逆襲の山佐(3)-yms

メーカー

「100年続く会社にする」
自分たちにしかできないことを
やりたいと思っています

 

:ヒットする要因はいくつもあると思いますが、何が重要だと思いますか。

佐野:企画の段階はどの機種も最高に面白そうに見えますが、実際に組み立ててみると、全然違う印象の機械になります。面白い機械になるかは、ここからいかに打ち込んで、どんどん改善や修正をしていけるかだと思います。ヒットさせる要因は常に変化し、1つではないと思っていますが、可能性を高める要因はあると思っていて、いかにプレイヤー目線で、かつ初見の感覚を持ち続けて、ネガティブ要素は修正・改善をして、良いところはしっかりと伸ばすことができるかが重要だと思っています。

言うのは簡単ですが、実際に2年、3年かけて作っていくと、評価の感覚がマヒします。ただ、世に出せば、プレイヤー様は初めてのその機械に触るわけで、かつその短期間で「面白い」「面白くない」の評価をされます。なので、一番重要なのは、やはり開発者自身が常に初見の感覚を維持しながら改善していけるか。その泥臭い努力が機械の面白さを決めると思っており、結局は人が重要、また意外とそこの努力で勝負ができるのは開発の面白いところだと思います。

:では、今年の勝負機種である「スマスロモンキーターンV」についてどのような意気込みでしょうか。 

佐野:初代「モンキーターン」は少台数の導入からヒットして、弊社にとっては貴重なコンテンツになりました。今回で5機種目になり、途中途中は進化させようと思っていろんなことを付け加えながら作ってきました。ただ、プレイヤー様が求めるモノって、やっぱり面白かった時のモノをまた打ちたいという感情だと思うんです。開発をしていく上で、当然いろいろ変化させて受け入れられなかったのもあります。それも踏まえた上で本機は、今までの経験からどれくらいまで変化させて良いのか、そういう機種開発をしてきました。

:自信のほどはいかがでしょうか。

佐野:もちろんプレイヤー様に受け入れていただける自信作だと思っています。初代は踏襲していますが、それだけではまったく進化がないので、このタイミングで新筐体にしました。これにより、レース演出の迫力だとか、前作とは違った没入感を出玉以外で楽しんでいただけるものになっています。また、プロモーションについても、よりプレイヤー様、ホール様に直接的に貢献できるような施策を用意しています。山佐ってあまりそういうことをしてこなかったのですが、市場参加者を増やすような施策をしていかないと業界全体が縮小していきますし、それは山佐ネクストにとってもマイナスです。

:ティザーで筐体のシルエット乗せて、それが興味をそそりましたね。

佐野:この記事が出るころには筐体写真も出ているので話しますが、全面液晶を搭載しています。ただ、実は昔ELビジョンという全面液晶が山佐にはありました。全面液晶は演出自由度が高い反面、開発コストや調整コストが増えます。でも、やりようによっては昔のタイトルの完全再現もできるので、新規タイトルと昔のタイトルをこの筐体で提供できると考えてGOサインを出しました。

:昔のタイトルと言えば、最近「ナイツ」を出しましたよね。全国導入300台というのは寂しかったです。

佐野:あれは成功するまでの布石という狙いも含めて、結果が出るまでは無理にホール様に買っていただく必要はないという判断です。ただ、今回は手ごたえもあって、少し増台させていただきました。まずは現状設置のない地域に少しずつ導入を広げています。

:そういうことだったんですね。実際に打った人は「良い」と評価していました。

佐野:今回は「良い」って評価もいただいていて、正直嬉しかったですね。過去何回かチャレンジをしているのですが、ホール様に満足いただけるには物足りなかったので。多分昔ナイツを打っていただいていたプレイヤー様からの評価が多いと思うんですけど、目指したいのはその層にも満足していただきながら、昔のよきパチスロ時代を知らない若者にも楽しいと思ってもらえるような機械を作りたいですね。山佐はコンテンツは豊富なので、新しいIPとは別に自社IPでも稼働が取れるラインナップは継続していきたいです。

:御社にとって「逆襲」を狙うには何が必要だとお考えでしょうか。

佐野:業界で「逆襲の山佐」と認めていただけるためには、まだまだ必要なことはたくさんあるのが現実です。やはりメーカーとして業界の発展に貢献したいので、既存プレイヤー様に満足していただき遊技人口の減少を抑え、若い層にパチスロに興味を持ってもらえるようなコンテンツを提供して、遊技人口の増加に貢献できることを目指しています。今の業界は、各社の競争も会社としては大切ですが、業界全体の盛り上がりを作っていかないと長くは続きませんから。もっと大きい視点で「パチンコ業界の逆襲」に山佐も貢献できることがゴールです。

:2020年に山佐から山佐ネクストへ遊技機事業の事業譲渡がありました。

佐野:山佐グループにとって大きな変化があった年ですね。山佐本体には別事業として航空機・船舶リース事業、太陽光発電事業、北米不動産事業などがあって、いつしかパチスロ事業は山佐の事業の中の1つとなり、他事業と持ちつ持たれつの状態になっていました。これでは会社全体の業績に対して遊技機事業の業績への意識が薄まってしまい、私自身にも甘えが生じていたのも事実です。業界も縮小していく中で、これではダメだと思い切って山佐ネクストとして分社化し、パチスロ事業に特化した会社としてスタートしました。山佐ネクストは遊技機事業しかない会社となり、業績に関わるさまざまな数値が明確になりました。このタイミングで希望退職も募りましたし、もう退路を断った状況です。嬉しいことにこれでも付いてきてくれる社員も多く、社員全体の意識が変わってきています。その中でも大きく変化を感じるところは、山佐には父も含めてパチスロ業界や山佐の発展に大きく貢献してくれた人がたくさんいますが、ネクストについては残念ながら私を含めて管理職はまだまだ未熟です。ただ、山佐時代はそれに頼ってきた体質から心機一転、社員1人ひとりが自らの手で会社を成長させないといけなくなったわけですから、そこで大きくマインドが変わったと感じています。また、山佐ネクストは新たに管理職の意見を取り入れながら、評価体制、人事制度を作り、まったく新しいメーカーとしてスタートしています。その変化が花開いてくるのはこれからです。山佐も業界発展に貢献してきましたが、山佐ネクストは新たにこれからの業界発展に貢献していかなくていけません。私も心機一転、代表となり大変なこともありますが、これから業界に貢献していける立場となりワクワクしています。

:名前が変わっただけのように思ってましたが、そういう体質などの一新も大きな変化だったのですね。社長が言う業界への貢献とはどういったものでしょうか。

佐野:業界全体の発展を考えると、メーカーができること、ホール様ができること、互いでできることがあると思います。当然、メーカーとしては、良い機械を作ることが何より目指さなくてはいけないことだと思います。先ほども話ましたが、新たにホールに来てくれる新規プレイヤー様を増やすことができるようにより若者に向けた新しいタイトル機種の開発は力を入れていきます。また、アメリカにいたこともあり、世界トレンドである物価高に対して、この業界も変化が必要だと感じています。メーカーとしてできることに対しては貢献したいと思っています。

:「虎視眈々」ということですね。では、御社のこれからの10年先の未来についてビジョンを語ってください。

佐野:山佐ネクストの「ネクスト」には「100年続く会社にする」という意味を込めています。私は父のように1から時代を作った人間ではないので、これからは社員と自分たちでしかできないことをやりたいと思っています。また、スマホが本格的に普及して約10年経ちました、これから新たに参加するプレイヤー層はこれまでの新規プレイヤー層とは趣味嗜好が大きく異なってくると想像しています。山佐ネクストはその層にマッチする遊技機開発を意識した開発にも力を入れます。とは言え、現状の山佐ネクストを自己分析すると、マラソンに例えるとよく言っても第3グループの位置かなと。3年後には第2グループ、10年後には第1グループを走っていることを目標としてやっていきたいです。私自身もパチスロというモノづくりが好きで代表をやっています。そのマインドを大切に、また開発者としても虎視眈々と強い気持ちで狙っています。 

 

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