【日曜】林秀樹「ド底辺ホール復活プロジェクト」第12回

2015.04.11 / 連載

※金曜日から日曜日に移動しました!

コンサルティングモデルケース(3) 同じ土俵を避ける

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。前回同様、今回も私のコンサルティング先での取り組みを紹介していきます。今回は「競合が強力に強い場合の対処」をお伝えします。

近畿地方のお店の事例です。

このお店は200台弱と小さいながらも、堅実にごくごく普通の営業をしてきました。決して稼働は高くありませんがそれでも地元客を中心とした集客でそれなりに営業ができていました。ところがそのお店の近隣、徒歩5分くらいに新規店がグランドオープンしました。総台数1,800台という超大型店舗です。そして一回の入替で自店の総台数と同じくらいの台数を導入するという、大型店舗特有のチカラ技で抜群の稼働を取っていきます。

当然自店の稼働もかなりの影響を受けました。そこで改めて自店の強みや方向性を見つめ直して、ポジショニング戦略をベースにニッチャー戦略を取るという方向性に決めました。

※ポジショニング戦略とは、業績から大きく4段階に分類し各々に最適な方向性を探る戦略。分類は以下の通り。

リーダー   :NO.1企業。戦略はブランド誇示、2位以下の模倣。

チャレンジャー:NO.2企業。戦略はNO.1企業との差別化、独自性誇示。

フォロワー  :NO.3以下の企業。戦略は上位陣の模倣、同化。

ニッチャー  :NO.3以下の企業でありながら特定分野でのシェアはNO.1の企業。

戦略は超独自路線、超差別化。

「ニッチャー戦略をとる」ということは超のつくほどの差別化が必要です。しかも、「差別化」という言葉は「強み」とセットでなければいけません。つまり他者と違っていたとしてもそれがよい部分での違いでない限り差別化とは言えないのです。このお店の強みとして挙げられたのは、以下の点。

・柔軟な思考を持つ社風、風通しの良さ、意思決定スピードの速さ

・数字(計数管理)に強い幹部層

・低貸玉部門の稼働率はNO.1であり活気がある(※稼働人数、地域シェアではない)

この強みを生かしながらニッチャーとして生き残るには?ということで考えた戦術は次の通りです。

・低貸玉に特化しよう

・前例にとらわれないようにしよう

・近隣、周辺にない営業を選択しよう

低貸玉部門の稼働率がNO.1であることから当然、低貸玉中心で考え、且つ前例にとらわれずに独自性を出す営業を模索し、結論は、

①    2.5円パチンコの導入と1円Pの増台

②    4円パチンコの廃止

③    スロットをなくしてパチンコ専門店

という施策にまとまりました。地域に進出した超大型店がまったく真似できない、全く競合しない分野を目指したのです。もちろん、不安もありました。しかし当時まだまだ一般的ではなかった2.5円パチンコを実際に視察し、その営業内容を数字面から詳細に検討した結果、「玉単価1.0円前後の営業は時代にマッチする」として進めることにしたのです。そして、結果的には2.5円パチンコは高稼働を上げ、元々強かった1円パチンコはスロット廃止により台数を増やしたことでさらに稼働を上げることができました。

この事例で参考になると思われるのは次の3点です。

①    強い競合とは勝負を避けること(貸し玉料金のステージで勝負を避けた)

②    「○○専門」と掲げて特色を出す(パチンコ専門、低貸玉専門として特色を出した)

③    「選択と集中」で資本を効率よく活用する(パチンコに特化して、入替資金を分散させなかった)

前々回前回、そして今回とコンサルティング現場での成功事例を3つ挙げました。そのどの事例にも共通しているのが、「戦術、施策の前に戦略を考えていること」です。この連載で一貫してお伝えしていること=「まず、考える。これまでとは違うことを考える。そして実行に移す。」、この流れを常に意識することで、ド底辺ホールという現状から抜け出す最初の一歩を踏み出せるでしょう。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹

1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技 機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入 社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

 

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