【日曜】藤崎敏郎「沈黙は言葉/アドバイスは自立の妨げ」

2015.01.19 / 連載

藤崎敏郎の人材育成セミナー

第28回 「自立型部下を育てたければアドバイスはするな!」

自立型の部下育成にはコツが必要です。

例えば、否定質問と肯定質問があります。否定質問とは、否定的な言葉を使って理由を問いただす質問です。原因の追究になりやすく、前向きな答えは出てこないので部下育成では使わないほうが良いでしょう。「どうして、やらないの?」こう聞かれれば、いい気持ちはしません。そして、「やらない」ことについて、自分を正当化する理由を考え始めます。一生懸命に「言い訳」を考えるのです。

もう一つの肯定質問とは、肯定的な言葉を使って行動を促す質問です。部下のモチベーションを高めるのに効果的であり、自立型の部下育成では多用します。「いつからやろうか?」こう聞かれれば、「○○からやります」ということになります。部下が答えることによって、「自己宣言」したこととなり前向きの気持ちになります。

ところで、ある管理職社員から相談がありました。部下に質問をしても黙っているケースが多いので、どう対応したら良いかということでした。「沈黙」とは、部下の発している言葉にならない「サイン」です。その意味するところは、上司の質問が部下にとって重要なものであり、その答えを出すために、真剣に考えているということです。自立型の部下育成の目的は、部下が自ら考え気付き、実行していくことを上司として支援することです。「沈黙」に対する上司の支援は、部下の考えがまとまるまで、ひたすら「待つ」ということです。部下に考える時間を与えるのです。部下が自ら考えている時間であり、それの邪魔をしてはいけないのです。どうしてもアドバイスをしたくなるかもしれませんが、基本的には部下が自ら考え、自ら気付くことを根気よく待っていることです。ある程度のレベルまで行っている部下であれば、アドバイスは全くしないで答えの出ないまま本人に考え続けさせるほうが成長に結びつきます。しかし、どうしても部下が答えを見出せないと感じられたときには、上司からアドバイスをしてもかまいません。アドバイスは部下が自ら答えを考えるのに際して、検討の選択肢を広げる効果もあるからです。

ただし、アドバイスのし過ぎは、部下の考える力の育成を阻害してしまいます。アドバイスは、少し足りないくらいが良いと思っています。アドバイスは上位者から下位者に対するものだから、あからさまに行われると聞く方は、いい気持ちはしないからです。つまり、「お前は能力がないのだから、黙って言うとおりにすればいい」と言われている感じを受けるからです。

今回の格言は、「自立型部下を育てたければアドバイスはするな!」

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株式会社パートナーズリンク社長 藤崎敏郎

元セブン&アイグループの本社スタッフ。その後パチンコチェーン店に入社。機械担当部長、営業部長として勤務する。その後、人事コンサルタントとし て独立。社員研修と人事コンサルティングで日本各地を飛び回っている。これまでに教えた受講者は10万人以上。業界誌にも複数連載し、ナンバー1社員研修 講師と言われている。取得資格:キャリアコンサルタント、販売士1級、社労士、米国NLPマスタープラクショナルコース終了、トレーナーコーチ、メンタル ヘルスマネジメント2級

http://p-link.co.jp/index.html(ホームページには各誌の書いた原稿を掲載中)

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