第9回

2015.03.20 / 連載

調整を見直せ(3) 「玉の流れ」を考えろ

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。前回は調整に関して「試し打ちをしっかりと行い、体感的な部分を肌で感じる作業をコツコツと」という話をしました。ホールコンピュータのデータだけを頼りにするのではなく、実際に試し打ちをしてお客様の目線での調整をしなくてはいけないという話です。

今回は「どうやって調整で楽しさを演出するか」という手法の話をしていきます。調整をもっとアナログ的に考えていきます。

パチンコという遊技(娯楽)はどのように遊ぶのか。ハンドルで玉を打ち出し、その玉がスタートチャッカーに入賞し、抽選に当選すれば大当りとなり玉がジャンジャン出る。一般的なデジパチと呼ばれる機種はこのような仕組みであり、とにかく「興味はデジタルを回して、大当たりさせること」、この一点だけだと思いがちですよね。しかし、もしもそれ(デジタルを回して大当たりさせる)だけが興味の対象なら、それこそ玉も何もいらず全面液晶でもいいはずでしょう。しかし実際はそうではありませんね?ここにパチンコの「もう一つの面白さ」が隠されているのです。

玉が打ち出されてからヘソ(スタートチャッカー)に入るまでにはいろいろな箇所を通過します。そこでの玉の動き方を目で追うこと、そしてお客様自身が思い描く軌道に沿ったり逆に違った動きをしたりすることがパチンコの楽しさを演出します。何も大当たりした時だけではなく、通常時の玉の動きだってパチンコの楽しみなのです。調整は「回転数=何発打って何発回るか」という数字を管理することになりますが、そこにたどり着くまでの玉の動きだって疎かにしてはいけないのです。例えば同じスタート6.0回の台があったとしても、玉の流れ一つで印象はずいぶん変わってしまいます。

この「玉の動き」を考えるときに重要なことは次の3つです。

まず1つ目は「視界のなかにできるだけ多くの玉があるようにすること」です。パチンコ台の「動き、躍動感」はこの玉の動き、流れが作り出しており、視界に入る玉がヘソ(スタートチャッカー)に入る軌道を目で追うことが楽しさの一つなのです。お客様の目線は通常、ヘソ(スタートチャッカー)を視界の下端においてステージと液晶を中心に見ています。つまり、「いかにこの視界のなかに多くの玉を見せられるか」で楽しさが変わってきてしまうのです。

続いて2つ目は「玉が躍動すること」です。できるだけ玉が盤面(視界のなか)に多く残って、その玉が跳ねていろいろな方向に向かう動きをする、予想とは違う跳ね方をしてヘソ(スタートチャッカー)に向かったり絡んだりする、こういった躍動感のある玉の動きもパチンコの楽しさです。

最後の3つ目は「視界のなかの玉は、できるだけ勢いが少ないこと」です。一気に下まで落ちてしまう、素早く視界から消えていくような調整では、たとえ多くの玉を視界に向かわせたとしても「入賞する感じがしない」となって楽しくなくなります。以上を一言でまとめると、以下のとおりになります。

①    視界に玉を多く残す

②    躍動感がある動きを出す

③    なるべく勢いを殺す

では、どうしたらこの3つを演出できる調整になるのか。それには次の3点を意識した調整をしてください。

①    風車上は割らないで中央に玉を流す

→できるだけ視界に玉を多く残すためです。

②    傾斜を立てないで玉の滞留時間を長くする

→ステージの特性を生かし、お客様の予想できる動きをさせるためです。

③    下げ釘にしないで、勢いを殺す

→玉をなるべく盤面に残し、釘に絡ませるためです。

同じスタート回転数であっても、上記3点の違いが体感的にとても大きな印象の差になります。

ド底辺ホールの現場ではどうしても調整を疎かにしがちです。また調整をしてもヘソだけだったりします。データを見ても信頼性が低く日々の稼働で大きく変動してしまうことも要因でしょう。しかし、体感的な玉の流れを確認することは、割数のコントロール(=回転数)とはまた違った調整の醍醐味であり、この部分の改善でお客様の印象が変わることをしっかりと理解してください。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技 機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入 社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

 

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