【日曜】藤崎敏郎「自立型人材育成」

2014.12.28 / 連載

藤崎敏郎の人材育成セミナー

第25回 「仕事とともに責任も」

私のセブン&アイグループに入社した時の新入社員時代の体験です。現場の店舗配属になったときの、2人の上司の話です。1人は、徹底的に細かく指導をしてくれました。仕事の説明や目的をしっかりと話してくれて、OJTの実施や仕事の確認や指導もありました。この上司が休みの時は、20項目以上のやるべきリストを渡されて、私はそれを実行していました。

もう一人の上司は、全く仕事の指示はありませんでした。売場にも、ほとんどいませんでした。大事な仕事の話しをした記憶は、ほとんどありません。仕事が終わった後のお酒やカラオケで楽しんだ記憶の方がたくさんあります。

意外かもしれませんが、どちらの上司の時に、私が成長したかというと、後者の上司でした。この状況の最も適切な言葉は、“上司は頼りにならない”でした。何も教えてもらっていなくて、責任だけは与えられていました。しかし、そのことに不満を持っていませんでした。多少の失敗はあったかもしれませんが、考えながら興味を持って仕事をしていました。任されているので、全部自分で判断して行動することができました。不足する知識を補うために販売士の資格や消費生活アドバイザーの資格も取得しました。尊敬する船井幸雄さんの本は、すべて熟読していました。競合店調査も休日を利用して、徹底的に行っていました。経営者の鈴木敏文会長の言葉の“変化への対応と基本の徹底”を真剣に考え続けていました。そのようなこともあって、自分で考えながらやったことが実績として成果も出ていました。自分自身でも、これが自立型人材育成の最適な方法だと感じることができました。

自立型人材育成は、任せることです。場を与えることです。手取り足取り教えていたら、自立型人材は育たないのかもしれません。自分でやるという覚悟は、教えることはできないからです。自分で気づくことができる場を与えることが最適な方法なのです。会社は、一人ひとりのキャリアプランを作り、それに応じて部下指導や動機付けをして、定期的な社員研修をするべきだという概念を持っている人がいるかもしれません。それが最適な人材育成法だという考え方もあると思っています。ところが、私は、そのような会社に出会ったことはありません。そのような会社にいる人にも会ったことはありません。もしかしたらあるのかもしれませんが、少なくとも自立型人材の育成法としては違っていると感じています。それよりも、自立型人材の育成は、突然の仕事の依頼や人事異動、プロジェクトの体験だったりするのではないでしょうか。

このような体験をした後に、パチンコホール企業に就職しました。創業社長がトップダウンで何でも決めてしまう会社でした。この創業社長は、仕事がうまく行っても褒めることもなく、評価することもありません。担当外の仕事でも怒られることばかりでしたが、私は信頼されて仕事を任されていました。自立型人材になっていたからです。

今回の格言は、「自立型人材の育成は仕事も責任も任せること!」

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株式会社パートナーズリンク社長 藤崎敏郎

元セブン&アイグループの本社スタッフ。その後パチンコチェーン店に入社。機械担当部長、営業部長として勤務する。その後、人事コンサルタントとし て独立。社員研修と人事コンサルティングで日本各地を飛び回っている。これまでに教えた受講者は10万人以上。業界誌にも複数連載し、ナンバー1社員研修 講師と言われている。取得資格:キャリアコンサルタント、販売士1級、社労士、米国NLPマスタープラクショナルコース終了、トレーナーコーチ、メンタル ヘルスマネジメント2級

http://p-link.co.jp/index.html(ホームページには各誌の書いた原稿を掲載中)

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