過渡期の今だからこそ知りたいパチンコの「要素」【コンテンツ編】

2019.06.28 / コラム

前回の記事はコチラ
過渡期の今だからこそ知りたい パチンコの「要素」 【スペック編】

 

大手ホール法人で機械選定を担当するSH@CK氏がスペックやコンテンツなど「さまざまな側面」からパチンコ・パチスロ機種の要素を分析していく不定期連載を開始。

旧規則から新規則へと切り替わり、総入替までのリミットが迫っている。さらにはいまだにはっきりしない消費増税や新紙幣切り替えなど、パチンコ業界の営業に関わることが多く控えている現在。
変革の時代だからこそ、1機種単位の分析だけでなく「要素」単位での分析が必要ではないだろうか。

前回はパチンコ機の根幹である「スペック」についてお伝えした。今回はスペックの対となる「コンテンツ」について。新旧の名作ドラマや特撮から歌手モノ、アニメと今やパチンコ業界はコンテンツで溢れかえっている。
だがこれだけコンテンツが多いと「なんでもいいや」となってしまうような気がするが、スペックとコンテンツの組み合わせ次第でどの客層にアプローチすべきか、客層にマッチするか大きく変わるだけに重要だ。

 

機種の良し悪しは相対評価

コンテンツは年代ニーズで千差万別 (文章・データ提供 SH@CK)

 

現在業界では私を含めさまざまな方がさまざまな観点で機種の評価をしているわけだが、その〝さまざま〟の評価基準は統一されていないのが現実である。しかし評価=結果の予測と捉えれば、それは人間の思考を読むような話で、完全性を保ち基準を統一するなど現代科学においても困難極まる。さらには新機種評価時にメーカーから発表される数値は時として誤りもあり、公表されない数値もある状況で結果を当てること自体がそもそも不可能な話なのである。

ただし、そんな中でも機種の特性などから傾向を予測することはある程度は可能だ。多くの人が現在行っている機種評価は、機種の良し悪しを性能で評価する「絶対評価」である。何を持って「良い」とし、何を持って「悪い」とするかが異なる以上、その評価がバラけるのも当然な話だ。

それに対し、私の評価基準は「機種の良し悪し=ニーズの傾向」だ。例えば、性能の良い機種の例として「バジリスク絆(以下略バジ絆)」や「北斗無双」などが挙げられる。こうした機種がそうだったのだが、性能に対する評価以上に供給背景によって市場価値が上昇した。

「バジ絆」「北斗無双」、それから「沖ドキ」もそうだったが、内規変更や部材の兼ね合いで最終的に供給困難となったことが、持つ者と持たざる者との差を分けた。それはいずれの機種も新台時期以降に価格が下落していたことからも明らかだ。
新台で購入することができていたとしても、再評価されたことで価値を高めた機種である以上、新台として購入することが正解だったと断言する事は困難だろう。結局の所、再評価を含めた「ロイヤリティ」(機種の持つ独自性や市場への供給度合いからなるニーズ)を知ることが重要なのだ。
そして、新台の供給が困難となる要因は、ほとんどの場合、時代背景が大きく影響していることが多いので、業界事情を知ることが重要となる。

装置産業である以上、装置の良し悪しで営業力に差が生じるのは当然だが、高射幸から低射幸へと新時代に移り変わる過渡期の現市場では、機械性能に大きな期待をするべきではないだろう。「HEY!鏡」や「Re:ゼロ」がヒットした理由もロイヤリティが大きな要因と考えられる。「HEY!鏡」はリリース後に純増5枚以上の他6号機が登場したことによってロイヤリティが薄れた結果、稼働低下を招いた顕著な事例だったといえる。
それを考えれば、現市場にはない性能を持った機種のロイヤリティが高くなるのは明白となる。ともすると、純増3枚の制限からさらに2枚の制限となった当時の市場で、純増5枚1機種目の「HEY!鏡」がヒットしたこと、超純増ともいうべき純増8枚「Re:ゼロ」ヒットの可能性を予想することは決して難しいことではなかったともいえる。

とはいえ情勢からくるロイヤリティを秘めた機種を完全に見抜くことは難しい。だからこそ新台をファーストインプレッションだけで絞るのではなく、大量導入は無理にしても定期的に導入しながらヒット作を待つ姿勢が必要である。

前置きが長くはなってしまったが、そんな機種の良し悪しではなく、現時点で実用性が高い、つまりロイヤリティが高くなるニーズ傾向についてお伝えしたいと思う。


4円パチンコを支える年代のニーズは「コンテンツ」

 

ニーズと一言でいっても多様に存在する。その多様な顧客ニーズに合わせた提供が営業力の差となり、商売上必須となる。
ニーズが多様化するのは時代が大きく影響しているのだが、これは内規などの機械開発に関わるメーカー領分の話だ。ホールの領分の話でいえばニーズの多様化は顧客属性の考慮が一番重要となるだろう。異なる属性に対して、異なる好みや趣向が存在することでニーズが多様化しているのだ。大まかに異なる属性を挙げると「地域差」「性差」「年代差」となる。

本来はこの属性差によって各店にとっての効果的な商品が異なるため、属性に合わせた「コンテンツ」「スペック」も考慮していかなければならない。だが今回は市場全体に対して当てはまるであろう「コンテンツ」のニーズについて掘り下げていくので、属性差からの効果的商品については割愛させて頂く。

本業界もコンテンツ業界となってから長い月日が経ち、今ではほとんどの機種がタイアップものとなってきた。
しかし、時代の流れとともに古い・往年のコンテンツはすでに使用されているか版元がハナからパチンコへの許諾を拒否しているケースも多く、続々と生み出される若年層向けコンテンツを利用することを余儀なくされている。

ユーザー層が比較的若く順応力が高いユーザーが多いパチスロは、「まどマギ」「バジ絆」などがメイン機として幅広い層に支持されていることからも今後の順応には期待できるだろう。しかし、パチンコに関してはなかなかそうともいえない状況である。若年層向けコンテンツで大量導入されているのは「シンフォギア」くらいのものであり、現状、メイン機となっているのは「慶次」「北斗」「ルパン」「牙狼」と中年層から高年層向けのコンテンツばかり。
過去1年では「キャプテン翼」「冬ソナ」「仮面ライダー」「ゴジラ」「CYBORG009」など高実績を残した機種の多くは、店のメイン機種とはいえず、コンテンツの新鮮度で考えても若年層向けではない。

以下の4円パチンコの年代別ユーザー比率を見てみよう。

40代以上が60%を超え、中高年層が4円パチンコを支えていることが分かる。さらに実績として属性とコンテンツの相関が強いことから、パチンコにおいては特にニーズ元の中高年層を意識した提供、つまりコンテンツを意識することが必要といえる。

とはいえ、パチンコの中高年層をターゲットとしたコンテンツが増えることに期待できないのは前述した通り。今夏には「仕置人」が「必殺シリーズ」としてリリースされる予定となっているが、今後はこうしたリメイク作品が主となるだろう。これはこれで仕方のないことで悪いことではないのだが、シリーズ機が続く仕組みを理解していないと「また販売するの?」といった飽きへの不安を抱くことがある。

ただしこれは逆説的にとらえれば、中高年層の遊技意欲を湧かせられる新機種は希少だということ。シリーズ機だとしても前述の「仕置人」のような時代劇モノに代表される、中高年層に馴染んだコンテンツの新台が登場すれば、飽きによる離反リスクを防ぐ効果があるともいえる。

新規則機はいまだに内規変更の波が続いており、ことパチスロの5号機と6号機の売上・粗利差は大きくなる。そんな状況下において、ホール関係者の立場としてはパチンコ営業へ期待したい部分も多く、パチンコ市場を支えている中年層と高年層のニーズを改めて考え直す必要があるだろう。


中年層と高年層の支持を大きく占めている「海シリーズ」最新作の結果が振るわなかったのを見ればなおさら。機種構成において、中高年齢層向けコンテンツの充実を意識していくのが一手だ。