【金曜】林秀樹「ド底辺ホール復活プロジェクト」第10回

2015.03.27 / 連載

コンサルティングモデルケース(1) 質より量という転換

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。前回までは「これまで考えていたことではなく、違うことをしましょう」というお話をしてきました。今回からは、私が全国のホールさんでの営業支援で実際にあった事例をお話ししていきます。もちろん立地も違えば置かれた立場も違いますが、一つの事例として「こんな取り組みをしたところがあるんだな」と参考にしてもらえればと思います。今回のモデルケースは、「粗利益が少ないから機械代予算がかけられず、だから業績が上がらずに細かい入替を繰り返す~」という悪循環を断ち切ったケースです。

とある近畿地方のお店のお話です。

この店舗の悩みは、「機械代が決して多くはないので思い切った入替ができない」ことでした。そのために集客力も現状維持が精いっぱいで、粗利益も増えず、だから機械代もかけられないという悪循環です。この店舗でまず取り組んだことは「機械代の削減」でした。「削減」といっても予算の減額ではなく、月々の予算を少しずつプールしていったのです。そして「ここぞ!」というタイミングにまとめて一気に導入を図る戦術です。

とはいってもいきなり購入を抑えたりしたら、やはり日々の営業に不安がありますよね?たとえばこの店舗の4円パチンコの稼働は5,000発前後でした。これを何とか入替をしながら維持してきたわけですが、毎回、その時々の話題機種を追いかけ、でも予算がないから台数が少なく且つ導入は近隣大手よりも2週くらい遅れることの繰り返しだったのです。これではせっかくの入替も効果が出にくいでしょう。そこで発想の転換をしてもらいました。

「現状が5,000発なのだから、新台は7,000発動けばよいと考えればいいではないか」

話題機種を新台で購入してもそもそも納期が遅いので自店導入時にはそれなりに稼働も落ち着いています。それでも新台なので価格は40万円前後。もったいない話です。これを「7,000発動けばいい」と切り替えれば、同じ予算額でもより多くの機械が導入できます。中古機で考えるなら新台1台の金額で2~3台は購入できますよね。これで一回の入替による機種数、台数を多くし、とにかく「質より量」で進めていきました。

その後も入替予算を削減しながら資金をプールし、12月のタイミングで大規模な「新台中心の入替」をすることでお客様の関心を一気に引き寄せました。また戦術としては徐々に導入機種への期待稼働レベルを上げていき(7,000発→8,000発→10,000発など)、現在は稼働が上がったことで粗利を増やして機械代予算も増額できて良い循環に入っています。

今回の戦術は「孫子の兵法」の戦略をベースとしたものでした。まずは、「勢に求めて人に求めず。」(兵勢編)という教えです。「個人個人の能力に頼らずに集団としての力を発揮させるべき」ということで、「遊技機に頼らずに、その時の勢いを重視すべし」と解釈しました。勢いは「機種数、台数」と捉えました。続いて、「鷲鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至る者は節なり。」(兵勢編)という一節があります。「猛禽類が川の魚を捕れるのは一瞬のタイミングを計っているからだ」という教えです。つまり物事を成し遂げたかったら「ここぞ!」という機会、チャンス、タイミングに合わせる必要があるということです。

「月々の入替予算を減らしてプールし、あるタイミングで一気に大きく出る」というのは誰でも考えたことがあるでしょう。しかしよく聞く手法は「減額しても、中身はこれまでの入替を縮小したやり方」でした。今回のポイントは「遊技機の質に頼らずに量(機種数、台数)で勢いを作る」という点です。ド底辺ホールから脱却するのは、ほんのちょっとのアタマの切り替えからですよ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技 機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入 社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

アミューズメントビジネスコンサルティング, ド底辺ホール復活プロジェクト, 林秀樹, 金曜