企業コンプラインボイス②無知なフリー演者や晒し屋の起用は 「インボイス」制度の導入で危険度アップー経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス②

免除を受ける権利を
手放さない可能性

「適格請求書」を発行するためには「適格請求書発行事業者」として税務署に申請して事前に登録しておく必要がある。この申請は特に審査があるわけでもなく、誰でも申請可能だ。

しかし、これを申請するということは消費税の課税事業者になるということになり、1000万円以下の売上しかない個人事業主がこれまで免除されていた消費税を厳密に収めなければならなくなる。先にあげた例でいうならば、5万円+消費税5000円を5万5000円の売上にできたにも関わらず、今後は5000円はきっちりと消費税として収めなくてならないということだ。

おそらく大多数の業者は「適格請求書発行事業者」の申請をして、今後は「適格請求書(インボイス)」を発行して売買のやりとりをすることになるだろう。

しかし、個人事業主の可能性が高いフリー演者や晒し屋はどうだろう。自分たちのクライアントであるホールが、広告宣伝でどのような戦いを強いられてきたかも理解せず、しまいには脅迫めいたツイートをするような程度の知能しかない者も少なくない。

そもそもインボイスというものを理解していない者もいるだろうし、これまで消費税を収めなくてよかったにも関わらず、これからは消費税を支払うことになることを素直に受け入れるだろうか。「適格請求書発行事業者」になることに難色を示す、またはそのこと自体を知らないとなる可能性は高い(※支払う側が「適格請求書発行事業者」になるように強制することもできない)。

これまで通りの取引をフリー演者や晒し屋などの個人事業主が望んだ場合、支払う側のデメリットやリスクは3つある。

①「適格請求書発行事業者」からの請求書ではない場合、記載された消費税を支払っても消費税としては認められず控除が受けられない(=支出が増える)

②「適格請求書発行事業者」になってほしいと伝えても消費税免除を手放すことになるため拒否される

③拒否されたことで、リスクヘッジのために取引停止を伝えた場合、これまでのやりとりなどをSNSなどで晒される。

このようにインボイス制度がはじまると、「晒し屋」や「フリー演者」との取引リスクが今まで以上に高まるのだ。

 

フリー演者や晒し屋の起用はデメリットがさらに多くなる

私利私欲のみで業界にはびこるフリー演者や晒し屋は自身のことしか考えていないため、ホール関係者の足を引っ張るケースのが多い。

 

健全な商取引を再構築して
余計なリスクは事前に排除

パチンコホールは遊技機メーカー、周辺機器メーカー、販売会社、中古機会社、景品会社、メディアなど多数の業者と取引をしている。大多数の取引業者は「適格請求書発行事業者」の申請をするだろう。

しかし、もしかすると取引業者の中で課税売上が1000万円に満たないところが今まで通り益税の権利を主張し、「適格請求書発行事業者」の申請はしたくない、つまり「僕らの税金はホールさんが払ってくださいね」となるかもしれない。ホール側からすると、この状況を受け入れるべきだろうか。

答えはNOだ。今後の対応はホールごとの判断となるが、「インボイス制度」により税の申告による業務負担や納税負担も大きくなっていくのは間違いない。

また加えて、「適格請求書」以外の取引も個別対応していくとなれば、経理業務負担も大きくなるだろう。そう考えると「適格請求書発行事業者以外とは取引しない」という判断は乱暴かもしれないが、社内業務負担軽減という観点からしても再考する価値はあるのではないか。

ただし、前述した通り「適格請求書発行事業者」になるようにと、取引先に強要することはできないので、制度開始に向けて、どのような姿勢をとるべきかは慎重な判断をしていただきたい。

コンプライアンスの観点から取引しないことを進めてきた「晒し屋」「フリー演者」も個人事業主である。それ自体が悪いわけではないが、パチンコ業界を甘い蜜と考えて群がっているような輩を食わせ続ける意義はあるのか。彼らがインボイス制度を理解して「適格請求書発行事業者」として申請するかどうかは未知数だ。

制度自体は来年の10月から開始だが、「適格請求書発行事業者」となる申請はすでに受付中であり、来年の3月31日で締め切られる。このタイミングまでに申請しなければ向こう1年間は「適格請求書発行事業者」としての取引はできなくなる可能性もある。すでにタイムリミットは刻一刻と近づいているのである。

あまり、時間的余裕もない状況ではあるが、本制度をきっかけとして、自社に不利益を与えかねない個人事業主(フリー演者や晒し屋)との関係を見直し、今後は「適格請求書発行事業者以外とは取引しない」という指針のもとで経営を行っていく。コンプライアンス重視、健全な経営企業となるために、そういう判断をしても良いのではないだろうか。

「インボイス制度」をきっかけに取引業者を見直し

支払う側も煩雑な業務が増えることでマイナスに捉えられがちの「インボイス制度」だが、これをきっかけに取引業者を見直したい。リスクをともなうフリー演者や晒し屋の起用は止めるべきだ。

 

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