「売上低下を前提にした営業」で考える2つのこと

2019.01.05 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(195) 費用構造を考える

新年あけましておめでとうございます、アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。2019年、今年もよろしくお願いいたします。

さて、今回の年末年始営業はどのようなものだったでしょうか。私が日々確認している支援先のデータでは、おおむねまずまずの客数、売上だったように感じます。ただ全体がまずまずであってもその内訳、中身は少し違っていて、客数を引っ張っているのは1円パチンコ部門、売上を引っ張っているのは20円パチスロの高射幸性遊技機部門となっており、全部がまずます(もしくは好調)というものではないです。

1円パチンコは売上面の貢献にはなりませんが、店舗の活気という面での貢献と考えればよいことだと思います。低貸玉営業がなくなるような事態にならない限り続くと思われます。

しかし売上を引っ張っているパチスロの高射幸性遊技機というのは明確に、あと最大2年ですべて市場からなくなります。今回の年末年始でまずまずの(もしくは好調な)売上であったとしてもそれは、今後は絶対に続かないのです。

「高射幸性遊技機が残っている今は新要件遊技機に(客が)つくとは考えにくいが、なくなれば新要件を打つしかないので維持できるのではないか」、こう考えることもできます。

確かに今の客数を維持するという仮定のもとならそのように考えることもできます。しかし過去、4号機が市場からなくなった時にはやはりパチスロの稼働が大きく落ち込みました。ただし当時はパチンコがその射幸性により4号機ユーザーの受け皿となりましたが、今回はパチンコもパチスロ同様に新要件遊技機が市場に受け入れられていないので、パチンコが受け皿になる可能性は低いでしょう。

そうなると考えなくてはならないのは、「売上低下を前提にした営業」となります。この場合、
・利益率を上げる
・費用を下げる
の2通りが候補となります。このうち「利益率を上げる」選択は中期的には一層の売上低下を招く可能性が高いこと、また今の遊技機は利益率を上げづらい性能であることなどから現実的ではないです。ここは「費用を下げる」を考えるべきでしょう。しかしこれまでもコストカットは厳しく進めているところが多いはずです。これ以上費用を下げろと言われてもなかなか難しいのではないでしょうか。

ここで費用を大きく2つ、「変動費」と「固定費」に分けて考えてみます。変動費とは売上に連動する費用であり、売上が上昇すれば増加し売上が低下すれば減少する費用です。これに対して固定費とは売上に連動せずにかかる費用です。固定費は極端な話、売上が0でもかかってしまう費用なので、
・どうにかして固定費の変動費化ができないか
を考えることが、売上低下時代において費用を下げることにつながります。

具体的な数字で考えてみましょう。

A.変動費率40%
売上  100
変動費 40 (※変動費率が40%)
固定費 40
利益  20

B.変動費率50%
売上  100
変動費 50 (※変動費率が50%)
固定費 30
利益  20

いま、どちらも最終の利益は20で変わりません。しかしもしも売上が90に低下した場合にどうなるかというと(各々A’、B’とする)、

A’.変動費率40%
売上  90
変動費 36 (※変動費率が40%)
固定費 40
利益  14

B’.変動費率50%
売上  90
変動費 45 (※変動費率が50%)
固定費 30
利益  15

となり、現状の費用構造から少しでも変動費率を上げておけば、売上低下時にダメージを少なくできることが分かります。

現状の費用自体を減らすことは難しいかもしれませんが、「固定費の変動費化」を考えていくことが、これからの時代=売上低下の時代に備える方策の1つになると思います。


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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