【金曜】林秀樹「ド底辺ホール復活プロジェクト」第8回

2015.03.13 / 連載

調整を見直せ(2) 「体感スタート」を重視しろ

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。前回は調整に関して「とにかくスタートを重視すべし」という話をしました。「お客様の楽しさ=大当りを増やすことが重要で、そのためにはとにかく回さないといけない」という話です。

さて今回は、「ちゃんと回しているのに稼働は低迷している」といったときの対処についてです。回しているのに稼働低迷、なぜなのかが店舗ではさっぱりわからない。これ以上回すことは利益面を圧迫するし、他店調査をしても決して引けを取っていないはずなのに…。今回はこういったことがなぜ起こるのか、そしてその対策をどうすればよいのかをお話ししていきます。

いま、図(写真2枚目参照)のように2種類のスタート入賞があるとします。これらを比較するとホールコンピュータの回転数が同じ6.0回でも、A店の安定して入賞する場合は60秒間で回転している時間が60.0秒なのに対し、B店のようにスランプが大きい回転のしかたでは合計でも49.0秒しかありません。つまり「お客様が感じる遊技感」は、

・A店は回り続けるお店

・B店は11秒間回らない時間のあるお店

です。遊技客の印象は「B店(または台)は回らないなー」となるでしょう。このように体感的には「何回まわったか」よりも「いかに回らない時間が少ないか」のほうが受ける印象が強いのです。まず、このことをよーく理解してください。

そしてここからが重要です!今、自店はBだとします。「A店よりも多く回してお客様を呼び込もう」と考えてスタート回数を0.5回上げたとしましょう。スタートは6.5回です。「スタートを6.5回も回すとブン回りだな!」と思いたいところですが・・・。

ところが、スタートを0.5回上げても体感する秒数的には約5秒間が埋まるだけです(保留が0個のとき)。実はまだB店では依然、「6秒間も回らない時間がある」のです。なんと数字上、A店との体感的な差を埋めるためにはホールコンピュータのスタートで考えると7.0回以上の回転数が必要なのでした。「他店と同じくらい回している」、「いや、絶対に他店よりも回している」と自分では考えていたとしても、それはあくまで数字上のこと。体感的にどうなのか?という部分の検証が足りていないとこういったことが起きてしまいます。「回っているか、回っていないか」の判断は主にホールコンピュータのデータで行いますが、このホールコンピュータのデータしか見ないところにド底辺ホールの問題点が隠されています。

 続いてそのデータを見た後の調整に関して、です。「ド底辺ホール」というからには稼働は非常に厳しいものでしょう。そうなってくると調整をしようとしても、

・データに信頼性がない

・やっても無駄、変わらない

などと考えてしまい、あまり真剣にやらなかったりそもそも調整をほとんどしなかったりということがあります。しかしそれではいけません。競合との戦いにおいて自店の武器(=遊技機)のメンテナンスをしっかりとしておかないと、それでなくても敵の武器は最新鋭、こちらの武器は旧型(=鮮度の低い機種構成)なのに、なおのこと差をつけられてしまいます(敵は最新鋭の武器で且つ日頃のメンテナンスをしっかりとしているわけですから)。 だからと言ってホールコンピュータのデータを見て調整しようとしても、それはまあ、上記のとおり確かに「データに信頼性が~」ということになってしまいます。だからこそ、調整はデータではなく「試し打ち」をしっかりと行い、お客様の目線で玉の動き、流れ、体感的な部分を肌で感じる作業をコツコツとしていかなくてはならないのです。

日々の調整はスタート値の微調整がメインだと思います。しかしホールコンピュータに表示される数値は、たとえ回っているような値であっても必ずしもお客様の満足度とはリンクしていないのです。逆にホールコンピュータ上は低い値であっても、十分にお客様が満足できる調整になっていることもあります。この違いは「体感スタート=回っている感覚の違い」です。「ド底辺ホール」はこの部分の理解を深めなければいけません。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技 機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入 社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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